62歳のカメラ

朝=全粒粉パン、スクランブルエッグ、トマト野菜スープ/夜 親子丼、無限キャベツ、ホタテのスープ

昨日、2024年のルデコの展示をゴールとしたワークショップの告知ところ、数時間で予定人数に達してしまい早々に募集が終了した。申込みしていただいた皆さまありがとうございます。久々の対面型ワークショップだが、これまでのような毎週連続ではなく、1年間、月一度のもの。初めてのやり方だけど、今の配信中心の生活にはちょうどいいし、月一度ならちょっと離れたところの方も参加できるというメリットもある。講座は10月からスタート。まずは今年のルデコの展示に来てもらって、展示のイメージを掴んでもらおう。

夜は「2B Channel」4周年記念ライブ配信。とはいえ、いつも通りに1時間写真の話。ライブの最中に妻にも言っていなかった「Hasselblad X2D買いました」と告白。ついにやってしまった。62歳、これが最後のカメラとなるのか? ま、そんなことないわな(笑)  X2Dは今僕が求めるカメラとしては究極。これで新型レンズが供給されれば理想型の完成だ。

<2021年8月31日の日記から>

台所周りの水道管工事。これで水漏れの心配なし。大家さんありがとうございます。昼過ぎに女子学生が何やら悩んでいるようで、相談にやってきた。なんだか悲壮感が漂っている。写真が手につかないというか、そもそも写真をこのまま続けていくべきかという大きな悩み。テクニカルな問題なら解決策はいくらでもあるけど、この場合に明快な解決策はない。せっかく入った大学なんだから頑張るべきだなんて答えは誰も求めていない。彼女に言ったアドバイスはふたつ。「父親に相談してみて」と、今公開されている映画「アーヤと魔女」を見てみて。基本、父親は娘の味方なんだけど、20歳の頃ってそうとは思えないもの。相談されると嬉しいもんだし、助けてくれる。正しい理想的な生き方よりも、アーヤみたいな生き方の方がしたたかでいい。みんなが幸せになれるし。ただし、生理的にもう無理だと思ったら撤退するのもいいんじゃないかと思っている。2時間後、話を終えた頃には、来た時の悲壮感はなくなっていた。後からメールで「まず父親に会いに行って、アーヤ見ます」とあった。彼女が帰った後は、溜めていた仕事の編集作業。5時間くらいで粗編集ができた。これを仮アップして先方へ送らないと。しばらく撮影仕事してないなあ。

<2008年8月30日の日記から>

5月からアシスタント不在のため、人手が必要な時だけTAROに臨時で手伝ってもらっている。朝、TAROから電話があった。「今事務所の前ですが渡部さんどこですか。集合11時でしょ」「何言ってるんだ、撮影明日だろ」「エッ、渡部さん確かに今日だって言ってましたよ」スケジュール表を見たら僕が一日間違っていた。冷たい汗が背中を伝う。今日はタレント撮影の日だ。大慌てで事務所に向かい、現場に10分遅れで到着。「いや〜道が混んでて」 TAROに頼んでおいてよかった。やぱりひとりだと危ないな。来週のギリシャ取材の打ち合わせで編集部へ。イタリア号が出来上がっていた。表紙、中扉を含めて30ページ以上撮影している。ほとんどがフィルムでの撮影。大きなポスターも645のポジから印刷している。ギリシャもフィルムにすることにした。ただし35ミリ。島と島の移動を繰り返すため極力荷物を減らしたい。その代りと言ってはなんだがフィルムはベルビアを使うことにした。100Fのほうではなくてベルビア100。べルビア50は出た当時使っていたが100になってからは初めて使う。400以外の感度を使うのも久しぶり。ナチュラルな表現はEOS5Dに任せて、ヴィヴィッドな風景はフィルムを使う。デジタルで一番弱いのはヴィヴィッドな表現だと思う。なので今回の使い分けとなった。自宅でパッキングしてみる。体重計に載せて機内持ち込み制限をクリアできるように何度も出し入れ。着替えがなければいいのにと思ってしまう。

4周年

朝=ひやし肉うどん/夜=台湾中華「高味園」

根津の「アトリエウチノ」から「ご注文の額が届きました」と連絡があったので、灼熱の中、引き取りに行った。途中で「送ってもらえばよかったかな」と思ったけど、、なんでもかんでも宅配では味気ないから足を運んだのだ。今回注文したのは、作家が廃材の鉄で作ったもので、六切りのプリントが収まるサイズ。オーダーメイドなのだが、あまりにも質感が良くて、追加で4枚お願いすることにした。6枚あれば小さな展示の時に便利だ。

「2BChannel」は9月1日で4周年になる。登録者は2万4千人、アップした動画はなんと400本。コロナが始まる半年前に始めたので、ちょうどよかった。コロナでワークショップも講演も展示も、何もやることがなかった2年間、Youtubeに特化できたから。この4年で「2BChannel」用のカメラ機材は大きく様変わりし、キヤノン、パナソニック、シグマと変遷を重ね、今ではソニーになってしまった。

しかしソニーはあくまで動画専用で、写真はほぼ撮らない。なんだか気乗りしないのだ。だから写真を撮る場合はリコーGR3xとハッセルヴラッドX1D2になる。ところがハッセルのサービスセンターが今年の春で閉店してしまい、修理、点検の場所がなくなってしまった。新しいX2Dがいいなと思っても、そこが気になって買いきれない。でも気になる。なので新宿マップカメラに行って聞いてみたら「修理メンテナンスは日本で行えます。販売店経由で修理に出せます」ということだった。新製品のレンズも発表されたし、まだ当分大丈夫そうだ。

<2021年8月29日の日記から>

本日の映画はテレビ放映の「風立ちぬ」。観るのは確かこれで5回目。「紅の豚」の次に好きな映画。クーデルカの『EXILES』の解説動画を、2BChannnelでやることにした。先週は「モノクロ写真」について写真集紹介をしたのだが、今度は大物。もはや古典的名作と言ってさしつかえない、不朽の名作『EXIKES』。単純に写真集をめくってアウトラインを説明するだけではつまらないので、徹底的にやってみることにした。まず全カットを簡単に模写。そうすることで構成要素が見えてくる。続いて全カットをスキャニングしてデータ化し、それをL版サイズにプリントして並べてみる。写真集は常に2ページ単位でしか見ることができない。それを平面的に並べてみると作者の意図のようなものが徐々に見えてくる。そしてPC上でスライドショー形式にして繰り返し見てみる。こうするとカットとカットがどのようにつながっているのか、よりはっきりする。写真集をバラバラにしてみたことで、なんとなく見ていた時とまったく違うものになってきた。このやり方で他の写真集もやってみたくなった。これ若い頃にやっておけばなあ。
<2005年8月27日の日記から>

