トマトを煮て、ご飯を投入。石油ストーブ最強。

年末というのに、2日間ダウン。風邪かと思ったらどうやら疲れがたまっていたみたい。

YouTubeを始めてからというもの、とりつかれたように動画を作っていた。なんだか年々集中力がついてきたような気がする。

動画を作り始めたのが6月で、9月に配信を開始して、3ヶ月で登録者1000人を超えて、現在1600人。まだまだではあるが、やっていて面白い。広告がつくようにはなったが、一日あたり200円から300円くらいなもので、かけた労力にはまったく見合っていない。

でもチャンネルが持てたということは、自分のメディアを持てたということ。会いたい人に「話を聞かせてください」とお願いできるようになった。これはすごいことだ。だから最近はインタビュー動画が主になっている。他にも考えていることは多いのだが、今はインタビューが面白い。商売なら「マーケットを考えて」となるところだが、続けていくために、今は自分がやりたいことを優先している。

 

インタビューがメインになってくると、ちゃんと録画できているかが一番大事。1台のカメラではやっぱり心配なので、2台のカメラを使うようになった。加納満さんも対談で「仕事では、よく写るより、ちゃんと写るのが大事」と言っていた。

最初に買ったのがパナソニックのGH4。これは4年くらい前のモデルで、現在はGH5になっているが十分実用機として使える。というか申し分ない。ちゃんと写るカメラだ。

2時間半もバッテリーが持つというのは何物にも代えがたい。アプリを使えばタブレットで確認できるし、顔認証でAFが追随してくれる。そして音がきれいに録れる。インタビュー動画では絵よりも音が大事。

 

初期は、GH4に35ミリ換算の単焦点レンズをつけて使っていた。最初に買ったキットズームは、暗くて室内では使い物にならなかった。

しばらくはGH4とソニーα7を併用していたのだが、α7はバッテリーの持ちが悪い上に、30分で動画が切れてしまう使用になっている。そうなるとインタビューを中断しなくてはならない。今年発売されたα6400やRX100 Mark7は30分制限が解除されたというので、そのどちらかにしようと思っていた。お店で触り倒した結果RX100Mark7に軍配があがった。

しかし冷静に考えてみると、GH4が使いやすいのだから2台同じものを揃えるほうがいいに決まっている。設定を揃えれば間違いが減らせる。しかも安い。

結局フジヤカメラでGH4のボディを57000円で、60ミリ相当のシグマの単焦点レンズを27000円で購入した。これで機材面は当面安泰。これまで機材費と経費で30万円は使っている。高いのか安いのか微妙なところだな。

「ハービー山口」ロングインタビューを終えて

「ハービー・山口」インタビューを終えて。

 

2019年12月10日火曜日 

本格的に寒くなってきましたね。寒いのは嫌いだけど、石油ストーブは好き。20年前に岩手で買った南部鉄瓶でお湯を沸かして、お餅を焼く。最高です。ネコがそのへんに転がっています。

 

さて、三夜連続の「ハービー・山口」ロングインタビューの配信は見ていただけたでしょうか。

第3話

「撮りたいという思い」 ハービー山口03

https://youtu.be/Umx_6lqcOPs

第2話

「Glorious Days」輝く日々 ハービー山口 02

https://youtu.be/Rfg8lwfZxl0

第1話

「ネガをポジに変える生き方」ハービー山口 01

https://youtu.be/DT5EJ6hObj4

 

収録したのが12月4日水曜日、一話目をアップしたのが6日金曜日です。

話を伺っているときから「これはすごい」と思っていて、一刻も早くアップしようと編集をしていました。そのくらい、心に響くインタビューだったんです。編集作業はまったく苦になりませんでした。

 

ハービーさんと知り合ったのは2004年なので15年前になります。もちろん「ハービー・山口」という存在は僕が30歳の時から知っていました。

これは僕のエッセイ集『旅するカメラ2』にも書いたのですが、最初は本屋さんで見かけた「吉川晃司」の写真集でした。アメリカで撮られたその写真集はすべてモノクロで構成されていて、新鮮に見えました。

ミュージシャンのポートレートに憧れていた僕は、音楽専門誌でたびたびハービーさんの名前を目にすることになります。

僕がモノクロでポートレートを撮るようになったのはハービーさんの影響なんだと思います。

 

ハービーさんはエッセイ集を出していることを知って『ずっと探していた』『女王陛下のロンドン』を読みました。

その中でジ偶然地下鉄でョー・ストラマーと出会ったときに「撮らせてください」とふりしぼるような思いで声をかけたハービーさんに「撮りたい物はすべて撮るんだ、それがパンクだ」と声をかけたもらえたというくだりは本を見て震えました。その言葉はまるで自分にむけられたように感じたんです。

その後僕もエッセイを書くようになったのは、やっぱりハービーさんの影響なのかもしれません。

 

インタビュー中にずっと思っていたのは「人生はすべてはつながりの中にある」ということでした。これはよく聞く台詞だし、自己啓発の本には必ず書いてありそうな言葉です。

でもハービーさんの生き方を聞いていると、とても納得いくものとして届きます。

「過去は変えられない」。あたりまえです。誰でも知っている。でもつい思ってしまう。

「あのとき、ああすればよかった。なんでやらなかったんだろう」と。思えばいつも後悔の連続でした。

なんでもそうでしょうが、クリエイティブな仕事、僕が生きてきた写真の世界は、才能がある人がたくさんいます。そのキラキラした才能を間近で見るから、自分の才能のなさに落ち込んでしまうわけです。

 

もっと才能があれば、もっとうまく世の中を立ち回れたら、もう一度20歳に戻してくれれば、今度はもっとうまくやれるのに。最近まで毎日のように思っていました。

でも僕がもっと才能があって、世の中をうまく立ち回れる人間だったら、間違いなくワークショップをやっていません。やったとしても長続きしないでしょう。

もしハービーさんがハービーという名前を自分につけていなかったら、学生のときに就職が決まっていたら、まるで違う人生だったように、僕に才能があったらもっと違った人生になっていたわけです。

