写真漬けの日

朝=肉うどん/夜=いちご煮ごはん、かつお焼き、リンゴと野菜のサラダ、豚汁

師走だ。そわそわする。今年は23日で仕事納めにするって思っているけど、そもそも最近何が仕事なのか、どこまで仕事なのかがよくわからない(笑)。

2023年は、たくさん動画用機材を揃えたのに、大体の仕事は家の中でやっているので、使う機会が少ない。メインの機材は三脚に据えられたままのシグマfpL。配信を見た知り合いの多くが、「あの色いいね」と言ってくれる。fpLのカラーモード「ティールアンドオレンジ」をマイナス2に設定するとコクのある色味が出るのだ。fpLがソニー並みのAF性能があったら最高なのになといつも思う。排熱もしっかり効くし、外付けSSDに外部収録できるし、色もすごくいい。なので3台あるソニーは出番が少ない。

土曜日は、エプソンのプリンターを使ったワークショップの講師に呼ばれて、京橋まで行ってきた。モノクロプリントに特化したもので、2BChannelの動画と連動したものになっている。「僕のモノクロプリントの設定はこれ エプソン SC-PX1V」

https://youtu.be/fAGkZhBHng0

こういった機材を扱うワークショップは準備が大変。個人では到底無理。だからインクジェットを使ったプリントワークショップはメーカーの協力なしではできない。今回は8人の受講者に対して、6台のプリンターを用意してもらった。担当者が前日入念なチェックをしていたにもかかわらず、講座当日、思わぬところで問題が発生。それをなんとか乗り越えながら、それぞれ5枚ほどのプリントを作ることができた。

僕がモノクロ時に使っている設定をレクチャーして、一度自分で画像調整してもらいプリント。それに対してPC上の画像とプリントを見ながら再調整をしてもらって再プリントという手順。バライタ調の用紙も使ってみた。2BChannelで公開している動画でも言っているが「2の10」の設定にするとモノクロプリントが際立って見える。

結局、午後1時から5時まで4時間のワークショップになった。終わった後も参加者のポートフォリオを見せてもらって30分以上話をして、帰る頃はすっっかり日が暮れていた。久々に写真漬けの1日だった。

<2021年12月3日の日記から>

鈴木麻弓さんから「スペイン料理一緒に行きません?」と誘われたのが鎌倉由比ヶ浜にある一軒家のレストラン。ご飯を食べた後に鎌倉から帰るわけだが、わざわざ誘ってくれるからに美味しいんだろうな、ということで妻と二人で出掛けてみることにした。せっかく鎌倉まで行くならと、お昼に家を出て鶴岡八幡宮で参拝して、近くの神奈川県立美術館鎌倉別館で開催中の「フェリアー今道子」写真展を見る(2022年1月30日まで)。1991年に木村伊兵衛賞を受賞している作家で、自分で魚を使ったオブジェを作りそれを4x5の大型カメラを使って撮影している。初期から現在までの作品を見ることができた。見ているうちに16世紀イタリアの画家アルチンボルトが浮かんできた。それとやはり16世紀の版画からの影響もあるんじゃないかと勝手なことを思ってしまった。約束の時間までまだあったので、江ノ電に乗って長谷寺へ。何度か行った記憶があるのだが、あんなに仏像があるとは知らなかった。今まで何をみていたんだか。妻はすっかり忘れていたけど、実は結婚する前に一番最初に出かけたのが長谷寺。「紫陽花を見に行きませんか」と誘ったのを覚えている。まあそんなこと妻はなにも覚えちゃいない(笑)夕方、江ノ電に乗りながら海を見たいという妻の提案で、ちょうどいい頃合いに来た電車に乗り込んだものの、なんと反対方向。戻ってみたものの、すでに外は真っ暗になっていた。さて、鈴木夫妻は食べることが好きで、昨年も一緒に六本木のスペインレストランに行ったのだが、その時は席に案内されるまでに、なんだかファンタジーのような演出があって面白かった。今回の料理は出された料理の多くが和食と言われても通じるようなものが多かった。素材の出汁がきいているからかもしれない。どれも美味しくて、日本の風土にあったスペイン料理という感じ。11種類の料理に11種類のお酒がついてくるコースだったけど、ワインだけじゃなくて、リキュールも何種類か出てきた。6時半から食べ始めて、家にたどり着いたのは11時半過ぎだった。

写真展の苦い思い出

朝=鰹、温卵、納豆、海苔、味噌汁、白米/夜=鍋焼きうどん

2BChannelでお世話になっているふたりが、同時期に初の個展を開いた。ひとりは石井朋彦さん。GINZASIXと横浜そごうのライカストアで来年の3月7日までのロングラン展示。もうひとりは「写真学生」として何度も出てもらっている田辺知之さん。高円寺駅前のギャラリーで4日間だけの展示だった。