「カメラやレンズに対する執着はほとんどなくなってきている」と昨日書いておきながら、カメラ雑誌から「中古カメラのススメ」のインタビューを受けた。話した内容は「もう5万円以上の中古カメラは買わない」ということと、「そのシリーズが撮り終わったら新たなカメラを探す」ということだ。何の「ススメ」にもなってないな。インタビュワーのタカザワさんと飲み屋に流れる。写真家の稲垣 徳文さんが合流。「旅、ときどきライカ 」の著者だ。35歳、若手バリバリの世界を旅するカメラマンだ。同じ特集ページに登場するため、タカザワさんが引き合わせてくれた。彼はまた「線香花火研究者」でもある。お土産に貴重な日本産の線香花火を分けていただく。3人が集まって話すことは旅のことがほとんどだ。どこそこはいいとか、あそこの飯はまずかったと話しは尽きない。話しているうちに、どこかに行きたくなってしまった。

 

真夏の夜の、、、

昼=銀座「天龍」/夜=蕎麦

土曜日の夜、萩庭桂太さんに来ていただいて2B Channelのライブ配信。先月の萩庭さんとの対談が思わぬ反響で、行く先々でその話になる。萩庭さんもそうだったようで、それならと視聴者の質問を受けるライブ配信をしようということになった。

多くの質問が寄せられることを考えて、近くに住む「写真学生」に来てもらってコメントを読んでもらった。これがうまいことはまって、2時間半という長丁場にも関わらず全くダレずに配信できた。終了後、下の食堂でワインを飲みながら3人で話し込んだのだが、ライブには出せないような話がたくさん出てきて最高だった。これは役得としか言いようがない。今回のライフ配信は、その場限りではなく、アーカイブとしてずっと聴き続けられれるものになったと思う。まだ聴いていない人は是非。配信だけど、音声は聞きやすくなっていると思います。

日曜日はTIP主催のポートフォリオレビュー参加者に向けての講演会に呼んでもらった。写真家としてのチャンスを得ようとしている人たち、約30人ぐらいの方々に向けての話。だから、ただ面白いと言うだけでは物足りないだろうし、かといってこういった場所で正論めいたことを言ってもしょうがないし。そこで最初の15分は主催者側の担当の方から質問の形で振ってもらい、その話を膨らませる形で本題に入っていった。だからスライドとかパワポとかなし。座らず立ったまま話し続けた。週に一度のライブ配信で鍛えられているから、周りの雰囲気を感じながら話はどんどん変化していく。聴いている人が満足しているかどうかは肌で感じるのだけど、今回は大丈夫みたいだった。内容は、「時代が変わったから写真家のアプローチも従来のままというわけにはいかなくなった、自分の作品が認められる方法論は変わってきた」というもの。「こうすればうまくいく」というアドバイスはできないけど、今の写真を取り巻く環境のことが少しは伝わってくれると、やった甲斐があったというもの。

<2021年8月21日の日記から>

「太田」で食べた昼ごはんに、魚の唐揚げが出て、おいしいのだけど、鯵でも鰯でもないし、何かと思ったら「ぐるくん」だった。それって沖縄でよく食べたやつ。最近海水温が上昇しているせいで、今まで南でしかとれなかった魚が、近海でとれるようになったそうだ。そういえば、グリーンランドに観測史上初めて雨が降ったというニュースが出ていた。地元の米沢でも20年前くらいから冬に雨が降るようになった。僕が小さい頃は雪が当たり前で、冬に傘をさすことなどなかった。昼ごはんの後、猛暑の中暗室へ。先週プリントしたものを回収して、新しくフィルム現像。最近はちょっと濃いめに現像するようになった。以前のようにギリギリラインで現像するとプリントが上手くいかないのだ。文句言ってもしょうがないので、フィルム現像で調整してみようと思っている。夕食後、また映画を見る。「グリーンブック」。なんとなくロードムービーっぽいのかなと思って選んだのだが全然違ってた。実在のピアニストの話で1960年代初頭のアメリカ南部が描かれている。ちょうど僕が生まれた頃のアメリカ。

<2007年8月20日の日記から>

米沢から帰ってきてすぐにワークショップが続き、今週からは通常仕事が始まった。写真家は一休みしてカメラマンとして仕事をしないといけない。後数日のうちに切り替えをしてカメラマンモードにしなければ。『旅するカメラ3』でも書いた元アシYが、とうとうテレビのドキュメンタリー番組に出ることになった。テレビ東京 「世界で密かにメジャー級 SUGOI☆日本人」。世界で活躍している日本人20名が出るうちの一人のようだ。ピンではないがそれでも凄いことだ。僕もYがどんなことをしているのか初めて知ることになる。あのYがねえ。人生って分からないもんだな。

 

 

堂々巡りの“もしも”

朝=うどんのペペロンチーノ/夜=マグロ丼、オクラの黒酢あえ、豆腐味噌汁

今日は特に暑い。灼熱。学生時代はエアコンなしで過ごしていたけど、今は絶対に無理。電気代も高いし、今の学生は大変だな。

僕が今、日大芸術学部の写真学科の学生だったら何をしてるだろうね。怠け者だから多分何もしてないか。40年前は「なんとかなるだろ」と楽観的に思えたけど、今、学生だったら悲観的になってるのかな。そもそも、写真学科には入っていないだろう。写真をやるにはお金がかかるし、大学を出たからといって写真で稼げる訳でもないし、そうなったら写真を続けるために別の道を選ぶのが理にかなっている気もする。かといって何をやればいいのか、18歳じゃ思いつかないか。せっっかく田舎に生まれたんだから、農業やっておけばよかったなと今になって思う。もっとも、そんな世界から抜け出したくて田舎を猛ダッシュで出て来たんだけど。今、18歳なら何をやるかよく考える。でもこれまで生きてきた経験でしか考えられないから、答えは常に堂々巡りというか、写真をやっている自分しか想像できない。体が丈夫なら漁師になりたいんだけどなあ(笑)。