 

今年になってワークショップを通じて親しかった人がふたり亡くなりました。

ワークショップを通じての出会いだから、やっていなかったら絶対にふたりとは出会ってない。ということは彼らと過ごした馬鹿みたいに楽しい時間はないってことになるんだと気がつきました。屋久島やアルルで僕は彼らと本当に楽しい時間を、代えがたい時間を過ごしました。

それがないなんてありえない。彼らが僕の人生に関わらないなんて考えられない。だから僕の人生はこれでよかったんだと思えるようになりました。才能がある人を、もううらやむ必要はなくなりました。

 

そう思った矢先のハービーさんのインタビューでした。だから3話目での冒頭の言葉になったんです。

いつもならカメラの話を聞くのですが、今回はしませんでした。インタビュー前は「ハービーさんだからライカの話をしよう」って思っていたけれど、もうその必要はないって話を聞きながら思いました。

 

願わくばこのハービーさんの動画をたくさんの人に見てもらいたい。今つらい思いをしている人に聞いてもらいたい。もしかしたらちょっと元気が出るかもしれない。聞いたときはなんでもないけど、あとで思い返すことで考え方が変わるかもしれない。

YouTubeを始めてよかったな、とあらためて感じたインタビューでした。

 

 

今月の『IMA』の特集ははアレック・ソス

2019123日火曜日。年末感が漂ってきましたね。

 

4回発行の写真雑誌『IMA』が届きました。写真雑誌なのですが、なんとカメラメーカーの広告が入っていない。「シャネル」とか「ヴァンクリフ&アーペル」といった高級ブランドの広告のみ。

 

以前はキヤノンが広告を出していましたが、昨年から見かけなくなりました。つまりカメラメーカーにとって、メリットのない雑誌ということなんでしょう。写真雑誌だけど、これを見た人はカメラを買わない。

 

創刊は2012年です。『IMA』が出るまでは、海外の写真の動向を知る手だてがほとんどありませんでした。ネットはすでに普及していましたが、日本語で書かれたものはなく、知るためには直接海外に行く必要がありました。

 

それが国内外の新しい写真情報を掲載してくれる雑誌ができたことで、とても助かっています。『IMA』を見れば、とりあえず現在の写真のニュースがわかる。既存の写真雑誌では絶対紹介されないであろう、国内の新しい作家の作品に触れることができる。

 

僕は創刊から定期購読しています。『IMA』という雑誌のデザイン面のすごさは、作家ごとに記事ごとに印刷の紙質を変えているところです。これはオランダの写真美術館が出している『Foam』と同じです。本のサイズも同じなので、何かしら創刊時に影響を受けているのだと思います。

 

さて、2019年冬号をちょっと見てみましょう。始まりは写真界隈のニュースが10ページほど続きます。面白かったのは題府基之さんの写真集『Holly Onion』の紹介記事。ただただ、タマネギを剥くお母さんをフィルム1本分撮影して164ページに構成したものです。どういった本になっているのか気になります。1冊の写真集を作るには通常何年もかかるものですが、これの撮影時間は30秒くらいだそうです。

 

今回の特集はアメリカの写真家「アレック・ソス」。実は2012年発売の2号目にも18ページほど特集されていますが、今回は誌面の3分の2を使っています。作品もインタビューも満載で「ALL ABOUT ALEXSOTH」という感じです。

 

アレック・ソスという写真家はご存じでしょうか。現在世界でもっとも注目されている写真家です。1969年ミネソタ生まれですから、今年で50歳。

 

彼は学生時代に彫刻を専攻していましたが、授業の中でジョエル・スタンフェルドの写真の講義を受け、写真を本格的に始めます。

 

2003年に「レビュー・サンタフェ」でサンタフェ写真賞を受賞すると、翌年には初の写真集『Sleepig by the Mississippi』を発売、これによって世界中から注目を集めます。

 

この作品はエイトバイテンの大型カメラを使ったネガカラープリント。車で移動をかさねて、撮影することから「On the rord」系の写真家だと言われています。ここでは「On the rord」とは何かを説明しませんが、アメリカ写真を理解する上で、このキーワードはとても重要になります。

 

僕は2015年にソスのトークショーを聞きに行ったことがあり、彼のドキュメンタリー映画「SOMEWHERE TO DISAPPEAR」も

見に行きました。

 

その中でソスは初期代表作『Sleepig by the Mississippi』について、こんなことを語っていた。

 

まず旅に出てみようと思った

場所はミシシッピ川沿いに決めた

撮影する対象はあらかじめ決めていない

ポートレートは顔を見て決める

写真を始めた頃はポートレートを撮影するのがとても怖かった

友人や彼女を撮影することで少しづつ慣れていった

写真を理解するには最低で10年かかる

筋肉に記憶させるんだ

写真集を編集する上でもっとも大事にしているのは写真と写真のコネクション

ただし、それが相手に伝わることはまったく期待していない

なぜなら国や社会、言語が違えば捉え方は大きくかわるから

ただし、自分の頭の中には必然ともいえるつながりが存在している

実は『Sleepig by the Mississippi』には飛行機という軸がある

構成は断片的で、最低限の情報しか与えない

 

 

そのほか彼の言葉には明言が多い。例えば、こんな言葉。

 

写真の意味は見る人によって変わってくる。

世の中の人が自分と同じように理解できるとは思っていない。

 写真は場所、方法によって意味が変わる。

 写真家は意味をコントロールすることはできない。

プロジェクトごとに機材を変える。

作品によってはデジタルカメラも使う。

若い人から「どうやったら世界で注目される写真家になれますか?」と聞かれるけど、まずは作品作りのほうが大事だと言っている。

 何かしらいつも撮っている。

 

 

僕は『Sleepig by the Mississippi』も好きだけど、モノクロで撮った「song  book」が好きです。

 

今回の『IMA』のインタビューはかなり充実しています。以前動画内で紹介したトモ・コスガさんもソス往復書簡のインタビューをしています。

 

