コラムvol84「デジカメと露出計」

撮影していると「この頃露出計ってつかってないよねえ?前はいつもカチカチ測ってたのに」と編集者が言う。首から下げたデジカメD60が露出計代わりになって久しい

「うーん、ロケはね。スタジオじゃつかうよ」とは言ったものの、スタジオ撮影でもデジカメが露出計代わり。「もうちょっと(ストロボの出力)アゲ」とか「気持ち(ストロボの角度を)フリ」などとデジカメのモニターを見ながら指示を出している。こんなカメラマンは珍しいらしく、スタジオマンもアシTに「ボスはメーター使わないの?」と聞いてきたくらいだ。

露出計をカチカチさせて光を測るのがカメラマンのカメラマンたるアイデンティテイ。光の質を読みきってメーターの角度や補正を決めるのは一種の職人芸だ。特に大型ストロボでの撮影は、カメラの内蔵露出計が使えない。単独の露出計は必需品となる。

単独露出計で測ってポラロイドを切って確認というスタイルは崩しようがないと思っていた。しかしポラロイドは撮影して3分、現像を待たなくてはならない。あせって早くめくってしまうと色や露出が不安定になるし、時間を守ったとしても元の露出が悪ければもう一度撮り直さなければならない。そのたびに3分待つのはつらい。人物撮影の場合、この時間は果てしなく長く感じる。

デジカメは違う。撮ったら瞬時に結果が出る。ヒストグラムで白飛びや黒のつぶれが判断できる。写りこみも画像のアップではっきり分かる。おまけにここが大事なのだがD60の露出の出方はフィルムの出方とほぼ一緒なのだ。D60 の背面モニターで見たままの絞りとシャッタースピードを本番カメラに入力してやればいい。それで完璧な露出が得られる。

ライティングも一々ポラロイドで確認することがないからセットを作るのが格段に早くなった。今までやらなかったようなライテイングにも挑戦できる。ポラロイドバックがつかなかったり、露出計が内蔵されていなくて敬遠していたカメラも、デジカメで露出が確認できるから断然使いやすくなる。デジカメのポラ代わりはいいこと尽くめだ。

D60だけではなくてコンパクトデジカメでも3万円以上の機種ならシャッターボタンを半押しすると絞り値とシャッタースピードが出る。なにも設定していなければ感度はISO200相当。結構信用しても大丈夫だ。

「デジタルなんて」と言っていたわりにはデジカメなしでの撮影はもう考えられなくなってしまった。