〈2021年8月17日の日記から〉

10日くらい映画ばかり見ていたけど、今週から諸々再開。2BChannelも最近はライブを週一でやっているくらいで編集動画は回数が少なくなってきた。飽きたというより、インタビューとか外に出ての撮影がやりづらくて。なので今週はライブをお休みして編集動画を作る。ネタを何にしようか午前中から資料を漁っていたんだけど、どれも一長一短でどうしようかと悩んでいるうちに時間があっという間にすぎる。毎日アップしているYoutuberは本当にすごい。昼ごはんを食べに外に出た時に思いついたのが「インスタグラム」の話。先日の八戸ワークショップで「インスタはレタッチしすぎで良くないと雑誌に書かれていましたがどう思いますか?」という質問があった。これに応えてみようと思った。その時は雑誌とインスタでは「器」つまりメディアが違うから同列に論じるのは無理があると思うし、現代においてインスタ写真を否定するのは無理があると思うということを話した。僕自身ちょうど2ヶ月前からインスタを毎日投稿していて興味があることなので、インスタとは何かということを調べてみることにした。するとネタ的にも面白いことがたくさん出てきたので、全体の構成を作れそうだ。

〈2017年8月17日の日記から〉

火曜日から米沢へ帰っていた。お盆のため親戚やお墓にお参りに行く。米沢も暑かった。でも東京の暴力的な暑さとは違う気がする。緑の多さのせいだろうか。蝉の鳴き声が凄い。お盆が終わった16日の朝はひんやりしていた。米沢から喜多方を通り会津若松を抜け田島へ向かう。いつも米沢からの帰りに寄る友人がやっている宿があるのだ。田島は盆地のせいで「光害」が少なく星がきれいに見える。だから星好きが集まる宿だ。数日前まで新月で、しかも晴天が続きペルセウス流星群が見えたらしい。行った日はあいにく曇り空だったが夕食後の30分だけきれいに雲が口をあけ、天の川がはっきり見えた。長く尾を引いた流星群のかけらも見ることができた。次に行く時は雪の季節。すぐ近くにはスキー場がある。アルルから東川、田島と今年の夏はなかなか終わらない。

11日は軽井沢でWS

朝=ホタテ出汁の雑炊/夜=とうもろこしの出汁豆腐、親子丼、唐揚げ、味噌汁

目黒の「ふげん社」に石川竜一さんの展示を見に行って来た。先月末、沖縄の石川さんのアトリエに訪れる予定だったが、同行者との予定が合わず中止になってしまっていた。今回ふげん社での展示のため、石川さんが東京に来ていたので、会いに行ったのだ。残念ながらインタビューの時間はとれなかったけど、ちょっとだけ話ができた。

会場には石川さんのファンがたくさん来ていて、最新刊の『z k』にサインをもらっていた。そのうちのひとりが石川さんに「仕事を辞めたばかりで今後どうしようか悩んでいる」と人生相談を持ちかけた。それに対して石川さんはじっと考え込んで、言葉をひとつひとつ絞り出していた。「僕はこう生きてきた」と言う話だから、誰にでも当てはまることではないのだけど、思わず聞き入ってしまう。たまたま横にいた僕にとっても素晴らしいものだったから、その人にはそれ以上だったろう。次回、石川さんに「2B Channel」に出ていただく時には「石川竜一に聞く人生相談」と言うのをやってみたい。仕事も人生も、全部写真に関わっているからこそ、人生相談の中に石川さんの写真に対する考え方が出てくる気がする。

「2B Channel」は水曜日にライブ配信をして、週末にインタビュー動画をアップするというサイクルになって来ている。現在進行中なのは造本家の町口景(ひかり)さんのインタビューで、これは三部作になっている。そのほか、今週末は石井朋彦さんと「日本の写真賞」について、そして北桂樹さんには「ギャラリー、コレクター、写真家」の関係について聞いている。すでに1ヶ月分のストックがあるので心穏やか。8月はそのほかに、石川武さん、そして女性の写真系Youtuberのみなみさんにも出てもらうことになっている。先月の萩庭桂太さんとの対談では、大きな反響があって、そのフォローとして8月19日の土曜日にはふたりでライブ配信することになっている。

というわけで、2Bスタジオの機材は順調に増えていって、かなり揃ってきた。これで終わりということはないけど、だいぶ落ち着いて来た感じはする。と、数年前も思っていたけどね(笑)。

<2021年8月10日の日記から>

八戸オンラインワークショップ。本田夫妻を迎えて3時間、30人の視聴者と9人のレビュー参加者で行った。目の前に誰かいるだけで、気持ちが落ち着く。いつも2BChannelでひとりで配信でいるのとまったく違った。レビューの中で子供が撮った写真があったのだが、これがものすごくいい。こんな風に撮れたらいいなと本気で思わせる。コンテストなんかで小学校、中学校、高校生の部があると間違いなく小学生の写真がいい。中学校になると、見られることを意識し始めて、高校生は女子はマクロに、男子は望遠で部分を切り取るようになるからつまらなくなる。土門拳は「モチーフとカメラの一致」を強調しているが小学生の写真はまさにそれ。「写真は教育できない」と田中長徳さんがずっと言っているが、そういうことかもしれない。

<2012年8月10日の日記から>

近ごろ印画紙類はアメリカのFreeStyleから買っている。日本では手に入らない印画紙や薬品が豊富に在庫しているのが魅力だ。使っているADOXという印画紙はここでしか手に入らない。しかも早ければ中2日で届く。以前は「ヨドバシカメラより早い」と驚いていたら、近ごろヨドバシは即日配送になった。午前中に頼むと午後に届いたりする。しかも配送料無料。Amazonへの対抗だろうが、これで通販の敷居がとても低くなった。なんでもかんでも通販になってお店に行かなくなってしまった。写真展だけはネットで済ませられるわけもないので出かけるしかない。東京都写真美術館で田村彰英「夢の光」。戦後生まれの天才のひとりだ。なんだか久しぶりに写真を見た実感というか満足感がある展示だった。見ていて思ったのは「まずは写真ありき」という田村さんのスタンス。多種多様なものを撮っている。面白いのはすべての写真にカメラやレンズといった機材名が記してある。通常は「ゼラチンシルバープリント」とか「Cタイププリント}というようにプリントタイプだけが書いてあるものだ。美術館展示で機材名があるのを見たのは初めてだ。「何で撮ったか」を大事にするのは田村さんらしい。僕らの世代は、ずっと田村さんの世代の背中を見てきた。だからその足跡を一堂に見ることのできる展示はとてもうれしい。前回は川内倫子だったし、次回は繰上和美、12月は北井さんだ。今年の都写美は面白い。