IMA』は唯一現代写真の動向を伝えてくれる雑誌なので、なんとか頑張ってほしいものです。ネット上位の世の中でもやっぱり印刷された写真には魅力があるし、垂れ流しではなく、セレクトされ精査された情報に触れることができるのは本当にありがたいんです。

 

写真好きの人は是非。定期購読はこちら。

imaonline.jp

 

 

 

 

 

夜は生姜焼き。

2019年 11月22日金曜日 東京は雨。寒いです。今日の朝食はリンゴとラフランスのヨーグルト、それと昨日のカレーの残りで作ったドライカレーでした。

 

YouTubeを始めてから3ヶ月、ようやくチャンネル登録者数が1000人を超えました。アップした動画はすでに50本を超えています。

最近では鈴木麻弓さんとカメラの話をしている回が単独で延びています。タイトルに「ライカ」と入れたせいでしょうかね。

田中長徳さんのインタビューから「2B Channel」の初期方向性が定まってきたように思いますね。長徳さん本当にありがとうございました。新しくインタビューをお願いする場合「長徳さんにも出てもらってます」というのはすごい説得材料になっています。

 

今も4人の方にお願いしていて、近々収録予定です。とても面白いインタビューなります。チャンネル登録まだの方はよろしくお願いします。これ聞かないと損というくらいの話になりますよ()

 

機材のことやレクチャーではなく、写真の話ができるチャンネルが日本ないという理由もあって「2B Channel」を始めたのですが、アムステルダム在住のトモ・コスガさんが「トモ・コスガの言葉なき対話」というチャンネルをやっていました。これすごくいい。こういうの見たかった。

11月の最新動画は、パリフォトレポートだし、アムステルダムのアートフェア、「アン・シーン」の紹介動画もあって、参加していた写真家の山谷祐介さんや東京ルマンドさんのインタビューもあってライブ感があります。

他にも公開ポートフォリオレビューをやっていて、若手写真家の作品を見ることができるます。

「写真の話」や「写真集紹介」などコンテンツは似ていますが、トモさんは編集者、キュレーターとしての幅広い目線で、僕は写真家目線で個人的な話をしています。

 

さて、昨日はひさしぶりに時間ができたので、ギャラリーとブックショップに行ってきました。

お茶の水の駅から神田明神のほうに行くと「ギャラリー・バウハウス」があります。間違いなく写真専門ギャラリーでは日本一おしゃれ。ヨーロッパのギャラリーの雰囲気です。1階と地下を使った贅沢な空間で、コマーシャルギャラリーとして13年間続いています。

バウハウスに行こうと思ったのは、オーナーの小瀧さんにDMをいただいたから。毎月たくさんDMをいただきますが、今回のDMがめちゃくちゃかっこいい。それを壁に飾りたくなるくらいの質感があります。

実はギャラリーオーナーの小瀧さんは、同時に有名な写真家でもあり今回は彼の個展なんです。

会場には、4年かけて撮られたヴェネチアのモノクロプリントが展示してありました。言葉にするのは野暮なので、モノクロ好きは見にいったほうがいいです。会期は来年2月15日までですが、すぐに行ったほうがいいし、何度見に行ってもいいと思います。

小瀧さんの写真を見て、いい気持になってお茶の水から中央線で吉祥へ向かいました。

 

井の頭公園を抜けた先にブックショップ「ブックオブスクラ」があります。

写真集好きで評判のお店です。選書もさることながら、オーナーの黒崎さんがすごい。彼女に会うためにお店に行っているようなもんです。いhn

とにかくここは写真があふれています。

店内の壁はギャラリーとなっていて、主に若手の写真家が展示をしています。11月は赤木遙さんの「love letter」でした。

写真集とオリジナルを同時に見ることが出来ます。

オーナーの黒崎さんが、展示作家にあったコーヒー豆を仕入れて、それを出しています。おいしいコーヒーをいただきながら写真集の話を聞くのが楽しみで楽しみで。

彼女は間違いなく日本で一番、写真集を愛している。そんな感じが体中からあふれています。

またしても2時間近くいて、帰る頃にはあたりは真っ暗でした。井の頭公園の池が、もう見えなくなるくらい暗かったのですが、そこにむけてリコーGR3のシャッターを押してみました。

目には見えない物が、もう簡単に撮れる時代なんだとあらためて感心しました。

 

 

 

 

 

YouTube

 

https://www.youtube.com/watch?v=jRj2_OktwYg&t=10s

 

2019年11月11日月曜日です。

 

大学時代の同級生、山下恒夫さんが銀座ソニーギャラリーで写真展『日々Ⅳ』をやっています。先週金曜日に見に行ってきました。

彼の写真展は11月21日木曜日までやっています。

 

https://www.sony.co.jp/united/imaging/gallery/detail/191108/

www.youtube.com

 

 

 

ソニーギャラリーは土日もやっているし、夜7時まで開いているのでとても行きやすい。どことはいいませんが、日曜日が休みで夕方6時で閉まってしまうギャラリーもあります。働いている人はほぼ行けません。

ソニーなのに、バライタプリント。モノクロです。彼の写真はびっくりするほど普通です。だって日々の写真だから。人生にそうそうドラマチックな瞬間なんておきません。でも見入ってしまう。

たまたま、ギャラリーで知り合いの写真家に会ったら、「どうしてですかね」と聞かれたので即答しました。「だって天才だから」。

 

すんごい乱暴な言い方だけど、それ以外に説明がつかない。他の人が撮ったらおそらく全然つまらない写真になるだろうし、そもそも撮らないでしょう。 

秘密があるとすればプリント。おそらく現時点で、35ミリフィルムで撮られたものでもっとも優れたプリントです。たくさんあるプリントの正解の中で、ひとつの正解が出ていると思っています。

モノクロが好きな人は絶対見た方がいい。その普通さぶりに驚いてください。

 

