「ハービー山口」ロングインタビューを終えて

「ハービー・山口」インタビューを終えて。

 

2019年12月10日火曜日 

本格的に寒くなってきましたね。寒いのは嫌いだけど、石油ストーブは好き。20年前に岩手で買った南部鉄瓶でお湯を沸かして、お餅を焼く。最高です。ネコがそのへんに転がっています。

 

さて、三夜連続の「ハービー・山口」ロングインタビューの配信は見ていただけたでしょうか。

第3話

「撮りたいという思い」 ハービー山口03

https://youtu.be/Umx_6lqcOPs

第2話

「Glorious Days」輝く日々 ハービー山口 02

https://youtu.be/Rfg8lwfZxl0

第1話

「ネガをポジに変える生き方」ハービー山口 01

https://youtu.be/DT5EJ6hObj4

 

収録したのが12月4日水曜日、一話目をアップしたのが6日金曜日です。

話を伺っているときから「これはすごい」と思っていて、一刻も早くアップしようと編集をしていました。そのくらい、心に響くインタビューだったんです。編集作業はまったく苦になりませんでした。

 

ハービーさんと知り合ったのは2004年なので15年前になります。もちろん「ハービー・山口」という存在は僕が30歳の時から知っていました。

これは僕のエッセイ集『旅するカメラ2』にも書いたのですが、最初は本屋さんで見かけた「吉川晃司」の写真集でした。アメリカで撮られたその写真集はすべてモノクロで構成されていて、新鮮に見えました。

ミュージシャンのポートレートに憧れていた僕は、音楽専門誌でたびたびハービーさんの名前を目にすることになります。

僕がモノクロでポートレートを撮るようになったのはハービーさんの影響なんだと思います。

 

ハービーさんはエッセイ集を出していることを知って『ずっと探していた』『女王陛下のロンドン』を読みました。

その中でジ偶然地下鉄でョー・ストラマーと出会ったときに「撮らせてください」とふりしぼるような思いで声をかけたハービーさんに「撮りたい物はすべて撮るんだ、それがパンクだ」と声をかけたもらえたというくだりは本を見て震えました。その言葉はまるで自分にむけられたように感じたんです。

その後僕もエッセイを書くようになったのは、やっぱりハービーさんの影響なのかもしれません。

 

インタビュー中にずっと思っていたのは「人生はすべてはつながりの中にある」ということでした。これはよく聞く台詞だし、自己啓発の本には必ず書いてありそうな言葉です。

でもハービーさんの生き方を聞いていると、とても納得いくものとして届きます。

「過去は変えられない」。あたりまえです。誰でも知っている。でもつい思ってしまう。

「あのとき、ああすればよかった。なんでやらなかったんだろう」と。思えばいつも後悔の連続でした。

なんでもそうでしょうが、クリエイティブな仕事、僕が生きてきた写真の世界は、才能がある人がたくさんいます。そのキラキラした才能を間近で見るから、自分の才能のなさに落ち込んでしまうわけです。

 

もっと才能があれば、もっとうまく世の中を立ち回れたら、もう一度20歳に戻してくれれば、今度はもっとうまくやれるのに。最近まで毎日のように思っていました。

でも僕がもっと才能があって、世の中をうまく立ち回れる人間だったら、間違いなくワークショップをやっていません。やったとしても長続きしないでしょう。

もしハービーさんがハービーという名前を自分につけていなかったら、学生のときに就職が決まっていたら、まるで違う人生だったように、僕に才能があったらもっと違った人生になっていたわけです。

 

今年になってワークショップを通じて親しかった人がふたり亡くなりました。

ワークショップを通じての出会いだから、やっていなかったら絶対にふたりとは出会ってない。ということは彼らと過ごした馬鹿みたいに楽しい時間はないってことになるんだと気がつきました。屋久島やアルルで僕は彼らと本当に楽しい時間を、代えがたい時間を過ごしました。

それがないなんてありえない。彼らが僕の人生に関わらないなんて考えられない。だから僕の人生はこれでよかったんだと思えるようになりました。才能がある人を、もううらやむ必要はなくなりました。

 

そう思った矢先のハービーさんのインタビューでした。だから3話目での冒頭の言葉になったんです。

いつもならカメラの話を聞くのですが、今回はしませんでした。インタビュー前は「ハービーさんだからライカの話をしよう」って思っていたけれど、もうその必要はないって話を聞きながら思いました。

 

願わくばこのハービーさんの動画をたくさんの人に見てもらいたい。今つらい思いをしている人に聞いてもらいたい。もしかしたらちょっと元気が出るかもしれない。聞いたときはなんでもないけど、あとで思い返すことで考え方が変わるかもしれない。

YouTubeを始めてよかったな、とあらためて感じたインタビューでした。