まずは“器”選び

朝 柿と大豆シリアルヨーグルト

昼 鰻重

夜 キャベツサラダ、じゃがいものガレット、マグロの玄米パスタ

 

この秋初めての鰻。3月に名古屋で「ひつまぶし」は食べたけど、素材は同じでも別の料理。肉じゃがとカレーくらい違うんじゃないか。とても美味かった。

今週も吉祥寺の「book obscra」へ。初めて写真集を作る人から相談を受けていて、まずはどんな本にしたいのかイメージが掴めるように、ということで写真集専門店へ連れてきた。

内容から形を決めるのが正しいような気がするけど、実はそれはかなりの経験がいる。最初は器を決めてしまうのがいい。内容より形式優先。どこで、誰に見せるかで器の大きさや分量が変わってくる。

冬青で作る本は書店流通を軸としているので、デザインにも制限がある。返本などで何度も書店と冬青を往復するので、擦れたりしても大丈夫なように本を包むようにカバーをつける。

書店流通を考えずネットや手売りをするなら、本が痛む心配がないのでデザインの自由度は格段に増える。「book obscra」でパッと目についたのが熊谷直子、草野優、熊谷聖司のもの。手に取りやすいデザインをしている。その他にも川内倫子「Illuminance」の再販版や、トッド・ハイド、髙橋恭司の新作などが目についた。結局僕が2冊、連れが5冊写真集を購入。このお店に来るとストッパーが外れる(笑) 

井の頭公園のカフェで、買ってきた写真集を早速開き、今度作る写真集の形を相談。どこで売って、誰に買ってもらうか。まずはそこから。

 

<2010年9月18日の日記から>

清家さんがデジタルで作品を撮っていると聞いた。以前お会いしたときにはRD-1sで撮っていると言っていたが、最近ではシグマのDP-2で撮っているらしいと噂になっていた。

今回の展示はデジタル撮影デジタル出力の作品だ。

トミオ・セイケ写真展「Untitled」

目黒駅からバスに乗りブリッツギャラリーに向かう。会場には清家さんの姿が。挨拶もそこそこに写真を見始めた。1枚目を見たときに「なんだ、銀塩も展示してるんじゃないか」と本気で思った。数枚見た時点でタラりと冷や汗が出てきた。銀塩だと思っていたものは全てデジタル作品だった。

グルグルと何周もしてしまう。僕が1990年初頭に見た「water scape」のエクタルアプリントのトーンそのままの世界が出ている。むしろこちらのほうがいいかもしれない。

大壁に同じモチーフが2枚づつ縦に並んでいる。一方がデジタルからプラチナプリントをおこしたもので、一方がインクジェットだ。双方には、確かに違いはある。でもその差は好みと言って構わない。

前回のブリッツでの展示は旧作「ZOE」のネガからスキャンし、インクジェットプリントされたものだった。通常40万円近くして手が届かない清家さんの作品が6万3千円で購入できる。清家作品を手に入れるチャンスではあったが、「オリジナル」が銀塩で存在する以上、どうしてもコピーの印象を持ってしまい最終決断にはいたらなかった。

今回はデジタルからインクジェット。プリント作業はすべて清家さんの手によって行われている。自分の中で整合性はとれた。後は何を買うかだ。悩みに悩んだ。1時間以上かけて会場をグルグル周り、「1枚」を決めようとした。が決まらない。あれもいいし、これもある。最終的に自転車と木に止まる1羽の鳥とになった。そこからまた30分かけて、ついに朝靄のなかに佇む1羽の鳥のイメージに決定した。

清家さんがその写真にまつわるエピソードを話してくれた。悲しい出来事と不思議な縁が作らせた作品で「この写真を渡部君が買ってくれてうれしい」と言ってもらえた。

これで僕は晴れて清家冨夫作品のオーナーになれた。それは自分にとっては清家さん自身を買ったことに等しい。

作品到着は清家さんがイギリスに戻ってからの制作になるので、今年12月の受け渡しになる。僕のクリスマスプレゼントになるわけだ。