そして来年2020年1月はギャラリー冬青で僕の写真展があります。ここ4年ほど毎年1月にやらせてもらっているんです。

今日はそのためのプリント。もう自分の暗室はないので、ある写真家の暗室をお借りしています。設備は完璧で、とても使いやすい。

ここが借りれることになったので、事務所を引っ越すときに引き伸ばし機8台と、自動現像機2台、引き伸ばしレンズ20本、その他イーゼルとかバットとかは、すべてきれいさっぱりワークショップの人で暗室をやっている人に譲ってしまいました。

残したのは愛用のローデンストックと、シュナイダーの引き伸ばしレンズ、それとピントルーペくらい。大全紙まで対応するカラー自動現像機も残しました。でもなかなかカラーでプリントする機会はないですね。たまにワークショップで使うくらいです。

 

さて、暗室に入って準備をしていると、定着液がないことに気がつきました。やる気が一蹴でなくなりかけたのですが、しかたがないので新宿ヨドバシカメラに買い出しにいくことに。

毎月かなりの商品をヨドバシカメラで買っているけど、すべてネット注文なので、お店にいくのは1年ぶりだと思う。暗室用品売り場がなくなっていたらどうしようと、ちょっと心配でした。

 

今やヨドバシは家電やパソコン、携帯がメインのお店だけど、名前の通り始まりはカメラの専門店。1960年に創業だそうです。

僕は61年生まれだからほぼ同い年ということか。最初は今のようなビルではなくて、ガラガラと引き戸を開けて入る小さなお店だったと聞いたことがあります。

現在、全国に23店舗あって、家電のネット通販だとAmazon についで2位なんだとか。そういえば家電量販店で初めてポイントカードを導入したのもヨドバシカメラ。株価はどうなっているんだと思ったら非上場会社。ちょっとびっくり。個人商店が大きくなった感じなのか。ちなみに社創業者は有名なライカコレクター。

もともと「ライオン」という自社ブランドの写真用品が、直販のメリットで他よりも安く、それがヒットして大きくなったのだとか。僕も学生時代によく買ってました。今の中国製品みたいに、正規品よりもちょっとクオリティは落ちるけど、値段は破格というやつでした。

 

以前は暗室用品だけで大きなフロがアあって、ところせましと引き伸ばし機や印画紙を売っていたけれど、今は見る影もなく縮小。カメラビルの裏側のひっそりした場所に暗室用品売り場がありました。

一応1階のワンフロアを使っていますが、品物は以前の数分の1。モノクロ印画紙はイルフォードとオリエンタルがメインでケントメアとフォマもありました。サイズはキャビネから大全紙まであります。まだまだ大丈夫そう。

 

引き伸ばし機はLPL社製の35ミリから67まで対応するタイプとシノゴまで伸ばせる2機種がありました。まだ売っていることにちょっと感動。でも価格は一番安いモノクロ専用機で187450円、シノゴのカラーとなると、なんと616000円! 同じタイプのものが、20年前は35万円でした。それでもあるだけ立派。 

おそらくもう製造はしていないくて、在庫のみなんじゃないでしょうかね。新品を手に入れることができる最後のチャンスですよ。 

周辺機器も値段が高くなっていてカイザー製の印画紙イーゼルで218210円するものもありました。以前1万7千円で売っていたLPL社製のイーゼルは37800円。安く感じます。

 

意外や意外、カラーの印画紙はまだ結構在庫がありました。もうカラー現像機は生産を中止して大分たつし、まともに動くのは少ないだろうに、ちょっと不思議。来年度からは日大芸術学部からもカラー暗室が消えるというから、これも残り時間わずかという感じがしますねえ。

モノクロフィルムはまだ結構種類があります。コダックの他にイルフォードとケントメア。ローライブランドもありました。値段は36枚撮りで1本1000円以上。まあしかたないです。

今一番使っているコダックのトライXブローニータイプは5本で5360円。やはり1本1000円以上。でも最近のトライXはなんだか焼きづらい気がしていて、来年から他のフィルムに変えることを検討中です。

 

カラーネガフィルムはコダックとフジが出していて、24枚撮りだと800円くらいだけど、36枚撮りはやっぱり1000円以上。定番のフジ400Hは1620円。

驚いたのはポジフィルムがまだあったこと。フジの他にコダックからも出ていますが、1本2000円もします。誰が使うんだろ?

エイトバイテンのフィルムも売っています。コダックのカラーネガは10枚入りで45320円! 1枚あたり4500円。現像代をふくめると1枚撮影すると7000円くらいです。これも誰が使うんだ?

お目当ての中外モノクロ定着液3本を手に入れて、帰りがけに向かいのカメラ館に寄ってみました。気になるのはやっぱりシグマの「fp」。

 

持った感じはがっちりしています。放熱用に開けられたベンチ部分が工業製品みたいで、なんかプロっぽい。オートフォーカスはスチールだとそこそこですが、動画だと心許ない。ソニーのようにスパッと切れるようには合わない。

もしかしたらプロ機だからマニュアルフォーカスが前提なのかも。どんな絵が撮れるのか興味あります。

 

 

日大芸術学部写真学科

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久しぶりに江古田へ行ってきました。 この時期、日大芸術家学部では「芸祭」をやっています。芸術系の大学では文化祭とは言わず「芸祭」と言っています。期間中、学校を開放して作品展示が行われます。壮大なグループ展のようなものですが、これが毎回結構面白い。

 場所は西武線江古田駅から2分。僕らがいた頃は江古田校舎だけだったのですが、80年後半に所沢校舎ができて、1、2年は所沢、3、4年は江古田とわかれていました。 それが今年から所沢にあった校舎をたたんで全て江古田に戻したそうです。どこの大学も都心回帰の流れがあるみたいで。

 まずは教職員棟に行って、同級生の先生のところへ。同級生の西垣さんが学科長ですからねえ。時代を感じてしまいます。 西垣先生に『じゃない写真』を渡したら彼女の新刊をいただきました。 西垣仁美、藤原成一著『50冊で学ぶ写真表現入門』。なんと日本カメラ社から出ています。

https://www.amazon.co.jp/50冊で学ぶ写真表現入門-西垣-仁美/dp/4817921706/ref=sr_1_1?__mk_ja_JP=カタカナ&keywords=50冊で学ぶ写真表現入門&qid=1572862442&sr=8-1

 この本は写真集ではなく、ロラン・バルトとかスーザン・ソンダク、シャーロット・コットンなどの、読んでいて頭がこんがらかる評論集の解説本、というかガイドです。 めちゃくちゃありがたい。この本を参考に原本を読み込めば、世界が大きく変わります.

