モンゴル8

草原にうっすらと筋がついているとそれが道になる。けもの道のようなものだ。一見滑らかに見える草原でも、車を走らせると明らかに「OffRord」だ。

車内の手すりをしっかりホールドしていないと、体が妙な方向によじれる。無用心なイネムリは危険だ。ムチウチになる。

5分間だけなら遊園地の楽しいアトラクションだが、5時間続くと修行になる。でも人間修業を続けると悟りを得ることができる。「まあ、人生そんなもんだ」と。

草原にポツンとあるゲルの前で車が止まった。「ここで馬乳酒を飲ませてもらいます」隊長の海野氏とガイドのサラン・トヤーさんがゲルに案内してくれた。

当初「渡部さとると行く自己責任モンゴルツアー」などと言っていたのだが、実際には海野氏が隊長となり、我々はそれについて行くという恰好になった。

もっとも彼に言わせると「行きあたりばったり、完全ノープラン、何が起こるかわからない、モンゴルのいいところ悪いところ全て体験ツアー」ということだった。

初めて牧民のゲルに入らせてもらう。入り口近くにストーブがあり、ベッドが3台ゲルに沿うように並べてある。入口正面が家長の場所で、向かって右が妻の場所。そこは簡易台所にもなる。

日中外の気温は35℃はあるだろうが、乾燥していて湿度がないため日差しさえ遮れれば涼しく感じる。ゲルの中はちょっとひんやりとしていた。

「よくこんな場所に知り合いがいたね」と隊長海野に聞くと「いや、全然知らない牧民」

知り合いの牧民でも、予約していたわけでもなく、突然見ず知らずの旅行者の一団がぞろぞろと家に上がりこんで、もてなしを受けているのだ。

今回の旅では2泊、牧民のゲルに泊まらせてもらったのだが、いずれもそんな感じなのだ。1泊目は遺跡で休憩していると2人の牧民が馬でやってきた。「あさってこの辺に戻ってくるから泊めてくれない?」「いいよ」という極めて簡単な交渉で宿泊成立。