トンカツとキムチ

フリーの職業で良かったなと思えるのは、自分のリズムがいいほうにあるか悪いほうにあるかが理解しやすいことにある。

今の調子は12年前と同じような感じがする。あの時は2月の末くらいが底で7月まで浮かび上がれず突然9月に入って霧が晴れたように物事が進み始めた。

日本では大した動きはないがアメリカでは、グリフィン写真美術館がオンラインで掲載しているda.gasitaのオリジナルプリントを永久収蔵したいとオファーがあったとボストンのギャラリーから連絡があった。

美術館にコレクションされるのは作家活動をしている上でとても重要で名誉なこと。ただし「美術館は現在国内景気の状況から正規の価格で購入する余裕がない」だそうだ。

朝一番で妻と銀座マリオンへ映画「おくりびと」を見にいった。週刊誌漫画連載の時から好きで気になっていた。国際線の機内映画でやっていたが、なんだか小さな画面で見るのがもったいなくてそのままになっていた。

一度はロードショーが終わったのだが、米国アカデミーショーの外国部門映画賞にノミネートされるとニューズで取り上げられるようになり再び上映となったようだ。

原作を知っていたのだが、ドラマチックなストーリーでも派手なアクションシーンもない。どこが良くてアカデミーショーにノミネートされたか気になっていた。モスクワ映画祭ではグランプリも取っている。

舞台は山形だ。米沢の方ではなくて秋田に近い庄内地方

少ない登場人物、限りなく低予算のセット、ドメステックな風習を扱ったシナリオ。でもこの映画は世界中どこでも理解しあえるシンプルなテーマが存在する。

この作品がアカデミー賞候補になったことはおそらく作った本人達が一番驚いているに違いない。

帰り道ギャラリー冬青に寄って、ひさの写真展「閑寂」を見る。とてもいいモノクロだと聞いていたので楽しみにしていた。

30枚のプリントにストーリー性はない。ただひたすらに作家の思うモノクロプリントの形がある。所有欲が湧いてくるプリントだ。たぶん写真集よりプリント自体が魅力的な人だ。

初めて見た作家だったが世の中頭がモノクロな人がまだまだたくさんいるんだな(笑)