 アカデミックな仕事だな。さすが。

 同じく同級生の服部先生に、日芸の暗室を見せていただきました。「東洋一の暗室」ということでしたが、間違いなく世界一。世界の写真学校の潮流は脱暗室。こんな立派な暗室は、ここ以外にはありえません。

 大暗室は25名がいっせいに作業できるスペースがあり、しかも伸ばし機は電動式のベセラー。シノゴまで伸ばせます。 その他フィルム暗室や個人暗室もあります。

 しかし残念ながらカラー暗室は今季で終了だそうです。業務用自動現像機のメンテナンスができなくなったのが理由。 印画紙は供給されているのに機械はもうどこも作ってない。消耗部品は在庫切れの状態です。

 暗室だけではなく、大型スタジオや小スタジオもあり、撮影機材にはフェーズ1が用意され、大型ストロボはブロンカラー。とにかく最高のものであふれている。その設備に正直驚きました。 服部先生曰く「学生はさっぱり理解してませんけどね」。まあそういうものです。

 今、写真学科には一学年106名の学生がいて、半分はAO入試で入ってくるそうです。僕らの時代と定員は変わっていませんね。 今でも1,2年は写真基礎コース、3,4年がゼミになっています。

 写真基礎、通称「写基礎」では暗室実習が必須科目になっていて、1年生は35ミリ、2年生はシノゴと呼ばれる大型カメラを使ってフィルム撮影実習をします。 昔悩まされたシノゴのカメラを使っての新聞複写は今もやっているそうで、フィルム撮影のカリキュラムはほとんど変わっていません。

 でも大半の授業はデジタルなわけです。やはり映像実習も用意されていて人気のコーズになっているようです。レタッチの授業も、もっと充実させたいと言っていました。

 写真の対象になるのは身近な友人といった、プライベートなものが多いそうです。まあ、これは理解できるかな。

 就職はここ最近とても良いそうで、大手新聞社、通信社、出版社の他に、昔と違ってレタッチャーや、ブライダル撮影の会社というのもあり、中には映像制作会社に就職する学生もいるそうです。 加納満さんんとの対談でも言っていますが、僕らの時代は広告関係が花形でした。 日芸はアーティストになるより、昔から職業カメラマンになるものがほとんどです。

 日大芸術学部には大学院もあって、芸術学修士MFAの資格を取ることができます。このMFAの資格は欧米ではMBA(経営学修士)と同じくらいの価値を持つと言われていて、ビジネスマンが注目している学位です。 全体で40名近くが大学院で学んでいるそうですが、その8割以上が留学生。そして大半が中国。

 さて、お目当ての学生の作品を見ていきます。最近は壁を使っての展示よりも、ブック制作での参加が多いそうです。ブックとはファイルに写真を入れて1冊で構成するタイプのものでポートフォリオとも呼ばれます、 「キヤノン新世紀」がブックでのエントリーというのも関係しているのかな。というかブックというものが当たり前になっているんでしょうね。

 見ていて上手いなと思わせる写真はけっこうあります。でも上手い下手で語るなら当然我々のほうが経験が多いから上手い。でも上手いんじゃなくて「こりゃすごい」というものが毎年必ずあります。

 通路や大スタジオでの展示を見ていくと、いくつかひっかかる作品がありました。上手い下手を超えようとするアプローチのものに惹かれます。

 2階の奥の小部屋を覗いてみると、不思議な作品が目にはいりました。なんだかよくわからない、なんとも説明のつきづらい作品です。 でもものすごくいい。不思議なエネルギーがある。でもこれってカメラもレンズも印画紙も、何も写真的要素のものを使っていないようなんです。でも不思議と写真なんだよな。

 制作過程の動画(おそらく4K)を見ると木枠に紙をちぎって入れてを繰り返し、まるで紙すきのような行為をしています。からみあった紙を慣らしたりなぞったりしています。

 作者がいたので聞いてみました。「これって写真?」 作者の松原茉莉さんは「写真のことをずっと考えた結果こうなりました」 たしかに写真的要素は微塵もないけど、僕も今回の展示の中でもっとも写真的だと思えました。

 松原さんが写真を追求しようとしてできあがったのなら、これは写真でしょう。 やっぱり才能ある人はいるね。彼女の作品を見られてよかった。

 1階では「卒業生による木村伊兵衛賞土門拳賞記念作品展」と題して藤岡亜弥さんと高橋智史さんの展示もありました。日芸出身で活躍している写真家は多いです。

 先日見た「キヤノン新世紀」もそうだけど、日本の写真は大きく変わりつつあるね。「こんなの写真じゃない」というのがどんどん出てきそうです。

H6期募集中です。東京都写真美術館『イメージの洞窟』展

最近の東京都写真美術館の展示は、よくわからないとよく耳にします

YouTube

https://youtu.be/KNjEau4TG-E

 

22日の「即位の礼」の日に東京都写真美術館に行ったら、入場料が無料でした。そのせいか、いつもより混んでいましたね。でも2階の企画展「イメージの洞窟」を見てるお客さんは駆け抜けるように展示を見ていました。無料だから来てみた人が多かったせいでしょうね。 

ちなみに、東京都写真美術館は1995年に東京恵比寿にオープンした、写真を専門に展示収集する東京都が運営する公的な美術館です。ちなみに、世界で初めて写真を収集した美術館はニューヨーク近代美術館MOMAです。1940年のことです。

