アワガミファクトリーのインクジェット用紙を数種類試している

朝=チーズトースト/昼=粗食、コーンと枝豆のサラダ/夜=テイクアウトのお寿司、サッポロ一番味噌ラーメン半分

江古田にあったプアハウスをよく知っている先輩がやってきたので、お昼に「粗食」を出す。プアハウス定番のメニューだったので、懐かしがってもらえた。「粗食」を言葉で説明するのは難しい、「カレーで煮込んだ肉が入った洋風茶漬け」なのだが。そう書くと全然おいしそうな感じがしない。僕は学生時代から40年近く何千食も食べてきた。

今日は特に仕事もないので部屋でデジタルモノクロプリントの続き。なんとなくいい感じになってしまって、ちょっと戸惑う。フィルムと印画紙だと、9割はボツになるのに、デジタルだと9割OKになってしまう。基準が掴めない。合間合間にハッセルブラッド原宿から借りているX2Dを触る。レンズを付け替えたり、X1D2と比べてみたり。X2Dはいいカメラだ。そんなことして部屋の中で遊んでいたら、妻に「わかってるでしょうね」と釘を刺された。

 

<2013年9月13日の日記から>

朝、テレビをつけたら「写真甲子園」の番組をやっていた。本来は北海道東川町で行われるのだが、今年は課題を地元で撮影し、リモート審査を受けるものになっていた。写真に順位をつけるのって難しい。1位と2位の差がどこにあるかなんて明確な答えはない。体操とかフィギュアスケートのように、見た印象を技術点として割り出すこともできないし、そもそも技術が高いから良い写真とは限らない。ロバート・フランクのプリントはゴミだらけだったりする。高校生相手だけに「写真甲子園」の審査員も大変だろうな。今年の優勝校は沖縄工業高校だった。最終的に提出された6枚の写真はロング、ミドル、アップ、広角、標準、望遠を使い分けて沖縄の生活をとっていた。わずか数日で撮られたとは思えないバリエーション豊かなものだった。まるでユージンスミスのフォトエッセイのようだ。確かに僕が審査員でも間違いなく推すだろう。しかしこの方法論は、1960年代の雑誌掲載を前提としたもの。60年も前の「良い写真」の形だ。コンテストにはレギュレーションがあるから、上位入賞のためのテクニックというものは存在する。ツボは間違いなくある。番組で追いかけていた女子学生が最後に「そういうものから離れた写真をこれから撮っていく」と語っていた。なんだ心配しなくてもちゃんとわかっているんだな。

 

<2013年9月13日の日記から>

トークショーでは、観客の一人をプロジェクターの反射光を使ってポートレート撮影をするサプライズもあった。アレック・ソス。ちょっと変わった名前の写真家が今世界で注目を浴びている。最年少でマグナムの正会員になって、出す写真集はあっという間に売り切れ、無表情の全身ポートレートと、風景とを組み合わせたソススタイルは、ここ数年写真のスタンダードになっているところがある。その彼が来日して、様々なイベントを行うというので、昨日スライド&トークショーに行ってきた。彼はレビューサンタフェでアワードを獲り、その後大きく活躍したとあって、向こうでも話題に上ることが多かった。僕はサンタフェに行った時、お土産代わりに現地の写真集専門の書店「Photo eye」でソスの写真集を2冊買って帰った。1冊は、いわゆるソススタイルになる前のモノクロスナップのストレートな写真だ。これがなかなか面白い。ちょっとナイーブというか、ガンガン攻める写真ではない。経歴としては最初、建築や彫刻を専攻していて、後に大学の授業がきっかけで写真を始めている。意外とも思えたのがロバートフランクに大きな影響を受けていると言っていたことだ。トークショーの中で記憶に残ったのは、

「移動が大事。物理的な場所の移動も、写真の中の視線の流れも」「アメリカを撮る。しかし海外にも行く」「写真の並べ方には自分だけのルールがある。並べられた1枚目と2枚目には隠された共通点が潜んでいるが、あえて説明はしない」「最初はポートレートを撮るのが苦手でガールフレンドしか撮れなかった。訓練としてまず子供を撮り始めて、その後はあんまり怖そうじゃない人を選んで撮影していた」「本にするのが好き。出版社の社長でもある」「(ソスと言えば8X10のカメラを使うことで有名という前提で)今回は8X10のカメラを持ってきたのか? という質問に対し、僕が8X10のカメラで撮ったシリーズは2つだけ。プロジェクトに合わせてカメラは変えていく。今回はデジタルカメラ(会場に持ってきていたのはハッセルのHシリーズだった)だし、先月旅行に行ったときはディスポーザルカメラ(使い捨てカメラ)だった」「プロジェクトありきで写真を撮る。大きなものだけでなく小さなプロジェクトもたくさん行う」「写真の制作を行うにはまずは訓練が必要で、全てをコントロールできるようになったら肩の力を抜いて撮る。”マッスルメモリー”を身に付けるには、およそ10年が必要と言われているが自分もそうだった」「卓球が大好き。日本でも卓球大会をやるから皆来てね。大きなトロフィーも用意したから」

今世界でもっとも注目度が高い写真家のトークショーということで、どんな難しい話になるかと思ったら、普段自分が考えていることと似ていて驚いてしまった。しかも卓球好き。写真の質問じゃなくて卓球の質問したほうが喜んだに違いない。ソスはとてもフレンドリーらしく、ショーが終わっても丁寧に質問に答えていた。