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変わってきていると感じるのは天候だけではなく、人々の暮らしにもある。驚いたのがモンゴル料理の味が濃くなってきていたことだ。

過去2回は羊を塩で茹でただけの料理が続き、食堂でも醤油に助けられたが、今回はほとんど使う機会がなかった。味が調味料の味になっている。今までの羊の味だけではなくなってきた。

以前、牧民の家で料理を作ってもらい一緒に食べて時に我々が使っていた醤油を差し出してみたことがある。彼らは「おいしい」と言ってくれたが「あげようか」というとすぐさま「いらない」と返事が返ってきた。その時は彼らには彼らの味があるんだなと思ったものだった。

ところが今回牧民の家の棚には韓国製や中国製の調味料がずらりと並んでいた。塩と少量のハーブだけの味付けが変わってきている。別れる際に「使わない調味料があるならくれないか」と彼らから言ってきた。その変化は首都ウランバートルでは顕著で、以前の埃っぽいさびれたロシアの古びた町という印象はかけらもなく、デパートにはブランドものが溢れ、東京にあるようなレストランがならんでいた。

そして走っている車がポンコツではなくなった。旧共産圏で作られたような車はあとかたも消え、新車同様の日本製の四駆が通りを走っている。今回ホテルから空港まで使った車は内装がなんと革張りだった。

反面、ウランバートルの周辺の以前は草原だったはずのところにはバラックのような建物が大量に増えている。遊牧を捨てざるを得ない人が集まり住んでいるのだ。彼らにはお金もないし職もない。犯罪率だけがあがっていく。

3度目のモンゴルは旅自体はとても楽しかった。しかし常にひっかかりが残ったのも事実。異邦人の感傷だけではすまされない何かがモンゴルを通して見えた気がした。