2Bと呼んでいる僕の事務所の冬はかなり辛い。階下がが冷凍倉庫のせいか底冷えがするのだ。
そのため冬にはテーブルを外し、簡易畳を引いてコタツを出す。11月に出して、4月にしまう。今年もその時期が来た。事務所にコタツがあるところって、かなり珍しいんじゃないだろうか。
コタツに入ると落ち着く。ということは生産性は極端に低くなるわけだ。
先週もいくつか写真展を見た。やっっぱりモノクロを見に行くことが多い。岡嶋和幸「彼方の森を泳ぐ」アイアイエーギャラリーや、染谷學「道の記Ⅱ」蒼穹舎など。他にも数件回った。
岡嶋さんは20代の頃に撮ったモスクワを改めて今年焼いたもの。もうひとつの会場(ブライトフォトサロン)では最新作のモノクロを展示している。
バラバラなフィルムを使って撮っているそうだが、そのズレた感じがとてもいい。まだ色んなバランスが整っていない時期にしかできない面白さは絶対ある。上手くなったらそれと引き換えに消えてしまうものだ。初期作品の面白さはそこにあると思う。
染谷さんは昨年展示したものと合わせて写真集「M ICHI NO KI」(蒼穹舎)を出していた。これは経験に裏付けされた、ほとんど到達点といっていいようなモノクロ作品だ。
彼の写真を見るのはとても楽しみなのだが、見ているうちに自分のプリントが情けなくなるのが難点だ。買った写真集も頭から見て行くのではなく、パッと開いてパッと見てすぐに閉じてしまう。でも気になってまた開いてしまう。
渋谷アップリンクでやっていたアレックス・ソス主演のドキュメンタリー映画を最終日に見に行った。会場で久しぶりに鬼海弘雄さんに会った。
ソス自身が監督をしているわけではなく、ソスを通してアメリカの辺境に住む人たちを描いたフランス人監督の作品だ。
エイトバイテンを担いでアメリカ人のポートレートや風景を撮るソス。誰もいないところに一人きりで住む人々。彼らを撮っているのだが、それはそのままソス自身に見える。1時間ほどの短い映画だが彼の写真を撮るスタンスが見えてくるものだった。
その後都築響一氏のトークショーがあり、ソスの解説ではなくアメリカ人とはどのようなメンタリティなのかを語ってくれた。7年間かけて全米50州をコーディネーターをつけずに一人で車で回った経験からくる話はとても面白かった。
アメリカ人にとって理想の住まいは周りに誰も住んでいないということなのだそうだ。だから辺境に一人で住むということが、即ドロップアウトとは限らないし、好んで住んでいるとも言えるのだ。
フランス人や日本人がその国のメンタリティでこの映画を観ると誤ってアメリカ人を捉えてしまう可能性が高いと。
都築さん曰く、アメリカ人は世界一フレンドリーな国。7年間一人で回って一度も怖い目にあったことはないそうだ。
人口が多くて、経済力が高く、土地が広い。たしかにその感覚は日本人には理解しがたいはずだ。