冬青のこと

明日5日からギャラリー冬青で写真展「2Bとマンデリン」。

最初の冬青での展示が2006年の2月だった。以来12年で9回目。写真集も4冊出してもらった。ここ数年は毎年1月に個展をやらせてもらっている。新年早々に展示ができるなんて、本当に恵まれている。

ギャラリー冬青の大きな特徴はモノクロ、しかも銀塩プリントの展示が多いことだろう。作家年齢は40代から50代が中心。土田ヒロミ、須田一政北井一夫、渡邊博とビッグネームも多い。

「TOSEI」写真集のクオリティはもはや世界的で、あの「シュタイデル」からもコンタクトがあったそうだ。


冬青の高橋社長との最初の出会いは2005年になる。それまで一般書を出す出版社だった冬青が、写真集専門に特化するという記事を写真雑誌で読んだ。写真集を出したくて奔走していた僕はすぐさま連絡して会いにいった。

しかし売り込みは失敗。モノクロ中心でいこうとしている冬青に持っていったのはカラー作品。他にも当時撮っていた米沢のプリントも見せたが、あくまで作りたいのはカラーだと主張した。「モノクロ写真集を作る気がないか?」と言われても「その気はない」。そりゃうまくいくわけがない。

冬青とは縁がないと思っていた。

ところが冬青でやっていた北井さんの写真展のことを何度か日記に書いたり2Bで話したりすることで、それまで新規参入のギャラリーで客足に悩んでいた冬青に多くの人が訪れるようになったとスタッフから感謝のメールがあった。そこには「いつも日記を拝見しています」ともあった。

しばらくして、2年間撮りためた「da.gasita」の原型を展示したくてコニカミノルタに応募した。自信満々だったのだが見事に落選してしまう。そのことを日記に書いた。

「普通はそういうことは書かないものですよ」とたしなめられたが、いいことばかり書いてるのでは日記とは言えない。悪いことがあったらそれも正直に書こうと思っていた。

落選したプリントを引き取りに新宿にあったコニカミノルタにいき、帰り道駅に向かって歩いていると電話がなった。

「冬青の高橋です。日記で落選したことを知りました。以前見せてもらったものですよね。来年2月にうちでやりませんか」というものだった。その連絡を受け新宿から中野のギャラリーにプリントをもっていき、展示が決まったのだった。コマーシャルギャラリーで展示ができるなんて想像もしていなかった。

2月は寒いからギャラリーを閉めようか迷っていたそうだ。今では2年後のスケジュールまでいっぱいだが、当時は作家を集めるのも大変だったのだろう。そこへ日記を読んだスタッフが進言してくれたのだ。

コニカミノルタに落選した「da.gasita」は、その後写真集になり、海外で展示をしたり美術館にコレクションされたりしている。

あの時、もしコニカミノルタでやれていたら、いや落選したことを恥ずかしがって日記に書かなかったとしたら。おそらく冬青との繋がりはなかっただろう。そうすると僕の人生は明らかに違ったものになっていたことだろう。

不運だと思っていたことが大きな幸運につながった。そう思うと縁とは不思議なものだな。

明日は11時の口開けからギャラリーにおります。土曜日はワークショップがあるので15時くらいから。日曜日と月曜日はお休みですのでご注意ください。

10日水曜日19時からのイベントもよろしくお願いします。要予約だそうです。ギャラリー冬青まで。

1月10日午水曜日後19時~21時
『作家の頭の中見せます』
●先着10名様まで会費、無料。
※お申し込みはギャラリー冬青 <gallery@tosei-sha.jp>のメール、電話03-3380-7123にてお願い致します。