集まる

朝=山かけうどん/夜=阿佐ヶ谷の「杉玉」

最近、現代アートの中では「コレクティブ」な形が多くなってきた。コレクティブというのは集団制作だと思ってもらえればいい。突出した才能が創る特別なものではなくて、集合値としてアイディを出し、分担し制作するもの。日本ではChim ↑Pomが有名だが、写真家もコレクティブな活動を選ぶ人達が増えている。上下はなく、フラットな関係。twitterで「2B Channnel」のアシスタントを募集したところ7名の人が手を上げてくれた。通常ならその中で一番キャリアがある人をひとり選ぶのだが、今回は全員に集まってもらい「今後の2B Channnelをどうしたらいいのか」をそれぞれの立場から考えてもらった。ワークショップではない、コレクティブな活動を始めて見ようと思っている。ひとりで考えるとどうしても同じことを繰り返してしまうので、知恵を貸してもらった。さて何が生まれるか。

美術史講座の再配信を金曜の夜にしたので土曜日が使いやすくなった。日曜日に美術史講座の本配信、水曜日は「2B Channel」ライブ、金曜日に美術史講座の再配信。週に3日の配信は相変わらず。音声が安定してきたのでストレスが減っている。

 

<2021年9月18日の日記から>

まずは“器”選び。

この秋初めての鰻。3月に名古屋で「ひつまぶし」は食べたけど、素材は同じでも別の料理。肉じゃがとカレーくらい違うんじゃないか。とても美味かった。

今週も吉祥寺の「book obscra」へ。初めて写真集を作る人から相談を受けていて、まずはどんな本にしたいのかイメージが掴めるように、ということで写真集専門店へ連れてきた。内容から形を決めるのが正しいような気がするけど、実はそれはかなりの経験がいる。最初は器を決めてしまうのがいい。内容より形式優先。どこで、誰に見せるかで器の大きさや分量が変わってくる。冬青で作る本は書店流通を軸としているので、デザインにも制限がある。返本などで何度も書店と冬青を往復するので、擦れたりしても大丈夫なように本を包むようにカバーをつける。書店流通を考えずネットや手売りをするなら、本が痛む心配がないのでデザインの自由度は格段に増える。「book obscra」でパッと目についたのが熊谷直子、草野優、熊谷聖司のもの。手に取りやすいデザインをしている。その他にも川内倫子「Illuminance」の再販版や、トッド・ハイド、髙橋恭司の新作などが目についた。結局僕が2冊、連れが5冊写真集を購入。このお店に来るとストッパーが外れる(笑) 。井の頭公園のカフェで、買ってきた写真集を早速開き、今度作る写真集の形を相談。どこで売って、誰に買ってもらうか。まずはそこから。

<2010年9月18日の日記から>

清家さんがデジタルで作品を撮っていると聞いた。以前お会いしたときにはRD-1sで撮っていると言っていたが、最近ではシグマのDP-2で撮っているらしいと噂になっていた。今回の展示はデジタル撮影デジタル出力の作品だ。トミオ・セイケ写真展「Untitled」(現在は終了)。目黒駅からバスに乗りブリッツギャラリーに向かう。会場には清家さんの姿が。挨拶もそこそこに写真を見始めた。1枚目を見たときに「なんだ、銀塩も展示してるんじゃないか」と本気で思った。数枚見た時点でタラりと冷や汗が出てきた。銀塩だと思っていたものは全てデジタル作品だった。グルグルと何周もしてしまう。僕が1990年初頭に見た「water scape」のエクタルアプリントのトーンそのままの世界が出ている。むしろこちらのほうがいいかもしれない。大壁に同じモチーフが2枚づつ縦に並んでいる。一方がデジタルからプラチナプリントをおこしたもので、一方がインクジェットだ。双方には、確かに違いはある。でもその差は好みと言って構わない。前回のブリッツでの展示は旧作「ZOE」のネガからスキャンし、インクジェットプリントされたものだった。通常40万円近くして手が届かない清家さんの作品が6万3千円で購入できる。清家作品を手に入れるチャンスではあったが、「オリジナル」が銀塩で存在する以上、どうしてもコピーの印象を持ってしまい最終決断にはいたらなかった。今回はデジタルからインクジェット。プリント作業はすべて清家さんの手によって行われている。自分の中で整合性はとれた。後は何を買うかだ。悩みに悩んだ。1時間以上かけて会場をグルグル周り、「1枚」を決めようとした。が決まらない。あれもいいし、これもある。最終的に自転車と木に止まる1羽の鳥になった。そこからまた30分かけて、ついに朝靄のなかに佇む1羽の鳥のイメージに決定した。清家さんがその写真にまつわるエピソードを話してくれた。悲しい出来事と不思議な縁が作らせた作品で「この写真を渡部君が買ってくれてうれしい」と言ってもらえた。これで僕は晴れて清家冨夫作品のオーナーになれた。それは自分にとっては清家さん自身を買ったことに等しい。作品到着は清家さんがイギリスに戻ってからの制作になるので、今年12月の受け渡しになる。僕のクリスマスプレゼントになるわけだ。