質問力

朝 ホットサンド、トマトスープ、りんご

夜 鯛のアクアパッツァ、生牡蠣、玄米のリゾット

デザート 豆大福

朝の8時に来客。京都の荻野直之さんが展示のために夜行バスで上京してきたのだ。それでうちで朝ご飯ということになった。彼とは年二回くらい会って、その時に考えていることを話す。不思議なことに、お互いが折々で考えていることが一致する。今日は朝っぱらからガルシア・マルケスについて(笑)。孤独の解決方法として「火」は有効なんじゃないかという話になる。

午後から冬青で写真集の初稿戻し。全ての写真を見直して1枚づつ指示をしていく。もちろん僕じゃなくて高橋さんと凸版のディレクターのやりとり。この時点になると、僕は何もすることがない。あとは来年早々に本番印刷だ。

大学の講義で「良い質問者になれると社会で役に立つ」ということを書いたが具体的にはどんな話だったのか聞かれたのでちょっとだけ。まず質疑応答で一番困るのが自説を述べて終わっちゃう人。次に抽象度が高すぎる質問。例えば「あなたにとって写真とは?」と聞かれても答えに窮する。質問者にとって有効なのは「知っていることを聞くこと」だと思う。知らないことを聞いて答えをもらったとしても、大抵忘れる。でも知っていることなら相手の話によって自分の知っていることに厚みが出るし、その後の話が盛り上がる。学生には質問をするためにメモを取ることを勧めた。気になるところを丸で囲んでそこから質問を考えていく。質問がはまると、した側とされた側で奇妙な連帯感が生まれる。

<2016年12月24日の日記から>

2016年 おつかれさまでした。

<1月>ギャラリー冬青で写真展「Demain」。何の脈絡もない27点を展示。バラバラのモヤモヤ状態。元アシスタントの古川と泉の写真展を見た時の感想が写真集制作の大きなキーとなる。

<2月>ワークショップの浅草寺実習中に鬼海さんに声をかけられてビックリ。偶然かと言われれば鬼海さんは40年来浅草寺で撮っているから会っても不思議じゃないが。「40年ハッセルで撮っている男」というタイトルがつきそうな鬼海さんのポートレートを、『PERSONA』壁の前で撮らせてもらう。

<3月>香港ブックフェア。出発前日に体調を崩し、夜中にパッキングしてあった本を半分に減らし10冊にする。それでも10キロある。最終日の夕方はスイッチが入ったかのようにどのブースも売れ始める。持っていった本は完売。でも同じ分だけ仕入れてしまって物々交換状態。帰りの荷物の重量は行きとまったく変わらず。

<4月>屋久島の「TABIRAギャラリー」で展示。ワークショップも開く。屋久島は4回目だったが、泊りがけの登山で初めて縄文杉を見た。持っていったのはフジGX670にネガカラーのフジ160NS220。しばらくこの組み合わせで撮ることが多かった。

<5月>3泊4日で「京都グラフィ」へ。車を出してもらったのでかなり回れた。会場と会場が離れていているからスケジューリングが大変。25年前に泊まった先斗町の「三福」を再来。鴨川をのぞめる宿は変わっていなかったが、先斗町が派手になっていて時代を感じた。ヨーガンレールとクリスジョーダンの展示が印象に残る。2Bグループ展を12年間使い続けた渋谷ルデコが改装のため京橋の「くぼたギャラリー」で開催。ワイヤー吊るしで苦労する。外にテーブルを出してのパーティが気持ちよかった。

<6月、7月>ボルドー経由でアルルへ16日間。今年は娘も一緒。アルルフォトフェスティバル期間中のY.P.Fサテライト展示のためだった。ボルドーの農家を改造したスタジオとアルルのオリーブ畑農園に泊めてもらう。毎日ワインを飲んで浮かれていた。ローライフレックスと予備にフジGX670。フィルムはモノクロのトライX。

<8月>写真集の打ち合わせが始まる。アルルの反動なのか絶不調。ほぼミドルエイジクライシス状態。自信喪失、動くのさえ億劫。思考はネガティヴの嵐。漢方の半夏厚朴湯を飲むと数時間立ち直れるが、またすぐに気持ちが落ちる。アムステルダムとミュンヘンの展示が相次いで決まるがあまり嬉しくない。自転車で転んで胸を強打。

<9月>調子は相変わらず悪いまま。写真集の打ち合わせが毎週のように続く。今までと違うものを、という焦りも出て迷走しかける。東京アートブックフェアに2Bとして参加。オリジナルトートバックを作った。といっても手書き(笑)。2Bブースで96冊売れる。

<10月>写真集の入稿のため、すべてのカットをRCペーパーで焼き直す。特装版問題で大ごとになる。高橋社長のブログに愚痴が多くなる(笑)。僕の日記と合わせて読んでいる人が多く心配される。気分一新にカメラを買い換えようかと画策。フジX-T2が気になり使わせてもらう。

<11月>月半ばには、いつのまにか漢方薬を飲む回数が減って、ついには面倒でやめてしまったが精神面にほぼ問題はなくなった。とたんに新しいカメラへの興味が失せてソニーα7を再び持ち出す。しかも動画。写真集印刷立会い、想像以上の印刷にしあがった。でも手元に現物が届くまで心配。直後に2Bグループ展。ワイヤー吊りにちょっと慣れてきた。いつもにまして「変な」展示になって満足。

<12月>ついに写真集『demain』完成。今回は、わがままを通した。妄想に近いアイディアを高橋社長やトッパン印刷、デザイナーの白岩さんにひとつひとつ形にしてもらった。他のどれとも似ていないものができた。一般流通するあいだ直販を始める。終わりよければ全て良し。今年もなんとか生きてこられたというのが実感。これからいったいどうなるんだろうというのが本音。振り落とされないように必死にしがみついていようと決意。来年は、
1月 ギャラリー冬青
2月アムステルダムSBKギャラリー
3月 ミュンヘン ニッケギャラリー 香港ブックフェア 屋久島フォトフェスティバル
4月 台湾フォトフェスティバルブックフェア
6月 ワークショップグループ展
5 京都グラフィYPFサテライト
7月 アルルフォトフェスティバルYPFサテライト

その他に上海とメルボルンの話も進んでいるけど、ほとんど形にはなっていない。

明日はどっちだ。