個展を一度経験すると、多くが後戻りできなくなる。僕も最初に個展をやった後は、その大変さに「二度とやるものか」と思っていたのに、半年も経つとムズムズと次のことを考えるようになった。個展をして儲かるなんてことは、ほぼないと言っていい。音楽なら入場料が取れるのに、写真展は基本無料だ。例外的に美術館は有料だけど、個人で行う展示では、余程のことがない限り、お金を取る事はないと言っていい。

僕は35歳の時に、会場費用はかからなかったけど、展示自体に100万円かけて大掛かりな個展をやったことがある。入場者は多分千人くらい。ひとり頭で割ってみると千円になる。その時に思ったのが、「何もない会場に僕がいるだけで、来た人に千円札を渡した方が面白いし喜ばれるんじゃないか?」ということだった。あ、いま思えば、これって現代アートだな(笑)

むろんお金が一番重要ではないわけで、それはわかるが、たった1週間の展示に100万円かけるって尋常じゃないなって、終わってから気がついたらというか。大金を投じたにもかかわらず、その後期待したほどの効果もなく、僕はちょっとだけ病んでしまった。プロモーションとしては大失敗。

アジアの島を回り出したのも、それが大きく影響していることにいま頃になって気がついた。島に行くことで次のことを考えられるようになったんだな。そしてそれは2000年に写真集『午後の最後の日射(ひざし)』になったのだ。

「FLOW」

朝=名古屋マリオットホテルでクラブハウスサンドイッチ/夜=親子丼、豆腐の味噌汁

2BChannelでお世話になっている石井朋彦さんの初個展が、GINZASIXライカと横浜そごうライカで23日から始まった(2023年11月23日〜2024年3月7日まで)。僕は会場の構成を手伝ったので、初日は一緒に在廊することにした。

まずは銀座へ。オープンと同時にびっくりするくらいの来場者がいて驚いた。そもそも初個展がライカって聞いたことない。石井さんは、映画プロデューサーでありながら、すっかり写真の人になっている。15時で銀座を離れ、横浜そごうに移動。1時間ほど、来てくれた方々に対応したあと、今度は一緒に名古屋に移動。新人アイドル並みのスケジュール。石井さんは映画のプロモーションで慣れっこらしいが。

名古屋での用事を済ませると石井さんは東京にトンボ帰り。僕は駅前のホテルに1泊して、翌日ギャラリー「FLOW」で北桂樹さんとトークイベント。来年の5月にそこで個展をすることになったので、下見を兼ねての来訪だった。トークイベントは平日の午前中にも関わらず、ギャラリーの椅子が足りなくなるほどのお客さんが来てくれた。

「FLOW」は3年前にできたばかりの若いギャラリー。オーナーの中澤さんは月曜日から木曜日までサラリーマンをして、週末の金土日だけギャラリーを開けるという、二重生活。3年間も。休日はない。

この話を聞いて、僕はこのギャラリーでやってみたいと思った。格式の高いギャラリーよりも、なんだか面白そうだ。それで、僕はイベントの中で中澤さんにある提案をした。「パリフォト目指しましょう」。

パリフォトは世界最大の写真フェアであり、出店したいと申し込んでも、厳しい審査ののち、事務局からの招待がなければ出ることはできない。最低5年の実績、扱っている作家の質、そしてこれまでの実績を問われる。パリフォトに出店できれば、それは一流ギャラリーと認められたと同じこと。日本からの出展費用は軽く見積もっても500万円。もちろんすぐには無理。でもギャラリーに関わる作家やファンやコレクターがみんなで「FLOWをパリフォトへ」と思うようになれば可能だと思う。まずはFLOWに集まる人たちと共にパリフォトを視察して、熱気に浮かれて「パリフォトにFLOWを送り込むぞ!」って思ってくれれば、実現に一歩近づいたことになる。

僕は以前、屋久島のフォトフェスティバルでそれに近い経験をしてきた。右も左もわからない状態で何かを作り出すのは面白い。だからFLOWが中澤さんがジタバタするのを見たい、僕もまたバタバタしたい(笑)。ロールプレイゲームのように仲間を集めてパリフォトを目指すのだ。

            

ベッドの中で閃いた

朝=クランベリーとナッツが入ったパン、ソーセージとスクランブルエッグ、トマト野菜スープ/夜=高円寺「フジ」のチキンソテー定食

布団に入ると10秒後には寝てしまえるお得な体質だけど、年に数回は途中で目が覚めて2、3時間寝付けないことがある。珍しくそれが連日続いた。そしてそういう時に、なぜかその後を決定するようなアイディアが浮かんでくる。何か始める時のアイディアは、大概ベッドの中で浮かんでくる。

