帰国。朝4時に目がさめた。
パリに戻った日はサッカーユーロ2016決勝でフランスxポルトガルだった。その日は早めにホテルに戻り、惣菜とワインを買い込んでホテルでテレビ観戦することにした。
時おり窓の外から歓声が聞こえる。そして落胆の声が。
帰国便が夜の11時だったので、翌朝は優雅にガルドリヨン駅構内の老舗レストラン「ル・トラン・ブルー」で食べた。ここは内装が素晴らしい。映画にもよく使われている場所だ。ミスタービーンのシリーズで、このレストランを舞台にした短編があるが最高に面白い。オムレツとベーコン、パンとコーヒーで2000円くらい。
お昼からはポンピドーへ。昨年はオルセーだったから時代性で言えばその続きという感じ。
エスカレーターで最上階まで登り特別展へ。むき出しのパイプ状の建物からはパリ市内が一望できる。こういうところでまず盛り上がれる。
今回の企画展は「パウル・クレー」と「Beat Generation」。ヨーロッパ1920年代とアメリカ1950年代だ。
ジャックケルアックの「On The Road」を中心にギンズバーグやロバートフランクの写真が並ぶ。ケルアックのタイプライターやテープレコーダー、そして伝説の「On The Road」生原稿が古文書のように展示してあった。
アメリカを移動しながらタイプライターで書くのに、紙の入れ替えが面倒だからと最初にテープで紙をとめて巻物にして書いたものだ。アメリカ文学のバイブルみたいなものだ。
ギンズバーグの詩の朗読があったり、8ミリ映画があったりと立体的な構成になっている。ロバートフランクの「The Americans」オリジナルプリントはやっぱり凄い。ケルアックとその友人達の行動が戦後アメリカの思想や文化に大きく影響しているのが見える。
パウルクレーは昔彫刻の森美術館で見た覚えがあるが、時代の流れを把握してから見るのは初めて。ピカソとの交流やバウハウスの時代、ヒットラーの台頭による芸術家の弾圧など、作品が時代とともに変わっていく様子が現れている。。
ヒットラー時代の彼の絵はかなり精神的に追い詰められてきて、それまでの柔らかさから一変して暗くて重いものになっていく。アートが時代性を孕む、アートを見れば時代が分かるというのを実感する。
ふたつの展示でたっぷり2時間以上使ってしまって常設展は駆け足になってしまった。それでもピカソ、マチス、ブラック、レジェから始まって、これでもかと作品が並ぶ。一作家数点とかじゃなくて、個展レベルの量。
初めてジャクソン・ポロック大型作品も目前数センチで見ることができた。
これで企画展ふたつ、常設展合わせて14ユーロ。1500円。
パリはルーブル、オルセー、ポンピドーを回ればアートの歴史と流れがどうなっているか一目瞭然で分かる仕組みになっている。
ヨーロッパでアートの話をすると必ず文脈の話になるが、ベースになっているものが連綿とと残っているからこそだ。
3年前に現代アートと写真の関係についてこの日記で書いたのがすべての始まりだが、ようやく知識と経験が輪になって繋がってきた想いだ。