カントのローライフレックス

朝 イカとズッキーニの玄米パスタ

おやつ 乾燥豆にアイスクリーム

夜 豚ルーロウ、豆カレーごはん、野菜のオイル焼き、ゆで卵

 

僕の美術史講座では「哲学」の回がある。

その中でカントの「認識と対象におけるコペルニクス的転回」というものがある。「なんか聞いたことあるなあ」と思った人もいるはず。

これってどういうことかというと「事物が先にあって認識される」と当たり前に思っていたけど、カントは「違うよ、認識が先にあって事物が存在するんだよ」と言い出したのだ。

リンゴが机の上にあって「あ、リンゴがある」の順番じゃなくて、「先にリンゴという認識がなければリンゴは存在しない」というもの。

これを知ったとき「え、どういうこと」って思ったのだが、思い当たる節があった。

 

以前、僕のワークショップに参加したある女性の話だ。写真を本格的にやるのは初めてで、みんなで撮影をしたり、暗室作業を楽しんでいた。回が進むにつれ、他の参加者が持っているハッセルや、ライカ、特にローライフレックスに憧れたようで「私もローライが欲しい」と言うようになった。「程度がいいと20万円くらいするよ」というと「そんな高いカメラなんだ」と驚いていた。

その彼女が翌週の撮影実習に、ローライフレックスとハッセルを持ってきたので驚いた。「ふたつも買ったの?」と聞くと首を大きく振って「家の中にあったの」」と言う。

彼女は結婚していて専業主婦だった。いつものようにリビングを掃除していたらガラスケースの中にローライやハッセルやライカが所狭しと並んでいたのだそうだ。何年もそこを掃除していたのに、その存在にまったく気が付かなかった。そこにカメラが存在すること自体気が付いていなかったそうだ。

それが、僕のワークショップに参加して、「ローライフレックス」という認識が生まれたことで、目の前の存在に気がついたというわけ。認識が存在を生むというのはそういうこと。

 

カントの「認識におけるコペルニクス的転回」は結構身近にあった(笑)