今回の眠れない夜に思い浮かんだのは「新しい写真集を作ろう」。2019年に冬青社から出す予定で打ち合わせを重ねていたが、『じゃない写真』(梓出版)を書いていた途中だったので、2020年に出版しようと思っていた。ところがコロナ禍になってしまって、なんとなくその話は立ち消えになり、僕も出すタイミングを失ってしまった。一度機会を失なうと、もう一度同じことをやるのは意外と難しい。その間に考え方や感じ方はどんどん変わっていくから。

幸いにもコロナ中も『da.da』(松本広域連合)や『撮る力見る力』(ホビージャパン)を出すことができて、写真集のことはすっかり忘れてしまっていた。そして去年『da.gasita』を10年ぶりに再販したこともあって気持ち的には満足していた。

ところが新しい本のアイディアが寝ながら閃いた。それはどんどん具体化していって、ついにはタイトルまで決まってしまった。タイトルが決まれば写真集はできたも同然。さっそく、朝起き抜けにテキストを書いてみたら、もう完成形が見えた。あとは今年撮った写真に、これから撮り足して行って、それをデザインし、パッケージしてもらうだけ。来年に向けてやることが、ベッドの中決まってしまった。

<2021年11月15日の日記から>

2012年に出した僕の写真集に『da.gasita』というのがある。「だがした」と読むのだが、これは米沢の方言「んだがした」からきている。米沢に帰ると、もっとも耳にする言葉かもしれない。いいことも悪いことも「ああ、んだがした」と言って何かを断ずることなく全て受け流してしまう魔法の言葉だ。態度を明らかにせず、保留の状態を作るのは米沢の人の性格になっている気がする(笑)。僕がその言葉の凄さに気がついたのは、母の入院で病院に泊まり込んだ時だった。同室には他にもおじいさんがいて、夜になると何かとナースコールをする。その度に看護師さんはやってくるわけだが、ただ眠れないからという理由なので本来は対処のしようがない。それでも看護師さんはおじいさんの話に頷いて最後に「んだがした」という。それを何度か繰り返したあと、おじいさんは何か安心したように眠ってしまった。その語尾の柔らかい口調を何度も聞いた僕は、方言の凄さを感じてしまったのだ。何も解決していないのに、物事が丸く収まる力が「んだがした」にはあった。いま作っている松本市の写真集のタイトルにも方言を使おうと、担当者にいろいろあげてもらった。その中で松本市の人にはわかるが、他県の人には他の意味にも取れる言葉が見つかった。タイトルが決まったことで全体のイメージがにわかに立ち上がってきた。言葉は曖昧だけど役に立つ。

 

気になる

朝=きのこの玄米パスタ/夜=キャベツと三つ葉の温サラダ、カレー

11月になっても夏日だと思っていたら急に冬になった。ということで石油ストーブ投入。寒いのは嫌いだけど、石油ストーブの生活は好き。昔は夏が好きだったけど、最近はむしろ冬の方がいい。これは仕事のほとんどが家でできるからだな。

2B Channelでお世話になっている石井さんが、パリフォトに行っていて、その様子を動画で送ってくれた。「djiオズモポケット3」という小型軽量のVlog機で撮ったものだが、おそろしく画質がいい。ジンバル内蔵で手ぶれは全くなく、音声も極めていい。すごいものが出たなあと感心してしまう。

石井さんに、出発前にちょっと触らせてもらったのだが操作性も良い。しかも価格が7万円くらいと、このカメラインフレ時代に激安とも言えるほど。知り合いも何人か買ったみたいだ。

2019年に2B Channelを始めたとき、手伝ってもらっていたレタッチャーの塚本さんが、その当時出たばかりのオズモポケットの1型を持っていて、収録に使わせてもらったのだが、感想は「面白いね」というくらい。結局オズモポケットは購入することもなく、似たようなアクションカメラのGoPro9を手に入れた。しかしほとんど出番なし。本体が小さすぎて、撮っている感じがしない。

ジンバル用にソニーのVlog機を3台も買ったけど、思った感じでは撮れない。そこらへんのモヤモヤを一掃してしまうようなものが今回のオズモポケット3。これでdjiが儲かってグループのハッセルブラッド支援になれば、それはそれでいいんだけどね。石井さんの動画をみていたら、また海外のフェアに行きたくなってきた。アルルかパリフォトか、来年はどっちかは行こう。どうせなら観客じゃなくて、またプレーヤーで参加したいな。