東京都写真美術館は、最近は「TOPギャラリー」という名称になっていますが、まだ馴染みがない。やっぱり都写美と言ったほうが馴染みがありますね。

今月は3階が「TOPコレクション展 写真の時間」、2階が「イメージの洞窟」、地下が「写真新世紀」展をやっていました。

3階のコレクション展はおすすめです。名作揃い。タイトルの「写真の時期」にあるように、写真が持つ時間を切り取ったり、堆積させたりする特質を現す収集が集められています。

個人的には、ユージンスミスのプリントが超絶すぎて驚きました。ローライ フレックスで撮られたであろうポートレートは、現在のデジカメでもかなわない気がするほど。 

オーギュストザンダーの白い服の描写や、奈良原一高の「消滅した時間」のプリントもいい。

地下の写真新世紀は、5年ぶりくらいに見ましたが、以前と全然違う。エグイです。これは見てもらうしかないですね。モニターが並んでいて、もう映像作品は当たり前のようになっています。

東京都写真美術館は、2016年9月にリニューアルオープンしてから2階の企画展はかなり現代アートに振っている展示をしています。一言で言ってしまえば「写真っぽくない」。

そもそも、リニューアルオープンのときの展示が杉本博司の「今日写真は死んだ、昨日かもしれない」という刺激的なものでした。写真が死んだ?

 

つまり「みんなが思っている写真はもう死んだんですよ」ということです。

 

だからいまいち評判がよくない。「なんでこんな展示するんだ」っていうクレームも多かったそうです。クレームっていうのかな。まあ苦情ですね。「こんなの写真じゃない」っていうことなんでしょう。 

最近の2階の企画展は攻めてます。そのかわりといってはなんだけど、3階はコレクション展にして、歴史的な写真を数多く展示しているし、地下も名作が多い。

最近の都写美はバランスがいいなと思っています。

先ほども言ったように2階の展示はよくわからないという場合が多い。今回の「イメージの洞窟」も見に行った人が「5分で出てきてしまいました」と言っていました。なんででしょう。

日本を代表するトップキュレーターが、予算と時間をかけて作り上げた展示ですから、なにかしらわけがある。なぜ見ている人のひっかかりが薄いのか?

これは思うに、わざとわかりづらくしているんじゃないか、見て感動するようなものは、もうやめようとしているんじゃないかと。こういうと「芸術は心に感動させてくれるものでしょ」と言われそうですが、どうやら都写美のキュレーターはそう思ってはいないようです。

そういえば、ちょっと前にある市町村のトップが言っていましたね。「なにも感動しなかった」って。なんとなく僕らはアートは与えてくれるものだと思っています。

ところが、もう数十年も前からアートは与える存在ではなくなっているんです。

与えないならアートの存在は何かというと、考える装置みたいなものと考えられているようなんです。

そこで「イメージの洞窟」というタイトルが重要になってきます。キュレーターはそのタイトルを下敷きに、写真家を選び出している、だからタイトルの意味がわからないと展示を見ていてもピンとこない。

この「洞窟」。実は洞窟ってアートにとって、とても重要なキーワードです。

都写美のサイトの展示説明欄の中に「プラトンの洞窟」とあります。これがわからないと始まらない。

実はスーザン・ソンダクの写真評論集の冒頭にも「プラトンの洞窟」の引用が繰り返し書かれています。どうやら重要なものらしいことはわかります。

プラトンの洞窟とは、ざっくり説明すると、我々は洞窟の中に縛り付けられた存在で、後ろを振り向くことはできません。ずっと洞窟の奥の壁を見ている存在です。光が背後からやってきて、その影が壁に映る。

認識できるのは壁に映った影だけ。

それを我々は真の世界だと認識しているというものです。

そこで我々が認識しているのは影にすぎない、真の世界、本質ではないというたとのことです。

これって写真そのものじゃないですかね。撮影は「影を撮る」と書いたりします。

そして往々にして我々は写真を真実が写ったものだと誤解したりする。ただの写真と現実を同一視してませんか、そのように考えることができそうです。

プラトンがそれを考えたのは2600年以上前。それがいまだに有効性を持っているのがすごいですね。

写真は写真です。イメージにすぎないんですよ、ということだと考えると、今回の展示は俄然面白くなるはずです。

そして洞窟はそのほかにも多くの暗喩がひそんでいます。

神話の中にも洞窟は多く登場しますよね。古事記にはイザナギが死んだイザナミを探しに洞窟に入ったり、天照大神が洞窟の中に隠れたり、ギリシャ神話や各国の物語にも数多く洞窟は出てきます。多くは生と死を別つものだったり、再び生まれ変わる儀式の場として登場します。

そのほかにも、ラスコーの壁画、人類の祖先が生き延びたアフリカの洞窟など、洞窟には多くのアプローチがあります。アプローチが多ければ多いほど、展示内容に多様化生まれます。なのでキュレーターにとって、洞窟は使いやすい題材だったのでしょう。

 

2階の会場を入ると、志賀理江子の写真が1枚だけ展示され、作者からの説明文は何もありません。

洞窟のような場所の壁を見ている人の後頭部と、その影が写っているだけです。まさに「プラトンの洞窟」そのもの。

続いて、沖縄の洞窟「ガマ」を撮影したオサム・ジェームズ・中川の作品。高精細のデジタルカメラを使い、ステッチング処理によってガマの中を克明に描写しています 

彼はカメラのシャッターを開けると、自らライトを持ち、岩肌をなぞるように照らしていくことで撮影しています。

沖縄のガマは、太平洋戦争末期に住民が避難場所として隠れ、多くの犠牲者を出した痛ましい場所でもあります。

今でも壁が黒く煤けているのは、火炎放射器が焼いた後だと言われています。この洞窟には死のイメージが残ります。

そしてその展示方法は、中央に洞窟をイメージさせる半円形の立体展示になっています。その中にしばらくいると、真っ黒だと思っていた岩肌が浮き出てくるような感じがします。

次のブースには、北野謙のフォトグラムが天井から吊されています。フォトグラムとはレンズやカメラを使わず、物体をそのまま印画紙の上に置き、光を当てて制作する方法です。

まさに影を作品にしています。そして写っているのは、まだハイハイもできないくらいの赤ちゃん。そこに不思議と生のエネルギーを感じます。洞窟は産道のメタファーでもあります。

ジョン・ハーシェルの洞窟のドローイングは、写真がまだ生まれる前のカメラ・ルシーダという機器を使ったもの。なんとかして実物そのものを写しとめたという欲求を感じます。

フィオナ・タンのショートムービーはモノクロのニュース動画を繋げたもの。何かを伝えるために撮られたはずなのに、言葉の説明なしに断片的につながる動画からは何も伝わってきません。ただのイメージの連続にすぎないのです。

そして最後はゲルハルト・リヒターの写真。とはいってもその上にエナメルの絵の具が塗りつけられています。これは写真でしょうか。それとも絵画?

