もう5月

朝=カリフラワーと香味野菜の玄米パスタ/夜=ドライカレー、ルッコラとリンゴとオリーブ等などのサラダ

「え、もう5月なの」という感じ。3月と4月はなにもしてなかったような。事務所部屋がどんどん快適になってきたせいで、外に出る気がしなくなったのもある。来る人が一様に驚くぐらい、部屋がスタジオになっている。配信のセッティングで遊んでいるだけで一日が終わってしまう。残念なのは一通り揃ってしまって、現時点では改善の余地が見つからないこと。何か足りないくらいのほうが人生に張りがあるというか。

5月は6日(金)から、中野のギャラリー冬青で写真展がある。月末までの3週間、ずっと会場にいます。そんな作家は世界中探しても珍しいはず。欧米だと、作家が会場にいることをギャラリー側が嫌がる。作家とそのギャラリーに付いているコレクターと親密になって欲しくないのだそうだ。ギャラリーを飛ばして営業されるのを防ぐためだと聞いた。ギャラリーと交わされる契約書の一文に、“作家が在廊できるのは2日だけ”というのもあるそうだ。ただしプレデーのパーティには絶対出なくてはならない。これは展示のお約束みたいなものだ。

今回の展示ではパーティは考えていないが、もしかすると、毎水曜日だけ、夜の9時まで開けてもらうかもしれない。これはここ数年、ずっと僕の展示のときにだけやってもらっている。仕事終わりに寄ってもらいたいからだ。海外のギャラリーだと週末は深夜までやっているところがけっこうあって、見る人はホッピングといって会場をはしごしながら見ていくことができる。5月は僕自身もいろいろ見たい展示があるけど、まずは自分の写真展に集中します。水曜日の件も含めてまたここで詳細をお知らせします。

 

<2019年5月1日の日記から>

新宿バスタ4Fから午前0時25分発のバスで新潟へ。早朝6時にバスが着くとスタバで時間をつぶし、8時40分に米沢行きの電車に乗る。この電車は米坂線と乗り入れている。先月も撮影に行ったのだが、再度春を撮りに乗り込んだ。これでほぼ材料は出揃ったが、梅雨の時期も撮りたくなってきた。書籍のほうも前書きと後書きを終えて、来週編集者に渡せば、あとは校正チェックくらい。ようやく手を離れる。昨年6月から始まっているから1年がたとうとしている。1年でようやく一冊。年に何冊も出している作家の頭はどうなっているんだろう。米沢市には上杉謙信の博物館がある。そこでは織田信長から謙信公に送られた「洛中洛外図屏風」をたまに見ることが出来る。国宝中の国宝と言っていいくらいのものだそうだ。米沢市の財政がいよいよ苦しくなったら売ったりできるんだろうか? 無理だよなあ。この屏風絵は、小さい頃から何度か見たことがあるのだが、「ふーん」くらいの感想しかなかった。ところが今回新たに見ると、面白さに気がついてしまった。この屏風絵には京都の市中と郊外の庶民の暮らしが細かいタッチで描かれている。シーンごとにドラマが描かれていて、四季折々の風景が見える構成になっているから見ていてあきない。そして画面の中に「陰影、画面の中心点、遠近感」が見事にない。これはいま執筆している本の中で何度も触れている現代アートのロジックだ。そして高解像度で情報量が多く、空が描かれていないのは現代風景写真と同じ。この屏風が制作されたのは1574年。千利休の「佗茶」が最新の現代アートにつながるという話も、僕が今回出す本の中で書いているが、「洛中洛外図屏風」もまた現代に通用する考え方で制作されている。そんなことに気がつけるだけで、見ることがより楽しめるようになった。