モンゴル5

7人の他は現地ガイドとしてサラン・トヤさん「月の光」という名前だ。ドキュメンタリー映画作家でもある聡明な女性だ。それと2台の車にドライバーがふたり。ひとりは退役軍人ドライバーという頼もしい人だ。モンゴルでドライバーをするということは、道と車の全てを知っているということだ。

状況が状況だけに、車が壊れたりしたら即、遭難になりかねない。道も平坦ではない。舗装してあったとしても穴だらけだ。ましてオフロードにうっすら筋道がついてあるだけ。車が通ったところが道になるという感じだ。後に乗っていても、手すりをつかんでいなければ体がねじれてしまう。うっかり居眠りしようものなら首がガクッと後ろに持っていかれてしまいむち打ち症を起こす。ドライバーは一瞬も気を抜くことも出来ない。実際、タイヤのバーストが1回、パンクが1回おこった。そんな道を長い時は13時間以上も走り通す。

彼らは人間GPSでもある。毎回、なぜ地図も見ず的確に草原の目的地につけるのか不思議でしょうがなかった。そもそも牧民のゲルに住所などついていないのだ、途中何度かゲルに立ち寄って道を聞くのだが、聞く方も聞く方なら教えるほうも教えるほうだ。木すら一本も立っていない、目印のまったくない場所でいったいどうやって教えるんだ?なんでも牧民は真っ暗闇の中でもちゃんとゲルに帰ることができるそうだ。

モンゴルには北京からロシアに抜ける国際鉄道が通っている。しかし国内を繋ぐ鉄道はない。鉄道がない国でも路線バスが走っているものだがそれもない。モンゴルにおいてツーリストに移動の手段が用意されていない。

なんとか車を用意できたとしてもウランバートルを離れたら英語はまったく通じない。地方でホテルを見つけるのは至難の技だ。まして暖かいシャワーを期待してはいけない。貧弱なスプリングのベッドが置いてあるドミトリーのようなものだ。1泊100円というところもたくさんある。

僕らが泊まった宿のなかには、「ツーリストゲル」と呼ばれるゲルを利用したキャンプ村があった。ゲルの中は清潔で風通しもよくホッとできる。3人から4人が泊まれるようにベッドが置いてある。1泊10ドルから15ドル。そんなところが各地にある。