朝5時半集合で夜の8時まで撮りっぱなし。久しぶりの32ギガ。

月曜日、久しぶりの京都だった。

京都に住む写真家荻野NAO之に案内してもらいながら京都の町を歩いた。

彼の舞妓さんを撮った写真集「小桃」は数カ国で出版されている。彼がよく撮影している宮川町で、舞妓さんの挨拶回りについていくことができた。

一段落して次の場所に向かおうとしたら、通りの向こうから僕らめがけて外人がやってくる。隣の通訳の女性が「彼はスペインのカメラマンなんだけど、もし良かったらお茶屋さん遊びのモデルになってもらえないだろうか?」

荻野君がスペイン語が堪能(というよりメキシコ育ち)なので彼から事情を直接聞くと「お茶屋さんで舞妓さんと芸妓さん二人を撮影するんだが、お客さん役がどうしても見つからなくて困っている。僕はフリーカメラマンで撮った写真はスペインの新聞に出す予定だ」

こう言われてしまっては断れない。僕らもフリーのカメラマンだ、協力するよ、ということになった。

撮影とはいえ初めてのお茶屋さん遊びだ。ビールをついでもらい、おもいがけず昼酒となった。

汗を吹き出しながら撮影するカメラマンを横目に舞妓さんとゲームをしたりとこちらはかなりリラックスモードだった。

わずか45分のお茶屋さんだったがエッセンスは味わうことができた。いつかスペインの新聞には僕が鼻の下を伸ばして遊んでいる姿が出ることだろう。

一泊したいところだったが残念ながら日帰り。荻野君と話をしているとカウンセリングを受けているような気持ちになる。いつもと違って頭の端っこの方まで総動員して話しているのを感じる。これが楽しい。

タイトなスケジュールだったが帰りの新幹線ではすっきりした気持ちになっていた。

翌日から二日間は写真集「da.gasita」の印刷立会いだった。凸版印刷志村坂上工場で朝9時から一日中校正室にこもる。

まず色校を元に印刷所のオペレーターさんが本番用に調整して摺り出す。それを校正室に運んできてもらってチェックする。

渡部さんどうですか?と聞かれても「ちょっと黒いかな」くらいのことしか言えない。それもごくわずかな差で、そのままでも一向にかまわないほどだ。

そこからは冬青社の高橋社長の出番だ。一つ一つ、全ての写真に細かく指示を入れていく。指示は全て数字。「もう少し~」というのは一切ない。モノクロ写真の印刷だからグレーと黒のインクの量が全てだ。

とにかく一切の妥協がない。そして指示出し後の印刷は、あきらかに前のものより良くなっている。わずかな差ではなくて一目で分かるほどだ。

毎回思うが印刷所での高橋社長はカッコいい。「プロフェッショナルの流儀」を見ているようだ。

最後の最後、カバー印刷のテストが上がってきた時は立ち会った全員が「おお!」と声が上がった。難しいとされてから色がきれいに出ていた。


一度でOKを出すことは絶対にないと言っていた社長の一発OKが出た。ちょっと感動的なフィナーレ。外に出ると真っ赤な夕焼けだった。

目に染みる。

納品は2週間後、9月12日あたり。発売は10月から。皆さんよろしくお願いします。