 

YouTuberだものw

朝=鳥キムチソーメン/夜=トマトリゾット/夜食=せんべい汁うどん

編集のテロップ入れが終わったので、今日の撮影の準備。撮影とはいっても、写真ではなく動画。渋谷のヒカリエで、平間至さんのインタビューだ。先日、ヒカリエでやっている平間さんの展示を見に行ったとき、偶然お会いしたので「2B Channel」への出演をお願いした。平間さんとは10年ぶりくらい。その時は僕のワークショップに来ていただき、オリジナルのプリントを見せてもらったことがある。

今回はヒカリエのホワイエでの撮影なので、機材を現場まで持ち込まなくてはならない。カメラはソニーのFX30とα74の2台。レンズはズームが1本、単焦点が2本。それに外部モニター、ダイナミックマイクが2本、ケーブル、三脚が大小2本。かなりの重量になる。だから今日はアシスタントをひとり、お願いして来てもらうが、現地集合なのでなんとかしてこの荷物を渋谷まで運ばないと。でも、この機材を準備している時が一番楽しい。旅行に行くときと同じ気分。今週だけでも収録が4本もある。YouTuberもすっかり板についたw

<2001年7月30日の日記から>

玄米だけ食べてると体に良いかというとそうでもないらしい。玄米は消化に悪いそうだ。なんでもやりすぎは良くないということか。今日は朝からなんだかパッとしない。体調が悪いわけではないが、集中力もなくボーッとする。夏バテ? 4時くらいに風呂に入りながら冷えた桃を食べたら気分がすっきりした。でもそのまま仕事をするのもなんなので、Huluで映画を見ることにした。沢田研二主演、長谷川和彦監督作品「太陽を盗んだ男」。沢田研二がひとりで原子爆弾を作ってしまう話だ。1979年公開。当時大きな話題となり、大学時代に名画座で見た。40年経って見直したら意外と内容を覚えていた。長谷川和彦はたった2作品で伝説となった監督。なぜ3作目を撮らなかったんだろう。そういえば「自分で自分を縛ってしまったんだよ」と映画学科の先輩が言っていたな。

<2010年7月30日の日記から>

昨日からオリンパスギャラリーで「デジカメ散歩」の展示が始まった。昨夜はオープニングパーティが開かれたくさんの写真家も集まった。いまでこそ挨拶のときに「写真家の○○です」と言うのはごく普通のことだけれど、90年代にそんなこと言う人はいなかった気がする。写真家っていうのは土門拳とか木村伊兵衛とか歴史上の人物という気がしていた。若い人ほど意識的で面白い。近頃同年代よりも20歳も離れた写真家と会う機会が多い気がする。昨日のパーティの2次会でも、自分がほぼ最年長であることに驚いた。ずっと新人だと思っていたのに。展示ではE-P2の「ジオラマモード」で撮った写真を大伸ばししている。これが女性に受ける受ける(笑)そしたらパーティには「本家」写真家、本城直季が来ていてびっくり。僕は昔から彼の撮る写真のファンのひとりなのだ。全員の展示写真を隅から隅まで目を近づけて見てみた。大全紙(新聞紙の見開きくらい)に伸ばされたものに周辺までまったく破綻がない。撮像素子のマイクロフォーサースの大きさは親指の爪くらい。昔の110カメラサイズなんだそうだ。いろいろ技術的な説明を受けたが、なんでそんな小さなセンサーでこれほど伸びるのかがやっぱり不思議。先週の小山さんのチベットの展示でも、E-P1が使われていると聞いた。ドキュメンタリーの分野でのカメラ選択が変わってきているのもうなづける。

「新 美の巨人たち」まだ観られます

朝=山かけキムチうどん温玉添え/夜=新高円寺で焼肉

月曜日から沖縄の予定だったけど、諸事情で延期になってしまった。何のカメラを持っていくか悩んでいる最中だったので残念だけど、また仕切り直しだ。仕方がないので半年ぶりくらいに焼肉を食べて、ケーキを買って家に帰る。そして夜の10時から始まる「新 美の巨人・ソールライター編」が放送されるのを待つ。知り合いやワークショップの人たちに「出るよ」とは言っていたけど、僕もオンエアで初めて見るので、収録で話したことのどこをピックアップされて出ているか知らされてはいない。だからちょっとドキドキしながら放送を待っていた。

番組が始まると「フィルムカメラが今ブームになっている。そんな彼らが注目する写真家がソールライター」みたいな感じで始まって、さっそく数秒間僕が出てきた。番組は、生前のソールライターご本人映像も挟みながら、落ち着いたトーンのナレーションのもと、女優・モデルのシシド・カフカを案内人にして、ニューヨークのソールライター記念館の館長や僕が出てくる構成になっていた。僕のひとつ一つの尺は短いが5回ぐらい出番があったから、爪痕はしっかり残した! と思いたいw

ところで、今回の出演にあたっては、事前に僕の事務所スペースで収録したのだが、音がすごくよく取れている。さすがだなあと、観ていて、そのことばかり気になってしまった。使っていたのはソニーのワイヤレスピンマイク。定番だがかなり高い。ふたつのマイクが同時に使えるタイプだと20万円くらいする。ずっと買いきれなくているが、自分の声があんなにクリアに取れることに驚いた。後処理もあるのだろうが、元のデータがいいのは聞いていてよくわかる。見逃した方へ。大丈夫です。

