バライタ大全紙プリントを1週間かけて毎日やっていたら心身ともにスッキリしてきた。暗室作業はマインドフルネスだと言った友人がいるが、まさにそれ。身体の中から澱のようなものが消えていった。
さて乾燥が終わると印画紙は、お札を洗ってしまった時のようにクシャクシャになる。
それをまっすぐ平らにするには、巨大なアイロンがけをしなくてはならない。それをフラットにングという。50センチx60センチの大きさのアイロン。そんなもの持ってるわけがない。
事務所にあるのは半切までの小さなもの、といっても相当場所をとる。その倍以上の大きさのマシンはどこにいけば使えるかFacebookで聞いてみた。あっさり八丁堀のシャティーヌと田村写真にあることがわかり、連絡がついた田村さんのところでフラットにングをお願いすることになった。こういう時はSNSって便利だなと思う。
田村写真では10年前くらいからオルタナティブプリントと呼ばれる湿板写真やプラチナプリント、サイアノプリントのワークショップをやっていて、ずっと気になっていたのだが基本的に週末開催で自分のワークショップとかぶってしまい残念ながら今まで行くことができなかった。
それに自分の暗室を持っているとなかなかプリントを発注することもない。田村さんは暗室のプロ中のプロなので、これまでもお会いするといつも話は聞いていたのだが、実際に田村写真に行ったのは今回が初めてだった。
人の暗室は見る機会がほとんどない。まして暗室は魔法的なところがあって以前は秘匿されるべきものであり、誰も教えてなんてくれないものだった。
だから暗室作業は最初に身につけたことをずっとそのままやり続けることになる。僕はといえば新聞社仕込みのもので、お世辞にもファインプリントとはいえないものだ。あとは本で補ってきたのだ。
大全紙60枚のフラットにングには3時間かかるから、その間僕はここぞとばかり田村さんに質問ぜめ。なんでこういうことがおきるのかとか、どういうものを使うのがいいのかとか色々なことを教えてもらった。田村さんはなんでも知っていてなんでも教えてくれる。
だからだろう3時間の作業中もひっきりなしで訪問者がある。相談だったりプリントの受け取りだったり発注だったり。先ほど出たシャティーヌの方や作家のかた、中には僕の大好きな作家もいた。ちょっと興奮する(笑)
ビシッと平らになったバライタプリントはかなりいい出来だ。久々に「俺って天才」モードになって気持ちよかった。
あとはマットにいれて発送するだけ。深夜、L版プリントを並べて並びの順番を決める。いいんじゃないか。盛り上がってきたぞ。