〈2021年11月13日の日記から〉

松本の写真集用のダミーブック作り。まずはめぼしいものをプリントして床に並べる。72ページあるのだが、判型がA4を半分にしたA5なので基本見開きで32枚使う。そうするとページを開いたときにA4サイズの写真になって見やすい。観光目的だけど、観光写真っぽいものは1枚もない。構成は小細工なし、写真がどーん、どーんと続く。A4にプリントしたものを半分に折って、重ねてみてパラパラしてみる。「ああ、俺って天才」。夕方からYoutubeの配信で「キヤノン新世紀」のグランプリ発表があった。7名の優秀賞受賞者が最後のプレゼンを東京都写真美術館1階ホールで公開で行う。それを昨年から配信でも見れるようになったのだ。僕はこの審査を毎年見ているけど、予想が当たったことがない(笑)。今回ライブで見ていて、プレゼンも作品もともに光岡さんに決まりだと思っていた。もしかしたら千賀さんの逆転あるかとも思っていたら、なんと賀来庭辰さんだった。作品は湖をモノクロの動画と静止画でまとめたもの。会場で見てとても好感のもてる、僕が好きなタイプの写真だったが、グランプリを取るとは全く予想していなかった。最後の選評においても「なぜこの作品だったのか」ということについてほとんど言及されていなかったように思う。これで30年の歴史を閉じることになるキヤノン新世紀。もうメーカー主導イベントの時代ではなくなったということだ。

ソニーが新型

昼=「おお田」の和定食/夜=豚ピーマン鍋

 

ソニーが新型のカメラα9Ⅲを発表した。とうとうゴローバルシャッターを搭載してきた。キヤノンが最初かと思っやらソニーだったねえ。グローバルシャッターとは物理幕を使わないセンサーのデータを電子的に読み出すもので、従来の電子シャッターは順番に素子を読み出すからどうしても最初と最後の素子では時間的なズレが生じて歪んでしまったけど、今回のα9Ⅲは全画素同時読み込みだから歪みというものが存在しないことになる。とにかく夢のシャッターなのだ。最高速が8万分の1秒で、ストロボも全速同調する。AFもAI制御だし、シャッターを押す前から記録開始しているから瞬間を逃すことはない。

 

このカメラ持って40年前の新聞社時代に戻れたらなあ。あの頃は、マニュアルで望遠レンズのピントを合わせたんだよ。ピントが合っているだけで誉められたんだから。40年の技術革新はすごいね。

日大芸術学部の学祭「日藝祭」に行ってきたけど、写真の上手い下手という概念はなくなっていた。みんなプロ並みの仕上がりになっている。腕の差よりもカメラの差の方が仕上がりに大きく影響していそうだ。学校は何を教えていいのか悩むだろうなあ。生徒は何を覚えればいいのか困るだろう。写真学科はカメラマン養成の場所ではないのは確か。もしかしてプレゼンテーション養成学科になるのかもしれない。

X2Dはいいやつだ

朝=玄米パスタ/夜=イカ炊き込みご飯、手羽元の黒酢煮、味噌汁、漬物

日記自体を書くのは1ヶ月ぶり。10月はルデコの2B&Hグループ展が終わった後、すぐに1週間、熊本へ。天草に3泊してから、山都町の山奥の農家に泊まり、高千穂にも連れて行ってもらい、最終的に鹿児島市に1泊して帰宅。それぞれの場所で友人にお世話になってきた。

持っていくカメラはローライフレックスにするか、買ったばかりのハッセルブラッドX2Dにするか悩んで、結局ハッセルにした。最近はなかなかフィルムカメラに手が伸びない。フィルムはストックがあるんだけどね。体はひとつだから、両方持って行くことはしない。「旅にカメラとレンズはひとつだけ」が僕の昔からの信条。

今回はX2DにXCD65mmF2.8をつけた。このレンズは真ん中に全振りしている設計のようで、周辺は崩れるが、中心の解像度はびっくりするくらいだ。ソニーのツアイスから出ている55mmF1.8と同じような写りになる。

両方とも、日本のメーカーでは絶対作らない、偏った設計になっている。真ん中を重視するあまり、過剰補正になっているのか周辺はかなり崩れている。そんなレンズはダメかというと、そんなこともなくて、ポートレートには最適だったりする。あ、でも周辺のボケを気にする人には向かないか。

X2Dを使い始めて「一億画素の意味ってなんだろう」ってずっと考えている。でも答えなんて出るわけない。選んだカメラがたまたま一億だっただけ。なんだか交際相手を選ぶときに言ってそうなセリフだな。X2Dはいいやつだ。ずっと付き合っていける。