BSテレ東 8月5日(土) 23:30~24:00  でも再度放送されます! ぜひどうぞ。

<2021年7月23日の日記から>

何度やってもB &Hの決済ができないので、クレジットカード会社に連絡したら、不正アクセスだと思って止めていたらしい。数年前はよく注文していたのだが、最近はフィルムや印画紙の購入をしていなかったからなあ。ようやくエイトバイテンのカラーフィルム3箱を注文完了。長年やってみたかったことをひとつクリア。まだ何も撮ってないけど(笑)たった30枚、何かのシリーズを作るには少なすぎる枚数だ。なので、30枚という数を利用して毎日1枚づつ撮るという「日録」を1か月やってみたらどうかと考えている。言うほど簡単じゃないけど、2021年の夏をひと月撮るのもいいんじゃないかと。恵比寿のアメリカ橋ギャラリーでやっている蒲原 裕写真展「醒めない正夢」を見に行った。ローライフレックスで撮られたカラーネガプリントということで気になったのだ。解像度の低いプリントに最近惹かれる。高画素デジタル機はモニターで見るといいのだが、プリントアウトすると良さが半減する気がする。そのまま近くの東京都写真美術館地下でやっている「世界報道写真展2021」を見る。毎年やっている恒例の写真展だが、見にいくのは久しぶりだ。報道写真展で受賞している作品のアプローチは、現代写真とまったく同じ。ベースにはSDGs(持続可能な努力目標)があり、貧困と環境問題になっている。歴史上の決定的瞬間を捉えたものではなくて、テキストを読まないと理解できないのも現代写真そのもの。スポーツ写真の部で自転車レースの壮絶な落車シーンがあって「これぞスポーツ写真」という1枚だったが、それは3位入賞だった。そういえば「渡部さん、もうスポーツ新聞の写真に決定的瞬間はいらないんですよ」と新聞社時代の後輩カメラマンも言っていた。いつも思うのだが、海外のカメラマンの写真のレタッチって日本人とはまったく違う気がする。同じカメラ、おそらくキヤノンかソニーなわけだが、彩度やコントラストが高いわけではないのに、押しが強い印象を受ける。

<2008年7月23日の日記から>

映画「クライマーズハイ」を観た。見る前は怖かった。冒頭から30分は心臓がドキドキとなって落ち着かず足を何度も何度も組み替えた。日航機墜落を題材にしているが、内容は地方新聞社デスクの苦悩だ。3年しかいなかったのに、もう20年以上前の話なのに、その細部が手に取るように分かる。編集と販売のせめぎ合いで、15分、たった15分下版を遅らせただけで販売が血相をかかえて怒鳴り込んでこんでくる下りは懐かしいとさえ感じてしまった。そしてあの記者のデスクに対する物言いは現場の雰囲気そのもので、あの当時自分も新米ペーペーのくせに上に食ってかかったことを思い出した。事故現場に登った記者が無線を導入してくれと懇願するくだりは、まさしく自分が現場でデスクに何度も電話で訴えたことだった。当時はまだ携帯電話がない。かろうじて自動車電話があったが、超高級品で手に入れるのは難しかった。たった24年前の話だ。携帯があれば何の苦労もないことを走り回って連絡を取ろうとしていた。そして電話がない場所ではすべて自己判断を求められる。「どうしたらいいですか?」とお伺いをたてることはできないのだ。今、目の前にあることを自分で判断しなければならない。たとえそれが新人であっても現場に頼れる人はだれもいない。周りにいるのはライバルだけなのだ。もしあの事故がなければ、おそらくもう少し新聞社に留まっていただろう。そしたら新聞社の面白さが分かっていたかもしれない。そんなことずっとありえないと思っていたが「クライマーズハイ」を観て気持ちが動いた。でもないだろうな。あの人たちは新聞が大好きなのだ。元旦にしか休まないという人までいた。家に帰るのは毎日下版が終わる11時30分。家に着く頃には日付が変わっている。それでも次の日は早朝から取材がまっている。それでも面白いと感じる人がたくさんいる。そんな世界だ。実はいまだに新聞社の夢を見てうなされる。PTSDのようなものだ。刺激的で面白くて辛い日々だった。

八戸は美味しかった

朝=暗殺者のパスタ その3/夜=粗食、晩柑と山盛りサラダ

テレビ東京「美の巨人」ソールライター編に一瞬コメント出演します。多分10秒?くらいなのでお見逃しなく(笑)

7月22日(土)22:00~22:30  BSテレ東8月5日(土) 23:30~24:00

八戸は美味しかった。海鮮ものがうまいのはわかるが、フレンチまで美味しかったのだ。八戸に行った目的は2日間に渡るワークショップなのだが、金曜日から5泊もしてきたので、すっかり夏休み気分になってしまった。今回で4回目となる「八戸ワークショップ」、毎回、参加者を集めてくれる主催者には頭が下がる。僕は好きなことを話していればいいので、何のストレスもないけど、集める側はそうはいかない。いろいろなアイディアがあったとしても、たとえそれが素晴らしい企画であっても、人を集めるとうことは、本当に大変だと思う。それでも、今回は数日で定員に達したというから、主催者の熱意や意気込みに感謝しかない。

ここでのワークショップは、毎年企画を変えている。今年は特定の場所を各自2時間程度撮影し、それをお店で30枚プリントして集合。それを一人づつ大テーブルに並べて、誰のものかを明かさずみんなで見ていく。これは東京でもよくやっている企画なのだが、本当に面白い。上手いとか下手とか関係なく「この人はいったい何を見ているのか」の話をしてもらう、というか、そうなる。

そしてもう一つは、モノクロームワークショップ。何だがいま、モノクロブームのようで、ペンタックスからもモノクロ専用機K3モノクロームが発売されて話題になった。気になっていたけど、一眼レフ機のためレンズがペンタックスマウントのものしか使えない。M型ライカレンズをアダプターを介して使うことができない。僕はペンタックスユーザーではないためレンズ資産がない。それでも使ってみたくてリコーの方にお願いして八戸のワークショプの期間だけ、デモ機を貸してもらった。詳しくは再来週の「2BChannel」ライブで話すけど、写真自体はインスタに載せておくので気になる方はそちらへ。

