真夏の豚シャブ。

冬青社の社長に付いて写真集印刷の「立会い」に参加させてもらった。

今回は9月に出版される2冊組みのモノクロ写真集の印刷だった。今から40年近く前に撮られた八重山と、新しく撮り下ろされた八重山のものだ。

志村坂上凸版印刷工場の一室で試し刷りが上がるのを待つ。1枚のシートに6ページ分が印刷されて出てくる。それに対し1カットごとに調整の指示を出していく。

今回のモノクロ印刷は、2色刷りといって黒とグレーの版を使う。2台の印刷機の間を紙が通ることで黒とグレーが別々に印刷される。黒1色の印刷よりも中間のグレーのトーンが出しやすく、グレーの色を変えることでウォームトンにもクールトーンにもできる。冬青ではインクをブレンドして特別色を作っているとのことだった。

それぞれの台は、インクの出る場所を横におよそ20分割されており、その分割された筋ごとにインク量を変化させることができる。

そのため画面上部の空の部分のところのトーンだけ暗めにしたり、顔の部分を明るくしたりすることも可能だ。

高橋社長の指示を見ていると、赤ペンでこの筋は黒インクを−1、グレーインクを+3、というように具体的な数字を書き込んで印刷工の人に説明していた。オペレーターの人はそれに従いダイアルを操作するわけだ。

「もうちょっと明るく」とか「気持ち暗く」といった曖昧な表現は一度もでてこない。指示に従って印刷されたものが30分ほどで仕上がり、それを再度チェックして本番OKを出していく。その場合社長がひとりでOKを出さず、必ず作家の意見を聞いていく。そこで双方納得ができたら作家がOKのサインを入れていく。

それにしてもこんなに印刷で変わるのかと思うくらい劇的に変化する。まるでモノクロプリントを作るのと同じ感覚なのだ。

それにはあらかじめ製版の段階での版作りが大事だというから、これまたプリントのネガ作りと同じ。

全てのカットに指示を出し、OKするまで本番のプリントは行わない。以前僕が写真集を作った時は、3割ほどの難しそうなカットだけ立会いをして後はおまかせだった。

9時から始まった印刷立会いは順調に進み午後5時に終了。明日はもう片面を印刷するということだった。

次に写真集を出すならカラーだと思っていたが、今回の立会い経験で「モノクロをやってみたい」と心変わりしてしまった。