ニコンワインを飲み忘れた。

買ったばかりのダナーライトを履いて銀座へ。

前迫美紀子 写真展 『うたかたの日々』
http://www.nikon-image.com/activity/salon/exhibition/2013/04_ginza.htm
#02
4月10日(水)〜 4月23日(火)
10:30〜18:30(最終日は15:00まで)
銀座ニコンサロン

35ミリモノクロプリント。小全紙(新聞紙片面くらいの大きさ)に伸ばされた写真は強烈なイメージで迫ってくる。自分ならまったくスルーしてしまうであろう場所や、撮ったとしても焼かないカットが続く。

コントラストが高くザラついているのに乾いた感じはなく、まとわりつくような不安感がつきまとう。

作者は本格的に写真を始めて4年、モノクロプリントにのめり込んで2年。今回展示されたものはモノクロを撮り始めて間もないフィルム現像が不安定な頃のものも含まれている。

トーンとかグラデーションとか「モノクロとはね、、、」なんて言う人をあざ笑うかのような挑発的なプリントは、現像の失敗であろうムラでさえ魅力的に見えてしまう。

デジタルプリントと銀塩プリントの違いがどこにあるかと考えると、いわゆる「味」と呼ばれるゆらぎが銀塩の場合、何もしなくても自動的に付加されるところにある。デジタルは人為的にその味を足さなければ出ない。

作者が現像やプリントにもっと習熟していくと写真はどう変わっていくのか。経験さえ積めばプリントは必ず上手くなる。すると今ある味は消えてしまうことになる。

造形大学長の新入生に向ける式辞が話題になっている。
http://www.zokei.ac.jp/news/2013/001-1.html

経験が邪魔するものもある。上手くなるってどういうことだろう。

以前近代美術館のプリントスタディでクーデルカの「EXILES」のオリジナルプリントを見た。10数枚のポートフォリオ用に焼かれたプリントは、おそらくプロのプリンターが焼いたもので、丁寧にコントロールされた非の打ち所がないものだった。

ところが美しすぎて印刷を見ているようだった。いや、むしろ印刷のほうがはるかに「味」がある。

しばらく後ににロバートフランクのプリントを見た。ゴミはあるは、現像のムラはあるは、印画紙がかぶっていてグレーに変色しているほどだ。

ところが見ていた全員が食いついた。クオリティが高いプリントは明らかにクーデルカポートフォリオのほうだ。でも面白いと思うのは圧倒的にフランク。

クーデルカが自分で焼いたプリントはもっと味があるんだろうということになった。ということは味と感じているものはコントロール外のものにあるということだ。となると一旦経験をリセットしてみたくなる。いやいやそれはもったいない。でもニュータイプになるんだったら、、、

色んなことを考えた写真展だった。