データの滑らかさはさすが専用機。諧調表現がすごい。ハイライトもシャドーも粘る。グラデーション表現が好きな人にはたまらない。せっかくモノクロ専用機なのだがら外装だけも一新して簡素化すればよかったのに。モノクロ専用機に細かい設定なんていらない。RAWデータの記録だけでいい。動画もいらない。ライブビューもなしでいいんじゃないか。露出モードはマニュアルと絞り優先だけ。何ならライカのDのように背面液晶もなし。そして絞りリングのついた諧調表現に特化したモノクロ専用レンズ。もっとも、金型ひとつで大きなお金がかかるというから難しいんだろうけど。今のカメラに求められているのは機能じゃなくて高揚感。上がるカメラじゃないとね。肝心のワークショップは、小雨と曇り空で絶好のモノクロ日和とあって楽しかった。参加してくれた皆さんありがとうございました。来年の企画をすでに練っています(笑)

デジタルモノクローム

朝=カフェでパニーニとコーヒー/夜=いなり寿司、鯖寿司、煮麺

今週末からの八戸ワークショップの準備。呼んでもらうのは、これで4回目になる。メーカーとか自治体じゃなくて、八戸在住のカメラマン向田さん個人の開催で続いている。今回のワークショップでは「モノクロで撮ってみよう」という回があるので、僕のモノクロプリントも持って行って、参加者に見てもらう予定だ。それと撮影実習もあるので、その時に使う用に、リコーからペンタックスK3モノクロームを借りてきた。

一眼レフのデジタルカメラだけど、カラーフィルターが張り込まれていない素のままのセンサーを積んでいるので、モノクロ画像しか作れない。通常のデジタルカメラでも、モノクロームは撮れるのだけど、それはカメラ内処理で色情報をなくしているだけ。K3モノクロームは、カラーフィルターがないから純粋なモノクロ画像になる。でも両者を比べてみたらその差はわからないかもね。試し撮りをして、いくつかのファイルをインスタにあげているので、興味のある方はそちらへどうそ。

モノクローム機を使っていると、フィルム時代のようにモノクロフィルムを詰めた気分になれる。だから見るものが変わってくる。「モノクロの目」になるわけだ。そしてミラーレスにはなくて一眼レフであることのメリットに、触っているうちに気がついた。その話は八戸から帰ってから。

<2021年7月13日の日記から>

江東区区民センターでやっている「エイトバイテン展」に顔を出す。この展示には僕のワークショップ「2B&H」に参加した人も多くいる。見に来てくれた人の中にも、ちらほらと「2B&H」の人たちがいて、ついつい話し込む。彼らは社会人で写真を趣味にしているわけだが、中には個展を開いたり、写真集を出版したり、国内外のコンペで賞を取ったりと、その活動に刺激を受けることが多い。16年もワークショップを続けてこれたのは彼らのおかげ。よく「最近はワークショップやっているんですか」と聞かれるのだが、コロナ禍となり昨年4月以来中止したまま再開の目処は立っていない。来年にはなんとかしたいのだが。そのかわり新しい試みとして、11月にやるルデコグループ展の学生限定枠に16名が集まったので、4月から彼らとオンライン講義と個人面談のワークショップをやっている。でも、授業ではないから参加している学生に温度差がある。というか3分の2は音信不通状態(笑)。こちらもまったく矯正はしていないのだが、最初の顔合わせ以来、一度も顔を見ていないのが多くいる。毎週水曜日の21時からは全体向けのzoom講義、土日はzoomと対面の講座のために時間を作っているのだが、顔を出す学生はいつも同じ。やっている方としては顔を出してくれる彼らに救われている感じがある。「オンライン中心だからかなあ」と思うことはあるが、一度だけ北海道の方々を中心に、6回連続でやったzoomオンライン写真講座は盛り上がったし、その経験から学生相手をやろうと思ったのだが。まあ11月の展示が近くにれば、駆け込みで来るんだろうな。学生の頃、僕もそうだったもんな。なんであの時もっと先生と話をしなかったんだろう? 自分のやり方にこだわって、人の意見を聞くのが嫌だったんだよなあ。今の学生だって同じなんだよな。でも、やっていて思ったのだが、僕が彼らを変えることはできないけど、彼らによって自分が変っていくのは強く感じる。

<2012年7月13日の日記から>

友人の別荘に行ってきた。本人は「アトリエ」と称しているが、あきらかに別荘だ。森の中の小川に囲まれていて、夜には蛍が飛んでいる。ウッドデッキに椅子をだし、日暮れから飲んだ。彼とは同じころにフリーカメラマンとなり、ほぼ同時に結婚し、競うように外車を買って、そして同じようにカメラマンとしてのキャリアを積んでいった。絵にかいたような貧乏カメラマンからの「成り上がりの友」なのだ。もうこの年になると、何を買ったとか、何の仕事をしたとかはどうでもよくなってきて、くだらない、どうでもいいような話で何時間も飲んでいた。蒼穹舎で染谷學写真展「道の記」をやっている。6X6と35ミリのモノクロ。ああ、もう自分なんて消えてなくなりたいと思った。蒸し暑い日なのになんだか冷たい汗が出る。見なきゃよかったと思う自分と、見れてよかったという自分が両方いる。片方は写真を撮る自分で、片方は写真好きな自分。またしてもサリエリの気持ちが分かてしまった。

「暗殺者のパスタ」

朝=2度目の暗殺者のパスタ/夜=豚の冷シャブと野菜、冷豆腐のモロヘイヤ和え、ポテトサラダ、白米、味噌汁

「暗殺者のパスタ」というのは、トマトソースの普通のパスタなのだが、麺を茹でる前にフライパンで焦げ目を作る。そこからフライパンの中に水を入れてソースと一緒に煮詰めていくから味が濃くて美味しいものができる。というのをYoutubeでやっていたので作ってみた。今回で2回目だが癖になる味。それにしても、「夏ってこんなに暑かったか!?」と、ここ毎年思う。暑いのは嫌いじゃないが、限度ってものがあるだろう。間違いなく南の島よりも東京の方が暑い。今週末は八戸、月末は沖縄、来月は軽井沢なので体力温存しておかないと。