<2021年11月2日の日記から>

朝9時過ぎから学生さん3人がルデコグループ展の相談にやってきた。3時間ほど雑談。20歳の話を直に聞けるのは貴重。あっという間に時間が経って、あやうく次の打ち合わせに遅れそうになった。まだ詳しくは話せないが、来年2月を目処に出版する写真集の編集のお手伝いをしている。これも「写真的解決」のひとつだな。束見本と呼ばれている印刷前の白いページの本に写真を貼りつけて、打ち合わせ中にダミーブックを作っていく。するとかなりいい感じのものができた。いつも思うのだけど、このダミーブックの状態が一番写真集っぽい。「俺って天才」と思う瞬間だ(笑)

<2003年11月2日の日記から>

鼻水が出る、くしゃみも。風邪かな。土曜日はジェームズ・ラブロック氏のプリント。1枚目のトーンがなかなか出ず、10枚同じものを焼いた。自分でもなにがなんだかわからなくなる。そういう時は暗室から「2B」にプリントを持っていって床に並べてみる。濃いグレーのトーンだけで構成されているからほんのちょっとの差で印象が変わる。最後に撮った夫人とのポートレートは今年一番の出来だ。いいものが撮れた。2人の関係性が出せたと思う。その後ロケハンのため代官山へ。。ジェームズ・ラブロック氏が超大物なら、来週撮影する女優はプチ大物。どのくらいかといえば「身体にワインが流れている」くらい大物。予定してあった某有名レストランカフェがほぼ使い物にならないので、近くの西郷山公園にいってみる。そこもたいしたことはなかったが、なんとかなりそうだ。それにしてもどんよりとした空だった。オープンテラスのお店はほぼ満員。お茶も飲まずに帰った。代官山近くの旧山手通りには結婚式の客があふれていた。街道沿いの多くのレストランで結婚式をやっているのだ。黒い礼服が違和感を誘う。日曜日はワークショップ。新宿の中央公園でポートレート実習。いい天気で気持ちよかった。ほかにもモデル撮影の集団が大勢いた。10人以上で女の娘を囲む図は結構怖い。対して弱小ワークショップ集団の我々は3人一組となってモデル、カメラマン、アシスタントを交代でこなす。モデル役をやると、撮られる気持ちがちょっとは分かるのだ。中藤毅彦写真展「DeepHabana」をコニカミノルタギャラリーに見に行く。写真集を購入。中藤作品を見た後で隣のブースの写真展を見たら、普通のモノクロプリントが物足りなく見えた。それほどに中藤写真の粒子は際立っている。明日は青山ブックセンターでの「文学フリマ」に間借り出店。

8期オンライン「美術史講座」募集開始

第8期オンラインzoom「美術史講座」(全13回/有料)のご案内

講座は2023年11月12日(日)から2024年2月23日まで。zoomによるオンラインで、13回の連続講座です(単体の受講はできません)。毎週日曜日の午後8時からのライブ配信で、見逃した方のために、その週の金曜日午後8時にもう一度同じ講座を再度ライブ配信します。さらに、どちらも見逃した方、もう一度聞きたい方のために、各回の配信動画も受講者限定でその都度アップしていきます。

 <受講料> 全13回 28,000円(税込/追加料金なし)

受講料振り込みを確認した上で、視聴アドレス等をお送りします。

<支払い方法>

@クレジットカード払い 「BASE」から

https://2bh.base.shop/items/66164629

 <時間> 本配信=日曜/再配信=金曜ともに20時~22

★受講者限定で講座に使う資料と配信講座の動画のダウンロード可能。

★各回の講座では、zoomのチャット機能を使って質疑応答を行います。

本講義では、「歴史は苦手です」という方や、「美術史は初めてです」という方に是非、ご参加いただきたいと思っています。西洋史から美術の流れを知っていく講座ですが、ひとりの作家や作品を詳しく解説するのではなく、その作家や作品が生まれた時代、社会的な背景を、その時々の事件・情勢を交えてお話します。そのため経済、宗教、哲学、思想を横断するように解説していきます。美術の歴史はそのまま世界史と繋がり、現代のアートを理解する上で非常に重要な知識となります。本講座を修了後は、さらに詳しく解説する「写真史講座」(別途/有料)へと繋げます。

<日程と主な内容(2023年11月12日〜2024年2月23日)>

 

■1回 11月12日(日)/<再>11月17日(金) 

「ルネッサンスってなんだ?」   「ルネッサンス」は、日本語に訳すと「再生」。では、何からの再生だったのか? そこには商業の発展とキリスト教の支配の歴史の関係が見えてきます。#ダヴィンチ #ボッティチェッリ #メディチ家 #ローマ教皇 等々

 

■2回 11月19日(日)/<再>11月24日(金)

「荒ぶるバロック」  調和が優先されたルネサンス絵画から、動きのあるバロック絵画へ。突如花開き、あっという間に散ったオランダ絵画たち。宗教改革の歴史を知ることは、美術を見る上でとても重要ポイントになります。#カラバッジョ #ルーベンス #レンブラント #フェルメール 等々