リヒターは写真そっくりの絵画を描く作品が有名です。まったく写真そっくりに描かれたものは絵画でしょうか? 写真が真実を伝えるとするなら、その役割は果たすのでしょうか。そんな問いが生まれてきます。

 

みんなが思っているような真実を伝えるための写真は死にました。その先に写真ができることって何? というのが今の都写美がやろうとしていることのように思えます。

 

 

 

 

 

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10月24日木曜日です。本の書店流通の話。

https://m.youtube.com/watch?v=Qs-_cYy5dwg

 

10月24日木曜日です。なんだかブログのほうが見てくれる人が多いみたいです。

 

『じゃない写真』を今週末10月28日土曜日まで限定販売します。正式な発売は来年早々です。出版社の倉庫に今日納品なので、発送は来週になります。概要欄見てください。ベイスというプラットフォームから申し込めて銀行振り込みとクレジットカード払いに対応しています。

 

今日はあまり馴染みがないかもしれませんが、本の書店流通についてお話しします。

 今まで5冊の写真集と5冊の書籍を出しました。

2000年、最初に出した写真集『午後の最後の日射』(ごごのさいごのひざし)は自費出版です。その時に初めて流通ということに直面しました。

写真集を出したくても、どこの出版社も相手にしてくれないので、四谷三丁目にあった、写真関連の本屋さんと、自費出版をサポートしていたmole (モール)で出すことにしました。

そこなら書店流通もできたし、少なくともそこの本屋さんで置いてもらえるかなと思って。でも出版後すぐにモールは倒産。倉庫にあった在庫は500冊以上は自分の事務所に引き取ることに。

写真集に囲まれて途方にくれました。捨てたくなります。 本屋さんで売れないから、残りは手売りしかないわけです。そこで自分のサイトを作ったのがネットを始めたきっかけです。

写真集は作るよりも売るほうが何倍も大変です。やる気とお金が用意できれば本を作ることはできます。でもすぐに「これ、どうやって売ればいいんだ?」ということになるわけです。

自費出版をしてくれるところは、本は作ってくれても、売ってはくれない。一応自社のサイトでは紹介してくれるけど、そこから売れるようなことはないです。

ちょっと前なら本を買うところといえば、本屋さんでした。「でした」というのは、今ではAmazonがあるから。いつからでしょうね、なんでもかんでもAmazonで買うようになったのは。

さて、本屋さんに置いてもらうにはどうしたらいいかというと、基本的には出版社から取次と呼ばれる本の卸業者を通して、全国の書店に配本してもらいます。出版社が直接書店と取引しているわけではないんです。最大手はトーハンと日販。名前を聞いたことがある人もいるでしょう。そのほかにも取次は数社あります。

 取次は、出版社から本を受け取ると、まず定価の60%から70%の代金を出版社に支払います。

取次を通して本は本屋さんに送られ、一定期間預かってもらいます。売れたら本屋さんは手数料として定価の25%程度を受け取り、残りを取次に渡します。

預かってもらうということは、本屋さんは本を買いとっていないので、いつでも返品できることになります。一応期間は決められていますが、あまり機能していないという話もあります。

返品された本は、取次を通して出版社に返されます。そして本屋さんから注文があると、再び取次を通して書店に送られます。通常7回ほどいったりきたりするそうです。ある意味中古品。

本屋さんは、セレクトショップのように見えて、委託販売業者なんです。そのため新刊本の値段は全国どこで買っても同じです。勝手にディスカウントしてはいけません。古書店は買取制なので書店が価格を自由に決めることができます。

 

本の価格は出版社が決めて、それを守らなければならない。家電ではメーカーが小売価格を押しつけることができないように、オープンプライス制が定着していて、小売店が勝手に値段をつけてもいいけど、本は出版社が決めた値段のみで売られるから全国統一価格。これって実は独占禁止法違反。

 

これは日本独自の本の流通制度で、再販売価格維持制度といいます。通常の品物と違って、古くなっても本は定価どおりに売られます。再販売価格維持制は、通常再販制度といいます。独占禁止法の例外により、書籍・雑誌・新聞などについては価格拘束が認められているのです。

自由な競争ができないなど、その是非が何度も問われていますが、委託販売のため売れる見込みの少ない本でも流通させることができるのがメリット。

欧米の書店はすべて買い取り制ですので、売れる本しか扱わない。買いとっても売れなさそうだったら、ワゴンに積んで叩き売りのようなこともします。欧米では売れない本は流通できない。だから知名度の低い写真家が本を出しても本屋さんで流通させるのはほとんど無理。売れそうにもない、値段が高い写真集は本屋さんが敬遠しがちです。じゃあ、彼らがどこから出版するかというと、その多くがギャラリーだったりします。

しかし日本では再販制度があったおかげで、1960年代から多くの写真集が流通してきました。流通できることで、写真集を作ろうと思う人が多かったわけです。本屋さんに自分の本が並んでいるのはかなり嬉しいですから。

これは世界的にみて特異な現象で、日本独自の写真集文化が生まれた土壌になっていると思います。再販制度は問題があると言われていますが、ある一定の効果があったのもたしか。でもこれからは大きく変わると言われています、。

 

