帰国しました。

金曜日の深夜にバンコクから羽田に着き、自宅に戻った頃には既には1時を回っていた。でも疲れはまったく感じない。アクシデント続きだったがそれも楽しかった。

12月のネパールは天候が安定している乾季で、常に青い空が見えると聞いていたのだが、朝になると濃霧が出てお昼くらいまであたりは真っ白。そのせいで飛行機が飛ばず、朝6時から飛行場にスタンバイしていたのに結局キャンセルになり、ジープで8時間、崖っぷちの道をテーマパークのアトラクションのように揺られながら降りるはめになったりした。

エベレストフライトも中止になったし、見えるはずの山々が見えなかったりと、天候には終始なやまされた。

今回の目的は、標高2900メートルにあるタカリ族の村のホテルから朝日に染まるダウラギリの大氷河を見ることにあった。しかしスケジュールの関係上、そこに泊まれるのはわずか一日。

ホテルに着いたときは霧が出ていて山々の姿は何も見えない。このままだと何をしに来たのかわからなくなってしまう。天気ばかりはいかんともしがたい。

東京を出てからすでに5日がたち、疲れも出てくるし、ネパール料理の脂っこさ(でも味はあんまりない)で胃も荒れてきている。富士山でいったら8合目の高さの村。高度障害が出てもおかしくない標高だ。深夜頭が痛くて目がさめた。胃が動いていないのが分かる。調子が悪くなる前兆だ。

薬を飲むために起きたのが午前4時。窓のカーテンを開けるとうっすらと山影が見える。試しにペンタックスのK-5を取り出して、感度を51200に設定してシャッターを切ってみた。すると肉眼よりはっきり山が見えるではないか。

5時過ぎに屋上に上がりニルギリ山のほうを見る。月はすでに隠れていたが、標高が高い山の頂には地球の裏側から月の光が当たっている。星が見えるほど暗いのに、山頂だけは淡く光っている。

K-5に魚眼ズームをつけて、感度を12800にセット。絞りは開放で、テラスの淵にカメラを置いて2秒間露光してみた。すると星と山頂に積もる雪がきれいに写った。なんとも言えない美しさだ。

空がだんだん白み始める。あたりの村の様子が分かりようになってきた瞬間、ニルギリの反対側に位置するダウラギリの山頂がダイヤモンドのように光った。

大自然に興味なんてなかったのだが、これを見たら素直に美しいと思えた。あたりは雲一つない青い空。氷河の先に光る山頂。気温はマイナス4度。寒さも忘れてしまうほどの景色だった。

痛かった頭はいつの間にかすっきりしている。出発までの数時間、パノラマに広がる山々をずっと見ていた。