■3回 11月26日(日)/<再>12月1日(金)

「フランス革命が変えた世界観——近代のはじまり」  現代美術を考える上で、実はもっとも大事なのは、近代の理解。近代と現代とは、いったい何が違うのか! フランス革命で何が変わったのか。#ダヴィット #アングル #ドラクロア #クールベ #ミレー #コロー 等々 

 

■4回目 12月3日(日)/<再>12月8日(金)

「印象派の誕生——写真の発明がもたらしたもの」  1800年になると急速に科学が発達し、産業革命による経済の格差や写真の発明が起こりました。ブルジョワが誕生し、絵画を需要する幅が増えていった時代です。#マネ #モネ #ルノワール #超重要画家セザンヌ #ゴッホ #ゴーギャン 等々

 

■5回目 12月10日(日)/<再>12月15日(金)

「二度の世界大戦がすべてを変えた」  第一次世界対戦はヨーロッパの人々に大きなダメージを与えました。信じていたものが崩れ去り、世の中に虚無感が広がります。ダダイズムとシュールレアリズムがもたらしたものとは。現代美術はここから生まれました。 #デュシャン #ピカソ #ロシアンアバンギャルド #バウハウス 等々

 

■6回目 12月17日(日)/<再>12月22日(金) 

「アメリカファーストの時代へ」  1950年代、経済の中心はニューヨークに移ります。そしてアートもアメリカファーストの時代に。それはなぜか。絵画は対象物を描かない「抽象表現」へと変容していきます。#キスリング #ミュシャ #クリムト #ポロック #ロスコー #CIA 等々

 

年末年始で休講

 

■7回目 2024年1月7日(日)/<再>1月12日(金)

「コンセプチュアルアートってなんだ?」  時代は美しいものを求める「美術」から「概念」自体を問うアートへと変化していきます。そこには、大量消費社会や日本の「禅」も大きくかかわってきます。#ジャスパー・ジョーンズ #ウォーホール #リキテンシュタイン #モンドリアン #バスキア #キース・ヘリング 等々

 

■8回目 1月14日(日)/<再>1月19日(金)

「ついに何がなんだかわからなくなる現代のアートへ」  社会は関係性でできています。それを現すのが現代アート。社会批評や貢献すらもアートの範疇に。経済界の人々はなぜ現代アートを好むのでしょうか? #マウリツオ・カテラン #バンクシー #KAWS(カウズ)#ジェフ・クーンズ#奈良美智 #塩田千春 等々

 

■9回目 1月21日(日)/<再>1月26日(金)

「日本アートの歴史」  日本の美術の歴史をいっきに解説します。中国の影響から日本独自の絵画へ。そして西洋化へ。すべては村上隆へと繋がっていました。#狩野派 #浮世絵 #藤田嗣治 #岡本太郎 #オノヨーコ #草間弥生 等々

 

■10回目 1月28日(日)/<再>2月2日(金) 

「思想と哲学」   難しいと思っている人が多いけれど、かなり楽しい思想と哲学の世界。人間とは何か、社会はどのようなものか、ギリシャ時代から、人間は考えて続けています。#プラトン #デカルト #ニーチェ #フロイト #ユング #サルトル 等々

 

■11回目 2月4日(日)/<再>2月9日(金)

「現代思想」  ここがとっても大事! 実存主義から構造主義へ。そして現在の主流とは? 現代アートに大きく影響してくる「現代思想」をできるだけわかりやすく解説。   #ソシュール #フーコー #バルト #レビィ=ストロース #ジャック・デリダ 等々

 

■12回目 2月11日(日)/<再>2月16日(金)

「宗教」  日本人は宗教をあまり知らないと言われていますが、実はアートととても密接に繋がっています。世界三大宗教から日本の宗教までを解説。#ユダヤ教 #キリスト教 #イスラム教 #仏教 #密教 #神道 等々

 

■13回目 2月18日(日)/<再>2月23日(金) 

「音楽・建築、映像の歴史」  音楽も建築も映像も、美術と同じく歴史と密接に関わっています。古代の建築から現代のアニメーションまで、その流れを一気に解説します。

 

来週10日からルデコです

朝=おろしうどん/昼=のり弁/夜=居酒屋で打ち上げ

急に季節が変わったみたいで、朝晩は寒いくらい。大学の講座も7日の土曜日に無事に終了してひと段落。次は10日から渋谷のギャラリー・ルデコで僕が主宰する「2B&H」のグループ展が始まる。今年も4フロアを使っての展示だ。毎年このG展が終わると、なんとなく年末感が出てくる。ぜひ見に来てください。

