写真に順位をつけること

朝 牡蠣の燻製とトウモロコシのモロヘイヤ玄米パスタ

夜 みそラーメン、野菜炒め

 

朝、テレビをつけたら「写真甲子園」の番組をやっていた。

本来は北海道東川町で行われるのだが、今年は課題を地元で撮影し、リモート審査を受けるものになっていた。

写真に順位をつけるのって難しい。1位と2位の差がどこにあるかなんて明確な答えはない。体操とかフィギュアスケートのように、見た印象を技術点として割り出すこともできないし、そもそも技術が高いから良い写真とは限らない。ロバート・フランクのプリントはゴミだらけだったりする。

高校生相手だけに「写真甲子園」の審査員も大変だろうな。

今年の優勝校は沖縄工業高校だった。最終的に提出された6枚の写真はロング、ミドル、アップ、広角、標準、望遠を使い分けて沖縄の生活をとっていた。わずか数日で撮られたとは思えないバリエーション豊かなものだった。まるでユージンスミスのフォトエッセイのようだ。確かに僕が審査員でも間違いなく推すだろう。

しかしこの方法論は、1960年代の雑誌掲載を前提としたもの。60年も前の「良い写真」の形だ。

コンテストにはレギュレーションがあるから、上位入賞のためのテクニックというものは存在する。ツボは間違いなくある。

番組で追いかけていた女子学生が最後に「そういうものから離れた写真をこれから撮っていく」と語っていた。なんだ心配しなくてもちゃんとわかっているんだな。

 

<2013年9月13日の日記から>

トークショーでは、観客の一人をプロジェクターの反射光を使ってポートレート撮影をするサプライズもあった

 

アレック・ソス。

ちょっと変わった名前の写真家が今世界で注目を浴びている。

最年少でマグナムの正会員になって、出す写真集はあっという間に売り切れ、無表情の全身ポートレートと、風景とを組み合わせたソススタイルは、ここ数年写真のスタンダードになっているところがある。

その彼が来日して、様々なイベントを行うというので、昨日スライド&トークショーに行ってきた。

彼はレビューサンタフェでアワードを獲り、その後大きく活躍したとあって、向こうでも話題に上ることが多かった。僕はサンタフェに行った時、お土産代わりに現地の写真集専門の書店「Photo eye」でソスの写真集を2冊買って帰った。

1冊は、いわゆるソススタイルになる前のモノクロスナップのストレートな写真だ。これがなかなか面白い。ちょっとナイーブというか、ガンガン攻める写真ではない。

経歴としては最初、建築や彫刻を専攻していて、後に大学の授業がきっかけで写真を始めている。意外とも思えたのがロバートフランクに大きな影響を受けていると言っていたことだ。

トークショーの中で記憶に残ったのは、

「移動が大事。物理的な場所の移動も、写真の中の視線の流れも」

「アメリカを撮る。しかし海外にも行く」

「写真の並べ方には自分だけのルールがある。並べられた1枚目と2枚目には隠された共通点が潜んでいるが、あえて説明はしない」

「最初はポートレートを撮るのが苦手でガールフレンドしか撮れなかった。訓練としてまず子供を撮り始めて、その後はあんまり怖そうじゃない人を選んで撮影していた」

「本にするのが好き。出版社の社長でもある」

「(ソスと言えば8X10のカメラを使うことで有名という前提で)今回は8X10のカメラを持ってきたのか? という質問に対し、僕が8X10のカメラで撮ったシリーズは2つだけ。プロジェクトに合わせてカメラは変えていく。今回はデジタルカメラ(会場に持ってきていたのはハッセルのHシリーズだった)だし、先月旅行に行ったときはディスポーザルカメラ(使い捨てカメラ)だった」

「プロジェクトありきで写真を撮る。大きなものだけでなく小さなプロジェクトもたくさん行う」

「写真の制作を行うにはまずは訓練が必要で、全てをコントロールできるようになったら肩の力を抜いて撮る。”マッスルメモリー”を身に付けるには、およそ10年が必要と言われているが自分もそうだった」

「卓球が大好き。日本でも卓球大会をやるから皆来てね。大きなトロフィーも用意したから」

今世界でもっとも注目度が高い写真家のトークショーということで、どんな難しい話になるかと思ったら、普段自分が考えていることと似ていて驚いてしまった。しかも卓球好き。写真の質問じゃなくて卓球の質問したほうが喜んだに違いない。

ソスはとてもフレンドリーらしく、ショーが終わっても丁寧に質問に答えていた。