『天路の旅人』

昼=ヨーグルトのカルボナーラ/夜=餅入り野菜鍋ラーメン

正月はゆっくりというわけでもなかったのだが、1冊だけ本を読んだ。沢木耕太郎『天路の旅人』。正確にはまだ物語の半分、チベットのラサに着いたくだりまで。一気に読むのはもったいないというか、自分も旅をしているような気になってきて、主人公が宿営地に着くたびに一旦読むのをやめている。

僕らの世代で海外に憧れたものは、たいていが沢木耕太郎か藤原新也を読んでいる。特に沢木耕太郎の『深夜特急』の一巻二巻に胸を熱くして、アジアに飛び出していった若者は数え切れないはず。その流れは小林紀晴『アジアンジャパニーズ』に受けつがれて、「旅文学」を産んできたわけだが、最近は旅ものを目にすることはなかった。そんな時に『天路の旅人』を教えてもらって読んだわけだが、やっぱり沢木耕太郎の文章はいい。テンポが早歩きくらいで、少し前のめりになる感じがページを捲る速度と合っている。今回の物語は中国からチベットに向かう戦時中の密偵の旅なのだが、モンゴルやネパールに何度も行っているので旅の感じがよくわかる。行っておいて良かった。最近は海外に出ることは無くなってしまったが、本を読んでいるとムズムズしてくる。

<2022年1月6日の日記から>

「お餅には納豆」というと、東京の人はいやーな顔をする。「お米と同じだろ」って言っても納得してもらえない。お雑煮のお汁で柔らかくなったお餅を納豆にからめて食べるのが最高。5日から仕事始めということで、年末に上がってきた松本の写真集の初稿を冬青の高橋さんに見てもらう。全体的な発色は問題ない。そこからかなり注意深く見ないと気がつかないような白点だったり、ハイライトの筋を赤丸で囲んでもらう。高橋さんに見てもらったことで一安心。これでもう一度再校を取って本番。いや、その前に来週、最後の撮影があるな。家に戻ってから夜のライブ配信の準備。紹介する写真集を見返したり、インタビューを読んだり下調べに数時間かかる。他のライブ配信を見ているとコメントを読んでそれに答えるというのが多いけど、「2B Channnel」は写真展や写真集の紹介という場合がほとんど。今回は熊谷直子さんと熊谷聖司さんの写真集。仕事始めとは書いたが、何が仕事なのか最近かなり曖昧。昼間に撮影依頼の電話があったけど、かなりひさしぶりな気がする。有名企業の社長のポートレートを撮るもので、毎月一度4ヶ月間。そこで気がついたのだが、キヤノンを売り払ったので中望遠レンズがない。ハッセルに標準レンズでもいけるかな。

<2003年1月6日の日記から>

「新京風ラーメン」を食べる。くどくて苦手。今日から仕事始め。とはいっても撮影自体は10日くらいから。先月撮影した現像上がりの配達が今朝届く。3口分あるはずなのに2口しか届かない。現像所へ電話して確認したら昨年に届けているはずとの答え。あわてて探すも見つからない。冷静に思い出してみると確かに受け取ったような気がしてきた。引き出しの奥に、きっちり封をしてまとめて置いてあるフィルムを発見。ほっと一安心。現像所に「おさわがせしました、ごめんなさい」の電話。午前中、昨年分の請求書を書く。午後2社に仕上がりの納品。うち1社は「東京人」。昨年末に撮っていた建築特集はこれで一区切り。今回は表紙の写真もすんなり決まりそう。編集者といろいろなカメラマンの撮影スタイルの話しになる。他のカメラマンがどうやって撮っているか知らないことが多い。大御所写真家の意外な一面を聞いて驚く。ある撮影でアングルに悩みに悩みまくって1カット撮るのに1時間半。しかもそれが料理の撮影だったものだから、アングルが決まってさて本番という頃には料理はすっかり冷めてしまってレンジで温めなおしてもらったらしい。そのほか、今まで僕が抱いていたイメージとはかけ離れた話しがたくさん出た。大御所とはいえ、やっていることは僕らとあんまり変わりはなさそうだ。