「2B&H」グループ展  

会期=10日(火)から15日(日)まで。

時間=11時〜17時(最終日は17時まで)。

昨日から京橋駅を中心に「T3フォトフェスティバル」が始まっている。グループ展を開くだけでもなかなか大変なのに、16名の写真家の展示を各所で行うなんて信じられない。さらに今年のT3の招待作家がすごい。よく集めて来たものだと驚いてしまった。レセプションにお招きいただいたので、先週行ってきたのだけど、大盛り上がりだった。毎年見ているけど、今年が最高だと思う。こういうのって段々トーンダウンしていくことが多いけど、T3は毎年前年を更新し続けているのがとにかくすごい。僕のルデコのグループ展は、毎年何も変わらず。でもいつものお店に行くような感じだから、安心感はあるな(笑)。

さて、これから名古屋のギャラリー「FLOW」の中澤さんと北桂樹さんと来年の展示の打ち合わせ。最近、名古屋に縁が多い。関西での個展は初めてなのでとても楽しみだ。打ち合わせだけでは勿体無いので、あわよくば「2BChannel」の収録もしてしまおうと思っている。何にでもネタにするのがYoutuber(笑)。

<2021年10月8日の日記から>

京都グラフィを見るにはどうしても3日かかる。でもせっかく京都に来ているから観光もしたい。なので朝6時に清水寺に向かう。ここは早朝から開門していると宿の人が教えてくれた。観光客がほとんどいないので清々しい。3日目の目玉は二条城での展示だった。「生花と竹のオブジェがいい」と聞いていて「えー、写真じゃないのか」と思っていたのだが、素晴らしかった。これだけ見に行ってもいいと思う。竹でオブジェを作ったアーティストのインタビュー動画が流れていて「制作で使った竹は90%再利用する。アートだからといって環境を壊すような行為はしたくない」と言っていて、銀塩写真をやる身としてはうなだれてしまった。二条城の展示がいちばんかと思っていたら、KG+枠「石橋英之 Latent」の登り窯跡地での展示がすごすぎて、、、日帰りならこのふたつを見るのがおすすめだ。自宅に帰り着いて、猫番してくれていた娘がもう一晩泊まるというので、お土産の鯖寿司を家族で食べてほっと一息していたら、家が突然揺れて携帯がキュンキュン鳴り始めた。テレビをつけたら、電車も止まっているようで、タイミングよく帰ってこられて本当によかった。

週末は先生

朝=おにぎり、豆腐のスープ/夜=板わさ、きのこ天ぷら、鍋焼き蕎麦

9月の週末は、社会人向けの大学院大学 で16コマ分の講義をしている。僕の専門は写真だけど、それだけではなくて、現代アートビジネスの授業になる。

ここ数年間、単発でやっていた大学での講座が評判良くて、ありがたいことに半期の講座に昇格になった。MBAを取りにきているような方々に向けに授業をすることになるので、始まる前は「僕の講義内容なんて受講者はみんな知ってるんじゃないのかな?」と思っていたのだけど、いざ始まってみたら全然そうでもなかった。午前の講義をオンラインの方で授業を聞いていた方数名が、対面で受講したいとのことで、午後の講義にわざわざ教室までやって来てくれたり、終わったあとは多くの生徒さんから感謝された。こんなの今まで経験がない。授業中の反応もいいし、質問も多岐に渡るし、まさに講師冥利に尽きる。

そして僕の役得として、ゲスト回を設けていいということだったので、大学の担当教授にお願いして、2回目には日本の現代アートコレクターの第一人者の方に来ていただくことができた。90年代から海のものとも山のものともつかない日本の現代アートを収集し、今ではそのコレクション展が世界規模で開かれている。その話が面白くないわけがない。講義はあと2回、それぞれお呼びしているゲストもすごい方々。まさかそんな人たちと一緒に授業ができるとは。講義をするのがこんなに楽しいなんて!

<2021年9月26日の日記から>

「マイク沼再び」のことをFacebookに上げたら皆大騒ぎ。「やれやれ、買い替えろ!」と言う声が聞こえてきそうだ。一旦はその気になったが、冷静に考えればZOOMでの美術史講座配信は特に問題はないので、このままSUREのマイクでいい。2BChannnelラジオは、しばらくやめにする。今週アップした録画だけどラジオっぽい編集動画は再生回数も多いし、視聴維持率も高いから続けても良さそうだ。「プレミアム公開」にすればチャットが使えて、僕もチャットで質問に答えることができるのでライブの代わりになる。編集動画の場合はパソコンを手元に置く必要がないからファン問題はクリアできる。次にマイク問題だが、手元にある「ZOOM H5」というマイク内蔵のレコーダーを使えば音はかなりクリアに録れる。これを「シグマfp」で撮影した映像と編集で同期させる。そんなに手間はかからないはず。

