印刷立会いの時のお昼はゲンを担いでいつも鍋焼きうどん。

写真集『demain』印刷のため凸版印刷志村坂上工場へ。『da.gasita』『prana』もここで刷ってもらった。

10時から控え室に入り、刷り出しを待つ。ひとつの版には6枚づつ写真が面つけされていて、それを版ごとに調整をかけながら印刷していく。初日は用紙の片面だけ印刷し、翌日裏返して反対面を刷る。

最初の版の刷り出しが上がってきた。高橋社長の表情が険しい。僕のリクエストで印刷が難しい紙を選んでしまったためだ。色校正に書き込まれた指示書を見ながら黒やグレーのレベルを細かくチェックしていく。

ここまでくると僕が何か意見をいうことはほとんどない。高橋社長は画面全体を数分割し指示を書き込んでいく。グレーがプラス2、黒がプラス1という具合だ。

その指示に沿って再度印刷してもらう。10分後、上がってきた印刷紙を最初のものと比べるとまったく違うものになっている。ベタっとしていた中間調が分離して立体感を感じさせる。いつも思うが、印刷所の社長はいつもの社長とちょっと違う。

作者である僕がOKのサインを入れて本番印刷。

その後も版を変えて刷り出し、調整、本番がテンポよく続く。再調整ということはまったくなかった。凸版印刷ADの杉山さんがマット系で印刷が難しい用紙に合わせて、製版を細かく作り込んでいるということだった。製版は写真のプリントで言うところのネガだ。ネガ良ければプリントは楽しいし、ネガがダメならどうしようもない。

製版がいいから印刷が難しいとされていた用紙にもかかわらず、シャドーからハイライトまで滑らかに出ている。特に中間調からハイライトへは盛り上がっているように見えて官能的ですらある。。

ついにはこの用紙を使うことに反対していた杉山さんまでが「だんだんこの紙がよく見えてきた。モノクロに合うかも知れない」。

2日目最後の版では、ついに調整無しの一発OK。今まで何度も印刷立会いをしていて高橋社長が一発でOKを出したのはこれが初めてだ。

まだ日がある16時過ぎに凸版印刷を出ることができた。よもやこんなに早く終わるとは思ってもいなかった。

今回の写真集の「印刷」は、これまでのものとはまったく違う。他のどの写真集とも違うものになるはずだ。

製本が上がるのが三週間後、その一週間後に特装版ができあがる。あの印刷がどんな形に仕上がってくるのか。

「新しい写真集出来たよ見て見て」である。