リヒター

朝=出汁野菜の玄米パスタ/昼=登亭の鰻丼/夜=豚肉辛味炒めでそうめん

竹橋の国立近代美術館に「ゲルハルト・リヒター展」を見にいく。90歳の現役作家にして、最も重要な現代アーティストと言われている。僕の美術史の講座で何度も説明しているのだが、実際に見たことのある作品は数点しかなかった。今回かなりの点数を見たことで、腑に落ちたことがたくさんあった。

描かれたイメージのことではなく、枠組みの話をしている。絵画とは何かという大きな話。知識として知っているのと、腑に落ちるのとでは、分かる度合いがまったく違っていた。ベッヒャーやグルスキー、ルフと言ったドイツのアーティストは、同じように「枠」の話をしている。

リヒター展を見た後は常設展へ。近代美術館は、現代作家の展示の中に写真家もたくさんいて楽しめる。いまは、村上隆の最初期の作品もあったし、合田誠の作品もあった。見終わった後は、身体の中から何かが抜けてしまったように、ぐったりしてしまった。

 

<2011年6月9日の日記から>

自宅からギャラリーまで自転車で10分。2Bに行くより楽チン。木曜日はどういうわけか写真家の来場が多かった。次から次と来てくれた。海原修平さん、小林紀晴さん、小原孝博さん、山下恒夫さん、染谷学さん、関根虎洸さん、藤田満さんなどなど。これまでには横木安良夫さんやハービー山口さん、北井一夫さん、村越としやさん、稲垣徳文さんも。同業者に見られるのは緊張する。窓を向いて座っているから見ている姿は見えないのだけれど、背中にヒシヒシと伝わってくるものがある。上海在住の海原さんは、いつでも魅力的なアイテムを持ってやってくる。今回はバリアブルNDフィルターをレンズにつけていた。PLフィルターのように前枠をクルクル回すと最大8段まで明るさが可変する。これはシャッタースピードが変えられないムービー撮影には必需品になる。海原さんは日中絞りを開けて使うために使っていると言っていた。持っていた5DMark2にアダプターを介してつけていたレンズは、1970年代のキヤノンFD50mmF1.4。絞り開放でのにじみがいい。近頃のレンズは好きじゃないと、古くて収差が出るレンズを使っているという。海原さんのカメラで勝手に撮ってみると、NDフィルターの濁りと古いレンズの相性でまるでコダクロームのような渋い発色になった。彼の機材選びはいつも面白い。今回の僕の写真展は、毎日出勤するように会場に行こうと決めている。プリントを売ろうとしているわけだから、商品を説明する人が必要だと思ったのだ。カーディーラーにいるセールスマンと同じだと思っている。きちんと説明して、納得してもらって買ってもらう。ギャラリー冬青における僕の写真は商品なのだから。