まずはこれで1本作ってみようと思う。カメラはやっぱりパナソニックの「S5」よりもシグマの「fp」の方がしっくりする。ティールアンドオレンジの設定にすると顔色が良くなる。このやり方が極めてシンプルで効果的のような気がする。

水を撮る

朝=トマトスープ、チーズとウィンナーのマフィン焼き/夜=なかよしの餃子

10月10日(火)から、渋谷のルデコで年に一度、僕主宰のグループ展があって、最近はそっちの方で忙しくなってきた。地下、4階、5階、6階の4フロアを使って展示で、毎年のイベントとして20年間続けている。今回は地下が「モノクロ縛り枠」で6階が「フォヴィオン枠」。このフォヴィオン枠は、出展者がシグマのフォヴィオンセンサーを使った写真を展示する。使いづらいカメラで写真を撮る意味は何かというと「もしかしたらすごいのが撮れちゃうかも」という宝くじみたいなカメラだから、毎年すごく面白い作品が揃うこと。

展示ではいつも、自由作品の他に「共通課題」を設けているのだけど、今年は「水」になった。なんとなくイメージは湧くのだが、実際にどういうシチュエーションで撮るかというと難しい。大きなバケツか、バットに水を入れて取ろうかと思ったが、部屋はすでに配信スタジオ。足の踏み場もない。水は平面でなおかつ不定形だから撮りづらい。であれば固めてしまえばいいと考えた。氷の塊なら立体的だし光の反射がフォヴィオン向きだろう。でかいが欲しかったが、氷柱はそうそうコンビニでは売っていなかった。業務用スーパーに行けばあるのかなと思っていたが、妻がAmazonで検索したらちゃんと売っていた。クール宅急便で運んでくれるのだ。すぐに30センチ角はある中ぶりの氷柱を3本注文してみた。まさか氷がネットで買えるとは。小売店がなくなるわけだ。

さて、今回の氷を撮るアイディアはバッチリ決まった。dpメリルで撮ったものをプリントすると、「俺って天才!」が久しぶりに発動した。これはちょっと自慢したいので、来月ルデコでお待ちしています。ぜひ見にきてください。

<2021年9月21日の日記から>

昼間は、高円寺でご飯を食べて、そのあとプラプラ写真を撮りながら帰宅。夕方からは、東中野のポレポレへ、知り合いの映像作品を見に行った。いろいろ書こうと思ってたけど、夜にちょっといいワインを飲んだら全部忘れてしまった(笑)。そんな日。 

<2015年9月21日の日記から>

ジムに通い始めて早6か月、体重は66キロ台から63キロ台まで落ちた。これは26歳の時と同じだが、筋肉量は大きく違う。54歳ともなると体力というか基礎的なものの衰えを感じざるをえない。近頃同世代の友人に会うと血圧の話になる。ついにそういうお年頃になったかと思うとシミジミする。ジムに血圧計が置いてあるのでたまに測ってみるが、110-65くらいなので、これは問題なさそうだ。そして血圧とともに語られるのが「五十肩」。誰でも一度は経験すると脅かされていたが自分には関係ないと思っていた。しかし、ついにその日はやってきた。2ヶ月前くらいから右肩に違和感を感じていた。トレーニング中ある動作の時にピリッとくることがある。気のせいにしようと思っていたが、右肩に決定的な痛みが走った。それは引き伸ばし機のピントを合わせているときに起こった。暗室経験のあるかたなら分かると思うが、ピントルーペを覗いた姿勢で右手を引き伸ばし機上部のピントダイアルにのばすと窮屈な姿勢になる。上体を折って下に向け、手を上にまっすぐ伸ばす感じだ。大四つ切りサイズにプリントしようとすると、引き伸ばし機のヘッドが上がり、ますます窮屈になる。ピントルーペに顔を寄せピントダイアルに手を伸ばした瞬間、ビリッときた。あうう、と顔が歪む。ついにきた、五十肩だ。まさにその時、ラジオではピエール瀧が五十肩について語っていた。「それは焼けた火箸を突っ込まれた痛さ」。なんて恐ろしい表現なんだよ。もしかしてこれからそうなるわけ? 妻に五十肩のことを話すと「君にもようやくきたようだね。大丈夫辛いのは一年。でも右肩が治ったら必ず左肩もくるからねえイヒヒヒヒ。不思議と同時にはこないみたいよ」と両肩経験済みの彼女はにこやかに僕の五十肩デビューを祝ってくれた。適度な運動は必要ということみたいなので、シュクシュクとトレーニングを続けることになる。幸い僕の使っている引き伸ばし機には手元でピント調整できるワイヤーノブがあるから大きく手を伸ばさずにプリントできる。来年1月の展示があるからこれから暗室の日々なのだ。