甲府のワイナリーの取材に行った。そこは日本を代表するワインを作っているところで、海外での日本国主催の晩餐会にも出されているそうだ。会長はフランスのワインアカデミーの正会員で、国際コンテストの審査員を務めている。味には絶対の自信があると言っていた。
帰りがけ、そのワイナリーご自慢のワインを買ってきた。1990年のビンテージもの。1本1万円だった。
90年は当たり年だったそうだ。不思議なことにフランスワインも90年は大当たりの年だ。一度だけ90年のラトゥールとマルゴーを飲んだことがあるのが自慢だ。
翌日「3月会」という3月生まれの写真家が集まる怪しげな集まりにそのワインを持っていった。確かにおいしかった。面白いのはフランスのワインの奔放さに比べ、どこか奥ゆかしく、折り目正しいのだ。日本的というのだろうか。
先々週見た河瀬直美監督作品「追憶のダンス」がとてもよかったので、金曜日にもう一度ギャラリーバウハウスへ「垂乳女」を見に行った。http://www.gallery-bauhaus.com/top.html
「たれちちおんな」?と思っていたら「たらちめ」ですよと突っ込まれた。ああ、そういえば高校時代古文でやったな。
河瀬直美の出産のシーンが出てくると聞いたので内心ちょっと心配していた。血に弱いのだ。会場の写真展にもそのときのシーンがあるのだがモノクロだからリアルさはなかった。
予想に反して「出産」の映画ではなかった。冒頭の祖母との言い争いからどんどん引っ張りこまれてしまった。出産のシーンは最後の最後のほうにちょっとだけ出てくる。
出産の立会いはしたことがないから初めて子供が生まれるところを見た。子供は血に染まってはいなかった。きれいなピンクの肌が油膜に包まれていた。
でもそれが重要なことではなくて、もっともっと大事なことがあった。生は繋がっているのだ。人は繋がって生きているのだ。
最後のシーンで胎盤を河瀬直美自身が食べるシーンがある。「とっても新鮮でおいしかったですと」と笑っていた。
久々にいい映画を見た。河瀬直美は生まれながらの映画監督だ。