会う人会う人に「受賞おめでとうとう」と言ってもらえて、少々照れくさいが嬉しい。「賞は10年前に欲しかった」と書いたけど、今でちょうどよかったんじゃないかと思う。「2Bchannel」に出演してくれた人が喜んでくれるのが、自分にとって一番嬉しい。現在公開中の新田樹さんのインタビュー動画の反響がすごい。視聴数も最近では一番だが、何より寄せられたコメントの量が今までで一番多く、そして温かい。2度の収録ミスから生まれたことを考えると、これは必然だったんじゃないかと思えるくらいだ。視聴していただいている皆様、ありがとうございます。そしてコメントをくださった方々にも感謝です。「2BChannel」が、メディアであると胸を張れるものになってきたようで、それが本当にありがたい。

編集を手がけている写真集のタイトルが決まった。二転三転、だんだんと当初のイメージからズレていって、言葉遊びになってしまっていたが、今日の打ち合わせでピッタと収まるものが見つかった。そのことで全てのピースがピタッと音を立ててはまった感じがしてスッキリした。

<2021年7月12日の日記から>

先週『シンエバンゲリオン』を見てからずっと気になって、ネット配信で観れる旧作のエヴァは全て見た。ついでに第一作となる『海からきたナディア』や『シンゴジラ』も。解説動画(中田敦彦のものは4時間もあった)も見て、おおよその世界観がわかった。これでもう一度見に行ったらどう感じるのだろう。1995年に始まった『新世紀エヴァンゲリオン』から見ている世代には、特別なアニメなんだろうなということがよくわかった。映画見に行ってよかった。これを逃していたら一生関わることはなかったはず。僕に新しい「推し」ができた。安野秀明は1960年生まれ、同世代の監督が作るものをこれからも見ていくことができる幸せを手に入れたことになる。同じようなことを編集者でありライターの渡邊浩行さんが言っていた。2Bchannelの「プリントを買う」という回で、渡邊さんが「同世代の作家プリントを買うことで、彼と時代を並走できる」と言っていた。彼の言葉で、僕もまったく同じ思いでプリントを買っていたのに気が付いた。そして今回、そこにもうひとり増えたわけだ。次回作が『シン仮面ライダー』に『シンウルトラマン』。これって1960年代生まれのものにとって、たまらないコンテンツだよなあ。

<2016年7月12日の日記から>

帰国。朝4時に目がさめた。パリに戻った日はサッカーユーロ2016決勝でフランス対ポルトガルだった。その日は早めにホテルに戻り、惣菜とワインを買い込んでホテルでテレビ観戦することにした。時おり窓の外から歓声が聞こえる。そして落胆の声が。帰国便が夜の11時だったので、翌朝は優雅にガルドリヨン駅構内の老舗レストラン「ル・トラン・ブルー」で食べた。ここは内装が素晴らしい。映画にもよく使われている場所だ。ミスタービーンのシリーズで、このレストランを舞台にした短編があるが最高に面白い。オムレツとベーコン、パンとコーヒーで2000円くらい。お昼からはポンピドーへ。昨年はオルセーだったから時代性で言えばその続きという感じ。エスカレーターで最上階まで登り特別展へ。むき出しのパイプ状の建物からはパリ市内が一望できる。こういうところでまず盛り上がれる。今回の企画展は「パウル・クレー」と「Beat Generation」。ヨーロッパ1920年代とアメリカ1950年代だ。ジャックケルアックの「On The Road」を中心にギンズバーグやロバートフランクの写真が並ぶ。ケルアックのタイプライターやテープレコーダー、そして伝説の「On The Road」生原稿が古文書のように展示してあった。アメリカを移動しながらタイプライターで書くのに、紙の入れ替えが面倒だからと最初にテープで紙をとめて巻物にして書いたものだ。アメリカ文学のバイブルみたいなものだ。ギンズバーグの詩の朗読があったり、8ミリ映画があったりと立体的な構成になっている。ロバートフランクの「The Americans」オリジナルプリントはやっぱり凄い。ケルアックとその友人達の行動が戦後アメリカの思想や文化に大きく影響しているのが見える。パウルクレーは、昔「彫刻の森美術館」で見た覚えがあるが、時代の流れを把握してから見るのは初めて。ピカソとの交流やバウハウスの時代、ヒットラーの台頭による芸術家の弾圧など、作品が時代とともに変わっていく様子が現れている。ヒットラー時代の彼の絵は、かなり精神的に追い詰められてきて、それまでの柔らかさから一変して暗くて重いものになっていく。アートが時代性を孕む、アートを見れば時代が分かるというのを実感する。ふたつの展示でたっぷり2時間以上使ってしまって、常設展は駆け足になってしまった。それでもピカソ、マチス、ブラック、レジェから始まって、これでもかと作品が並ぶ。一作家数点とかじゃなくて、個展レベルの量。初めてジャクソン・ポロック大型作品も目前数センチで見ることができた。企画展ふたつと常設展合わせて14ユーロ。1500円。パリはルーブル、オルセー、ポンピドーを回ればアートの歴史と流れがどうなっているか一目瞭然で分かる仕組みになっている。ヨーロッパでアートの話をすると必ず文脈の話になるが、ベースになっているものが連綿と残っているからこそだ。3年前に現代アートと写真の関係についてこの日記で書いたのがすべての始まりだが、ようやく知識と経験が輪になって繋がってきた想いだ。

特別賞

第33回「写真の会賞」が発表され、受賞作家として小松浩子さんが、そして特別賞に「2BChannel」が選ばれました。以下は、受賞報告メールからの抜粋です。

「このたび、我々が主催する「写真の会」賞の選考会において、動画番組「2B Channel」を、第33回「写真の会」賞特別賞に選出させて頂きました。(中略)いまや映像メディアの主流となり、コンテンツの覇権を巡る競争と玉石混同状態のYoutubeにおいて、写真をテーマに良質な内容かつ高品質な音声映像で番組を制作されている点を僭越ながら評価させて頂きました」

2BChannelを始めたのが2019年9月1日なので、もうすぐ4年が経とうとしています。多くの方に出ていただいたおかげで、最近では「2BChannel見てます」と言ってもらえることが増えてきました。でもまさか写真の賞を受賞するなんて思ってもいませんでした。「2BChannelの活動」を評価していただいたことに本当に感謝しています。

僕自身は10年前、いくつかの写真賞に何度かノミネートされ最後の最後まで残りながらも落選が続き、受賞した作家さんたちを眩しく感じていました。「いつかは自分も」と思っていたのですが、そんなことをすっかり忘れた頃に賞をいただきました。

