ノスタル爺vol.3 湯峰温泉

誰が言ったか「ノスタル爺」。すでに第3弾である。

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大阪から熊野のほうへ出てみようと思った。先月エプサイトで見た大野さんが、熊野古道を撮っていたのを思い出したのだ。

朝7時にホテルを出て、特急「くろしお」で紀伊田辺まで出る。そこからバスで日本最古の温泉と言われている湯峰温泉へ行こうとした。

たいていバスは特急列車の到着に合わせているものだが、シーズンオフということで紀伊田辺で2時間も待つことになった。

小さな町だが港があり、昔栄えたような名残が見える。歩いていたら南方熊楠記念館という看板を見つけた。明治から昭和にかけての生物学(粘菌)における偉人天才だ。

彼を好きな友人が周りにいたので話だけは知っていた。ちょうど暇つぶしにいいかと入ってみる。当時の家がそのまま残してあった。来館者は自分だけ。東京は雪が降ると大騒ぎしているようだが紀伊はこの時期でも暖かい。雲の間から冬の日差しが差し込んでくる。

ローライを取り出して覗いていたら品のいい女性が声をかけてきた。彼女は庭になっていた果物をチョンチョンとハサミを入れて取り込んでいた。それは鮮やかな黄色の檸檬だった。

彼女と縁側で座り込んで熊楠の話を聞かせてもらった。お金持ちの商人の息子で生涯働かずに研究だけしていたこと、三人の一般人がスポンサーなって面倒をみていたこと、若い頃は一度読んだ本は丸暗記できて家に帰って書き写すことができたり、10カ国語を操る語学の天才であったことなど。

別れ際に檸檬を持った彼女を写真に撮らせてもらった。

バスに乗ると雲行きが怪しくなり、山の中に入るとポツポツと雨が降ってきた。1時間半バスに揺られてようやく湯峰温泉に着いた時にはもう2時を回っていた。

温泉は熊野古道の一部になっているのだが、この雨では歩く気もしない。宿は紀伊田辺の観光案内所で民宿を予約してあった。今日のお宿は一泊二食9600円税込。

峰温泉にある壺湯という小さな露天風呂は世界遺産らしい。入るのには750円かかるので、共同浴場へ。一般湯とクスリの湯というのがあって値段が100円違う。違いは何?と聞いたら「一般の湯は温泉と水道水が50:50、クスリの湯は源泉100パーセント。オススメはクスリの湯です」なるほど。

クスリの湯の熱さはは42.5度だった。ちょうどいい。30分くらい出たり入ったりしながら浸かっていた。

温泉街と聞いていたのだが、お店はどこもあいてないし、雑誌ひとつ買うところもない。かろうじて缶ビールと柿ピーを買って宿に戻る。

湯上りのビールは旨かったが夕食までやることがない。本を持ってくるのを忘れたのはいたい。wifiなんて飛んでいるわけもないから、布団を引いてゴロゴロしていた。

6時に夕食。変わっていたのは温泉で炊いたというご飯。ちょっと黄色くて不思議な食感。ゆっくり食べたつもりだが30分で終わった。

テレビを見てさっさと寝る。夜中に寒くて目が覚めてお風呂へ。静かすぎてちょっと怖い。

起きたら晴れていた。朝食は7時。しっかり食べ熊野古道歩きに備える。昨日見た壺湯から一山超えると熊野本宮大社へ抜けることができるそうだ。

リュックひとつの身軽な格好だから歩く気も出る。熊野古道は確かに道はついているのだが、ここの山越えは結構険しいところがある。

まだ山の中に日が差し込む前に出発してよかった。鬱蒼とした森の中は意外と音にあふれていた。だんだんと明るくなり山頂を越したところでお日様が出てきたら途端に暑くなった。

車なら10分のところを写真を撮りながら2時間近くかけて歩いて熊野本宮大社へ着いた。

朝日が本宮を照らして神々しい。イザナミ、アマテラス、スサノオの三神が祀ってある。ご利益高そうだ。

帰りは新宮へバスで1時間半、そこから名古屋まで3時間半、そして東京まで1時間45分。

1泊2日ノスタル爺の旅は来年も続く。