本づくり

朝 大豆シリアルヨーグルト

昼 豚丼

夜 土鍋のさんまご飯、カツオのソテー、ジャガイモのクミン炒め、野菜の白だし、山芋のお汁

最近写真集を作る手伝いをしていて今日も打ち合わせだった。

いろいろな写真集を広げながら、作りたい本のイメージに近いものを探していく。その中でも熊谷聖司の「眼の歓びの為に 」がサイズ、装丁、内容ともに素晴らしい。この写真集、なんと作家名が入っていない。

「眼の歓びの為に

  指の悦びの為に

この大いなる歓喜の為に

     わたしは尽す」

たくさん写真集を作ってきたものだけが言える言葉だな。僕はいつも「役に立たない写真集がいい」」という言い方をしてきたけれど、つまり「眼の喜びの為」のものということ。

L版にプリントされた写真をテーブルに並べて行く。この作業はいつやっても面白い。並び方と組合せでどんどん世界が変わってくる。そして流れができてきたところでそれを壊す。そしてまた作り直す。目指すはどのページから見ても大丈夫なもの。

作業を続けて行くうちに自分の本も作りたくなってくる。来年2月の松本の本を作ったら、次は「自分の本を作る」と、宣言しておく。

 

<2016年10月5日の日記から>

「demain」入稿完了。

写真集デザイン打ち合わせと、印刷入稿作業。

1時半に冬青に行って高橋社長と、2時からはデザイナーを交えて打ち合わせ開始。初めてのデザイナーの方で、ご挨拶もそこそこにダミーブックを見せてイメージを伝える。とはいえ、そのままでは商業的に成立することは考えられないので、どうやって現実に落とし込むか話し合う。冬青の本は全国書店流通が大前提。すると色々な制約が生まれてくる。基本的に冬青の本はハードカバー。本体をカバーで包む方式だ。これは書店と出版倉庫を何往復もするので、表面が汚れたらカバーだけ付け替えるようにするためだ。だからクロス装丁のようなデザイン性の高いものはNG。流通時に汚れたり角が折れたら廃棄になってしまうからだ。書店流通には本の裏面にISBNというバーコードも必要で、これもデザイン性を大きく損ねる原因になる。

しかし今回は前作と違って本のデザイン性がとても重要になる。デザインを優先すると流通はできない。手売りになる。流通を取るか、デザインを取るか。

「300部だけ特装版はできないだろうか。300冊なら多少高くても手売りで売れるはず」

高橋社長は渋い顔をしたまま一言「コスト的に無理です」。

もっともな話だ。300冊だけ特装版を作ろうとするとコストは単純に倍になるのだから。しかしそこで引き下がるわけにもいかない。デザインの必要性、これまでの実績からの販売の見通し、そして最後はプレゼンというより情に訴える。

「いいでしょう、わかりました。特装版の見積もりはとってみます。これで冬青が潰れたら渡部さんのせいですからね」

思わず最敬礼。

特装版で一番大事なのは表面の材質。クロスや合皮の見本帳からダミーブックのイメージに合うものを探す。しかし中々見つからない。

見本帳を見ているうちに閃いた。そのアイディアを話すと、そこにいた全員が呆れ顔。デザイナーさんは「そんな、、、いいんですか」。印刷所の方々は「できないことはないですが聞いたことがない」。皆でいろいろなアイディアは出たが、結局その方法を試してみることになった。果たしてどうなるのか。

そのあとは、印刷入稿のための会議になったのだが、これまた今までとは違う方法を取るため印刷に3日かけることになった。写真の量自体は46枚だから通常より少ないくらいだ。でも印刷所泣かせのことを行う。印刷ディレクターの方は「できるかどうか現場に確認取らないと」と不安顔。

4時間かけて打ち合わせが終了。入稿作業が終わったら一安心と思っていたが、反対に心配ごとが増えた。出来上がりがまったく予想できない。こんなの初めてだ。うまくいくのかどうか、現時点でさっぱりわからない。イメージは伝えた。後はデザイン、印刷のプロ集団におまかせするしかない。