今でも覚えていますが、最初の収録でビデオがまわった瞬間に思わず固まってしまい、一言も声が出ないまま、1分後、諦めてビデオのスイッチを切りました。そこから、「ひとりでは何もできないのなら」と、知っている人に話を聞くという方向転換をしました。まだ登録者数がほとんどなかった頃に、田中長徳さん、ハービー山口さんにお願いをしたところ、「いいよ」とふたつ返事で出ていただき、それからは「長徳さん、ハービーさんにも出てもらっています」と声をかけることができるようになりました。その後も、多くの人が助けに現れてくれて、いつの間にか登録者も2万2千人まで伸びました。Youtuberとしてはさほど多くない数字ですが、写真好きの方のためのチャンネルとして続けてこられました。

今回の受賞は、今まで関わってくれた方へのお礼にもなりました。「2BChannel」に出ていただいた皆様、写真集を紹介させていただいた作家の皆様、そしていつも応援していただいている視聴者の皆様、心からお礼を申し上げます。ありがとうございました。良い報告ができて幸せです。

 

 

 

音声ミスで冷や汗

朝=明太子のパスタに納豆/夜=冷しゃぶ、サラダ、モロヘイヤ、白米

「2BChannel」の収録が続いている。ロケじゃなくて我が家にゲストをお呼びする形。何のお礼もできないので、収録後はウチでご飯。

「2B Channel」でいつもお世話になっている渡邊浩行さんに「石川竜一の絶景」の話を、そして石井朋彦さんとは林忠彦賞と木村伊兵衛賞をダブルで受賞された新田樹さんとのインタビューに同席していただいた。実は、新田さんのインタビュー収録は、僕の操作ミスでなんと3回も撮り直しをしてしまったのだ。1回目も2回も、音が録れていないという異常事態が発生してしまった。貴重な素晴らしい話をしていただいているのに、収録後のチェックで僕を含めた3人の中で、なぜか新田さんの声が入っていない。個々のマイクを使っているので、ケーブルやらミキサーやらのトラブルというか、単に僕のミスで音が入っていない。今の時代、写真撮影で「撮れていませんでした」というのはあり得ない。でも動画は単純なミスで最後に青ざめてしまうことが多々ある。カメラマンと音声さんとディレクターと出演者を一人でやるのがYoutube。久々に冷や汗がでたけど、このインタビューはとても良いものになった。どちらも近日公開します。

昨日はある番組のコメント収録のためにテレビクルーがやってきた。カメラはソニーのFX3だった。やっぱりカメラマンの他に音声さんもいる。ディレクターを含め3人の分業になっている。どんなにカメラ性能が上がっても「全部ひとり」というのは難しいんだろう。ちなみに三脚はやっぱりザハトラーだった。もうそれだけでプロというか、かっこよかった(笑)

<2021年6月30日の日記から>

先週の土曜日に塗った食堂の壁に写真を掛けた。レーザー水準器を使って壁にレイアウト。僕がこういった壁全体を使って写真を展示する時にはこんなこと考えてます。●壁全体に楕円を描くイメージを持つ ●中心を作る ●安定感を作りたい時は大物を右下に配置 ●動きを出したい時は大物を左上に配置する ●右上から左下へかけての対角線上に重要なポイントを持ってくる ●空いた隙間は小物で埋める

以前は大掛かりな展示の時は縮小版を作ったりしていたけど、最近は目見当でやることのほうが多い。するとちょっとズレてそれが味になったりするからだ。そんなことやっていたら、あっという間に夕方になってしまった。夕ご飯は、鹿児島の友人夫婦から送られてきたイサキを使っのて蒸し鍋。彼は趣味を通り越して漁師のような船を持っている。鹿児島は野菜も美味しいし、魚も獲れるしいいところだよなあ。

<2010年6月29日の日記から>

モンゴルから無事帰国。今回で3度目となるモンゴル。同じところに3度も行くというのは自分としては珍しい。モンゴルは2005年、2006年の二度の旅で十分満足していたはずなのに、どうしてももう一度行きたくなってしまった。今回は西のロシアとの国境付近へ行きたかったのだが、スケジュールの都合もあり、一度目にに行ったハラホリンというウランバートルから南西へ300キロ離れた所へ向かった。季節も一度目と同じ6月下旬。この時期は天候が安定していてカラッと晴れ、日中は30度を超すが朝晩は過ごしやすくモンゴルに行くには絶好の時期だ。2005年にお世話になった牧民の家を再び訪ねるることにしていた。当時は見ず知らずの我々を歓待してくれて遊牧生活の素晴らしさを教えてくれた。彼らに会えるのをとても楽しみにしていた。ところが今回訪れると、同じ場所であるのに関わらずなんだか様子がおかしかった。どこがおかしいとは分からないのだが前回と勝手が違う。喜んで出迎えてくれたのだが、表情がさえない。疲れているように見える。以前は溢れるようにいた羊や牛の姿がわずかしか見えない。話を聞いたら今年1月下旬、この付近ではめったに降らない雪が40センチ以上積り、家畜がほとんど死んでしまったそうなのだ。幸い馬だけは別の場所に移動することで難をのがれたが、羊や牛はほぼ全滅。雪解け後、死んだ家畜の後始末が続き、そのうえ新たな家畜を仕入れるのに銀行から借金をしなくてはならなくなった。近くに住む牧民の半数が全ての家畜を失ったという。家畜を失うということは、生活の全て全てを失うと等しく、もはや遊牧では生きてはいけない。5年前に一緒に飲み歌った牧民のひとりはここでの生活を捨てウランバートルで暮らしているという。あれほど牧民であることにに誇りを持っていた彼がその暮らしを捨てなければならなかったのだ。ここ5年でモンゴルは砂漠化が激しくなり遊牧生活をおびやかしている。以前は小さな花が一面に咲いていた草原に、もはやその姿はなく、草の色も褪せている。その速度はすさまじく、南のほうから浸食するように砂漠化が進んでいる。ここでいう砂漠は砂丘化ではなく、草が生えないといことを指す。1年中で一番過ごしやすいはずの6月だというのに気温は40度を越し、日中に外に出ることは不可能なくらいだった。そのせいか以前はいなかった蚊がいたるところで大量発生していて悩まされた。