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つまり写真を購入することが、そのままスマトラ沖地震への寄付につながるというのだ。心が動いた。この写真を購入しよう。1点額装込みで5万円だった。気に入った写真を買うことが役にたつのならこんなに嬉しいことはない。

2004年の12月26日、インドネシアスマトラ沖で巨大地震が発生した。津波が町に押し寄せる映像を見ると、誇大な表現ではなく全てを飲み込むというものだった。

被害にあった場所の中には、何度も訪れたことのある場所も含まれている。特にタイ西部のプーケット島やピピ島のあるアンダマン海付近はとても好きな場所だった。人ごとではなく、友人がプーケット地震に巻き込まれている。僕自身も年末年始をプーケットで過ごすことも考えていた。

寄付金の募集を見るたびになんとかしたい気持ちに駆られるのだが、もう一歩踏み出せずにいた。「ドラえもん募金」の電話は何度かかけたものの、一回100円では気持ちが治まらない。そんな時のあの写真との出会いだった。

純粋に5万円を寄付する行為はなかなか難しい。しかしそれに物が介在することによってハードルは突然低くなる。作者は自分の作品を認められて買ってもらうことで寄付に参加し、購入者は気に入った作品を手に入れることが寄付への参加となる。

しかし寄付のためだけに作品を買ったのではない。その作品を所有したいと思わせる力があったから購入を決意できたのだ。

これまでも写真を販売したお金を寄付にあてるチャリティ写真展が数多くあったが、購入する気持ちになれる作品はなかった。逆に偽善の臭いすら感じてしまう。それはチャリティの依頼があったカメラマンが、手元の見栄えが良さそうな写真を出しているのが見えてしまったせいだ。

小川氏の写真にはそれがなかった。写真とスリランカ地震被害に対する本気が感じられた。

その写真が昨日届いた。プリントは全紙サイズに伸ばされて、額を含めると横幅72センチもある大型なものだった。原版がシノゴのため、大伸ばしされているにもかかわらず、粒子が荒れることはない。

そしてシノゴの情報量によって、シルエットになっている釣りをする男の表情までも分かるようだ。

今写真をどこに飾るべきか今悩んでいる。