盛大なオープニングパーティでした。

神様が来た。

「2Bワークショップグループ展」に伝説の写真家中平卓馬が来てくれた。参加メンバーの同僚が中平卓馬と行動を供にすることが多く、連れて来てくれたのだ。

ワークショップのポートレート実習を新宿中央公園でやっていたら、グループ展会場から電話があった。「中平さんが来てます!」

まだ実習は半分くらいしか進んでいない。会いたかったがとても行ける状態ではない。「よろしく伝えてくれ」というのが精一杯だった。

しかし実習が終わる頃に「まだいます!」と再度連絡があった。「なんとしてでも後30分繋いでくれ、足をしばってもその場に繋ぎとめてくれ」そういうと新宿から神楽坂まで大急ぎで向かった。牛込神楽坂の駅からはワークショップの人達を置いてきぼりにする勢いで会場へと急いだ。

門の前で皆が手招きしている。息を弾ませて会場に入るとそこには伝説の写真家がチンマリ座っていた。「お越しいただいてありがとうございます。お会いできて光栄です」

中平さんが顔を上げ目があった。メディアで見た通りの恰好。後ろ前逆にキャップをかぶりシャツのポケットにはショートピースが見える。向かい合わせに座らせてもらう。

中平さんは僕の写真集を見てくれていた。丁寧にゆっくりとページをめくり時おり指で写真をなぞる仕草をする。3人の子供が寄り添った写真を見て「どうやって撮ったの?ポーズをつけたの?」海大トカゲの写真を見て目を丸くして「大きさはどのくらい?」ロンボク島の写真を見て「バリ?僕もインドネシアは好きだよ」

その説明をしているときに思った。もしかしてこの瞬間のために写真集を作り、ワークショップを開き、グループ展をやったのではないのだろうか。そのくらい至福の時間だった。

なにを一人の写真家に会っただけで大げさな、と思われる方もいるかもしれない。でもこう言い換えたら納得してもらえるだろう。ドサ周りを続けている演歌歌手が「美空ひばり」にあったようなものなのだ。

25年前、高校生だった僕に写真雑誌を通して写真を啓蒙してくれた写真家が中平卓馬なのだ。彼が目の前にいて僕の写真をみてくれている。

会場を去る中平さんを一同最敬礼で見送った。

後手をヒラヒラさせて中平卓馬は去っていった。