最近では本屋さんに頼らない、ネットを通じてピンポイントに販売する形が増えてきました。ほとんどの写真集の制作部数は1000部くらい、多くても1500部。少ないと500部という場合もあります。そうなると、ネット販売で売り切ってしまうこともできる。写真集は言語の壁を超えて世界で売ることもできますしね。実際海外マーケットのみを考えている日本の出版社もあるくらいです。

僕が写真集を出している冬青社は、書店流通にこだわっています。たしかに書店に置いてもらうことで、大きな広がりを持つことがあります。僕の写真集だと『da,bastia』(ダガシタ)がそうでした。書店注文が毎月コンスタントにあり、あっというまにすべて売り切れました。

ただ、書店流通の最大のデメリットだと思っているのは、カバー後ろにISBNコードを印刷しなければならないことです。このISBNコードというのは、流通管理のため必要なもので、これがないと書店では扱ってもらえないのです。

 

しかしこれがブックデザインを著しく壊してしまう。シュリンクといってビニールカバーにくるんでISBNコードのシールを貼り付けるというのもあるけど、そうすると中身が見えない。

それが嫌で書店流通させないという選択をする出版社さえあります。ブックデザインが大事な写真集にとって、ISBNコードの印刷は無視できないほど大きな問題。僕もそれを入れたくなくて『demain』(デュマン)では一部、特装本を作ってISBNコードをいれませんでした。

 

とにかく売るって大変。毎回本を作るたびに思います。

 

 

 

 

『じゃない写真』先行発売

お待たせしました。『じゃない写真』の先行発売です。1026日土曜日までの限定となります。

 

「最近の写真はよくわからない」と思っている方は是非読んでみてください。『旅するカメラ』の続編のようなものです。よろしくお願いします。

 

購入サイト BASE

クレジットカード、銀行振り込みが使えます。送料無料 2640

出版社から、ゆうメールでのお届け。

じゃない写真 | 2BH

https://gsfr3.app.goo.gl/VBWWJB @BASEec

『じゃない写真』とルデコ

 

https://m.youtube.com/watch?v=W2p5x3b2lcU

 

10月21日月曜日です。チャンネル登録者数は763人、男女比はなんと97.3%対1.7%。

女性は13人しか登録していないことになります。どういうことでしょ?

女性人気がないことおびただしい。

そんなことを言っていたら「そうですよね、コンタックスのズームレンズでは女性は食いつかないでしょうね」と言われました。もっともです。 

 

さて先週の金曜日、グループ展の会場に『じゃない写真』の刷りだし30冊を編集者さんが届けてくれました。

昨年7月から初めて1年以上、今年の前半はそれにかかりきりでした。それが一段落してからはYouTubeにかかりきり。そのふたつでもうすぐ一年が終わりそうです。

 

本は出来上がったのですが、本格的な発売は来年度なんです。出版社がこれから営業をかけて、書店に置いてもらえる数が多くなってから発売になります。

これがとても大事なので。

 

もうしばらくお待ちください。それまでに、渡部と直接会える方は「じゃない本」と言っていただければ、おわけします。

Amazonも来年になるかな。直販サイトができたらお知らせします。

内容についてもそのときに。

 

 

渋谷ルデコでの「ワークショップ2B&Hグループ展」は20日で無事終了しました。

今日は1年で一番ほっとする日です。来ていただいた皆様ありがとうございました。

来年は11月3日からです。もう全フロア予約済み。

 

3階の「H」の展示は、今までの方向性とはまったく違ったものだったので、受け入れてもらえるか、正直なところ心配でした。でもそんな不安はすぐに吹き飛びました。

 

ある2人組の男性は、作品を前に会話を続けていて、あまりにも熱心に見てくれていたので声をかけると「あ、もう1時間40分も展示を見ていた」と彼らも驚いた様子でした。

 

先ほど言った、「以前との方向性の違い」というのは、2B時代はフィルムと印画紙を使ってのワークショップだったので、いかにプリントのクオリティを上げるかということを考えていました。ベクトルで言うと、高見を目指す垂直方向の思考でした。

 

明確な目標を定めてそこに向かっていくというイメージです。そして自分の作品を自分自身が理解するため言語化することも要求していました。

 

2018年に「H」を始めてからは、フィルムではなくデジタルカメラを使うようになって、クオリティを上げるという垂直方向ではなく、今考えていることを「ちょっとずらしてもらう」水平方向の考え方を目指しています。

 

グループ展の相談を受けるときも、今作っているものから「ちょっとだけずらしてみて」ということを繰り返し言っていました。ずれていくわけですから、どこへ向かうのか作者にもわかりません。

 

そして次回できたものから、またちょっとずらしてもらいます。ですから、やってもやっても上手い写真にはなりません。ずれているわけですから。

 

なので、本人にも理解ができないものができあがる可能性があります。だから言語化は不可能です。ですので今回はテキストをつけるかつけないかは相談の上決めて、あえて必ずつけるという前回までのお約束はなくしました。

 

「H」でやっているのは、水平思考だと思っています。クオリティを高める垂直的なアプローチを一度やめてもらって、考え方の幅を広げる水平の広がりです。これは写真の中だけではなく、現実社会でも求められるものだと思っています。

 

こんなことを考えるようになったのも、2013年くらいからです。

たくさんの展示や、多くの関係者から話を聞くようになってきて、徐々に考え方が変わってきました。

「H」のワークショップでやっていることは、ちょっと抽象的でなので、〝参加すると、こんなにいいことがあるよ”とは言い切れないところがあります。参加してもらわないことにはわかりづらいというのが今の課題です。

 

でも、こうやって「H」の展示を通して直接見てもらうことができて、そしてそれを楽しんでもらえることができたのは本当によかった。

 

「H」6期は現在募集中です。

写真のことを、写真以外からも考える講座です。

考え方が変われば、必ず写真も変わります。

写真を始めたい方、作品作りで悩んでいるかた、写真が好きな人すべての人が対象です。

 

11月の2日(土)、3日(日)からスタートします。詳しくは概要欄へ。

 

さて、これからギャラリー冬青に行って来年1月の個展の打ち合わせ。

1年はあっという間だなあ。