新宿エプサイトにもう一度上田義彦展を見に行く。2度目の方が気分的にゆっくり見ることができた。一緒に見に行った人に「せつない写真だ」と言ったら不思議な顔をされてしまった。
写っているものは幸せな家族の写真だが、じっとそれを見ていると、どういうわけか胸がせつなくなってくる。何度も会場を往復する。1度目より染み入るように写真が入り込んできた。
オリジナルモノクロプリントをスキャンしてインクジェットにプリントしている。「そうする意味はなんですか?」と聞かれても「エプソンのギャラリーだから」しか答えられないだろうな。オリジナルを見てみたと思ってしまう。
そのまま新宿ニコンサロン春日 広隆展[存在と時間]へ。日本カメラの編集長が「すごいモノクロプリントだよ」と言っていたので気になっていた。
アナログプリントではなくて、高品位デジタルプリントで制作されている。エイトバイテンのポジで撮ったカラー写真を、大型ドラムスキャナーでデータ化し、パソコン上でモノクロのグレースケールに変換。特殊インクを使ったプリンターで仕上げている。
エイトバイテンを使う理由は情報量を多く取り込むため。2000万画素のデジタルカメラでも物足りないと言っていた。どんなに目を近づけて見ても破綻はどこにも感じられない。1メートル幅の写真の一部をA4に切り取ったらそのまま作品として通じてしまうほどだ。デジタルを使う意味が十分感じられる写真展だ。
今月号の「日本カメラ」にデジタル写真について書いている。専門的な話しではなくて、2002年から試行錯誤しながら自分なりに理解してきたことを書いた。
デジタルを使っているけれど、いまひとつ使いこなせていない人の参考になれば。