ウブドゥの街から車で15分、山の中に「ロイヤルピタマハ」はあった。大通りから入口を入るのだが、ホテル自体はそこから大分離れたところにあった。
レセプションに案内されると、その向こうには見渡す限りの大峡谷。緑の層が重なり合うように眼下の川まで下り、そこから盛り上がるように目の前に緑の壁がそびえている。青い空がわずかにその上に見える。
これまで見た中で最高のロケーションだ。ハワイ島のヒルトンもよかったがスケールが違う。
なぜ「ロイヤルピタマハ」だったかというと、昨年テレビ番組でそこが紹介されていて、その映像に妻が一目ぼれしたからなのだ。
昨今の円高もあって今なら4万円以下で泊ることができる。スンバワの3000円のホテルでwifiが使えたので思い切って予約することにした。この旅の最後は最高級のホテルで〆ることになる。
帰国便は翌日の深夜。普通なら12時にチェックアウトすると夜まで路頭に迷うことろだが、高級ホテルなら部屋をチェックアウトしてもホテルの設備はそのまま使わせてもらうことができる。レストランはもちろん、プールもシャワーもスパも着替えのための部屋も用意されていて自由に使うことができるのは好都合だ。
旅に出ると一泊300円の宿に泊ったり現地の家にお世話になることもあるが、アマンダリに泊ってからというもの、僕はどこに行ってもそこの高級ホテル(だいたい一泊350ドル以上が目安)に一泊してみることにしている。するとそこの国がサービスというものをどう捉えているか分かって面白い。モンゴルだって。ミャンマーだって、ネパールだって高級ホテルはあった。
実はロヤルピタマハのマネージャーは「ケイコさん」という日本人女性だ。系列の3つのホテルのマネージャーでもある。テレビ番組はケイコさんを特集したものだった。バリ好きなら一度は耳にしたことのある「伝説ケイコさん」に一度会ってみたくて時間をとってもらった。お会いしたケイコさんは品があるエレガントな女性だった。30年前からバリ人と結婚しウブドゥに住んでいるそうだ。
彼女のセンスがこのホテルを作り上げているわけだ。どこか日本的な感じがするのはそうせいだろう。
話の中で「実は僕らは23年前に新婚旅行でウブドゥに来ていて、今回はセカンドハネムーンなんです」と言ったらスパの無料券をサービスしてくれた。
友人が「ハネムーンだと言うとどこでもサービスがいいよ」というのを試したみたのだが効果があった(笑)
部屋はコテージ作りで隣の部屋はまったく視界に入らない、ベッドルームには天蓋が、バスルームにはジャグジーが、そしてもちろんプライベートプールつき。部屋の一面は全面大ガラス。まるで緑の中にいるようだ。
明け方、夜が明けていくのをベッドルームの窓を全開にしてベッドからウツラウツラ見る。漆黒から青に徐々に変わっていく様が巨大スクリーンに映しだされていく。
1日ホテルだけでくつろげるように作られている。ホテル内を散歩しているだけで時間が過ぎる。街中の喧騒がうそのようだ。
スタッフに「何泊のご予定ですか」と聞かれて「ワンナイト」というとビックリされる。たいていは3泊以上だそうだ。
でもワンナイトだからいいのだ。こんなすごいところに何泊もしていたら勘違いしてしまいそうだから。
夢のような一夜があけて、僕らは日本に帰ってきた。