鮪の中落ち、小鯵のから揚げ、のりたまふりかけ。

撮影の合間に東京都写真美術館でやっている「キヤノン写真新世紀展」へ。ワークショップの受講者だったOさんが入選してブックを展示しているのだ。

今回の写真新世紀では、荒木経惟森山大道飯沢耕太郎やなぎみわ、ケビン・ウェステン・バーグ、南條史生がそれぞれに優秀賞1点と入選5点を決め、優秀賞のなかから公開で最優秀賞を選び出す。今回選出された優秀賞5点(1点、二人の重複選出あり)は笑ってしまうくらいその選者が好きそうな写真だった。

その最優秀賞選出会場で、荒木氏が優秀賞の中のひとつの作品に対し、厳しい言葉で作品を否定したというのだ。その作品はチョコレートを熔かして削りだし、オブジェを作ったものを写真に撮っいる。作品イメージは、海底に眠る沈没船や飛行機であり、腐食が進んだ様子をチョコレートの溶け具合で表現している。

会場にはオブジェであるチョコレート細工と大きく伸ばされた写真が展示してあった。アクリルケースに鼻を近づけると箱の中のオブジェからは、かすかにチョコの匂いがした。

写真は美しかった。表現として十分なりたっていて荒木氏の怒りが理解できなかった。彼ガ言うにはオブジェを作った時点で表現は終了しているということだ。それをただ写真に撮っただけだと。

今道子という写真家がいる。魚や烏賊を使ったオブジェを作りそれを写真に撮っている。彼女は木村伊兵衛賞も受賞しているし写真家として世界的に認められている。その作品とチョコはどう違うのか?対象物を制作してしまうのが問題なのか?しかし写真家の多くは多かれ少なかれ対象物をコントロールしている。

「写真でアートなんかするな!」と荒木氏が叫んだらしい。そのチョコの作品を選出したのが森美術館副館長の南條史生氏だったというのが面白い。たしかに写真を使った現代芸術だと思えば納得がいく。