「作るは簡単、売るは困難」

朝=焼きベーグルのたまごサンド、トマトスープ/夜=親子丼、味噌汁

寒いね。なのでずっと家で『da.gasita』にサインを入れて、トートバックに包んでをくり返していた。一日中やってもさっぱり目処がたたんw  相変わらず本はうず高く積まれている。これは早急になんとかしないと家が傾くぞ。「本を作るは簡単、売るは困難」というのをひさしぶりに思い出した。最初に作った写真集も自費出版だったので事務所が本で埋まったけれど、今回も似たようなもんだ。

フィルムの高騰は冗談のようだけど、印刷費もかなり上がっていて、赤々舎のツイートでも「値上がりがすごくて見積書が正視できない」とあった。「2BChannel」のコメントに「なぜそんなにフィルムにこだわるんですか」とあったけど、合理性じゃ片付かないこともあるわけで。とは言え、ずっとフィルムで撮って写真集を作り続けるというのは徐々に難しさを増していきそうだ。

<2022年1月16日の日記から>

肝心要の17歳のポートレートが松本市のコロナ警戒レベルMAXのため撮影できなくなるという不測の事態が発生し、朝ご飯を食べながら担当者と打ち合わせ。「さあ、どうする?」。当初四季を通して12人の撮影予定が最終的に7人まで減ってしまったのは痛い。とはいえ嘆いてばかりもいられない。食事後も移動しながらずっと話し合う。一旦撮影から戻りホテルのロビーで今までの材料をあげて調整作業を続ける。そして夜、最後の撮影へ。「さんくろう」という豊作祈願のお祭りで巨大な櫓を燃やすもので「どんと焼き」と同じ。火をつけるとあっというまに火柱になり盛大に燃える。火がおちついた頃に、枝の先につけた団子を火であぶって食べる。ハッセルブラッドのX1D2で撮影したのだが、写りが常軌を逸している。撮りながら興奮してしまうほど。使うたびに感動できるのだから、すごいカメラだよなあ。この仕事の最後の撮影がうまくいって、明日は気持ち良く帰ることができる。

<2006年1月16日の日記から>

横木 安良夫 写真展 『Teach Your Children』のパーティが13日にあった。ギャラリー所狭しと貼り付けられた写真、写真、写真。横木さんが70年代、学生からアシスタントの時に撮った、まだ何者のでもない時代の写真だ。見ていて不思議に思ったことがある。どうして当時の横木さんの写真はこんなに「バタくさい」のだろうか?古き日本というよりアメリカを感じてしまう。横にいた赤城耕一がつぶやいた「ロバートフランクだよねえ」。ああ、なるほどロバートフランクかあ。横木さんにロバートフランクは好きかと聞いてみた。「あったりまえじゃないか。写真を始めた頃に一番好きだったのはフランク。それと高梨豊だよ。でも天才だとと思ったのは篠山紀信」。横木さんのルーツがちょっと分かったような気がした。今回の展示は全てエプソンのプリンターで出力されている。ちなみにA1ノビのプリントは僕の事務所で出力した。銀塩プリントと、印刷物の中間に値するものだと横木さんは言っている。1枚欲しいなと見ていると、数百枚のプリントの中で1枚だけ70年当時のヴィンテージプリントがあった。雨に濡れた車の写真だ。ネガを紛失してしまい、もうプリントすることはできないらしい。そう言われると俄然魅力的に見えてくる。やはり物として欲しいのはその1枚だなあ。でも当然非売品。後半はお酒が入ってちゃんと見ることができなかった。会期が長いからもう一度見に行ってこようと思っている。