「hana×藤田一咲トークショー」は面白かった。今回の「hanaの東京ご近所写真散歩」が作られるまでの話から、数々の出版に携わったことまで「本が大好き」という藤田さんの思いを語ってもらった。
しかしそれ以上に面白かったのは写真家藤田一咲誕生エピソードだ。今までどこにも語られなかった秘話。偶然と奇跡、そして必然によってなりたっているのがよく分かる。
デビュー作「Paris」のモノクロプリントは、やはり世に出る必然がある作品だった。今まで多くの写真家のビューイングを行い、目が肥えてきた参加者にとっても内容の濃い写真と映ったようだ。
藤田さんの口調はとても面白い。どんな感じかといえば「タモリ倶楽部」に出ている人じゃないかと思わせる雰囲気を持っている。そのうち絶対テレビに出てきそうだ。
昨年12月の暮れも押し迫った頃に、わざわざ米沢まで来てもらって僕を撮ってもらった写真が今月号の写真雑誌「CAPA」の巻末「写し屋の肖像」に載っている。
CAPAの表紙を撮っている土屋さんと、米沢と福島の県境にある峠の駅に行ったときのものだ。
雪の米沢で撮影するはずが、行ってみたら雪は少なく市内ではイメージに合わなかった。
温泉に1泊し、翌日電車で峠の駅で降りた。そこは標高が高く雪があると思ったのだ。電車が3時間に1本しか通らないので、駅前の茶屋に電話をして営業しているか確認してから向かった。3時間も暖をとらなかったら凍えてしまう。
峠の駅は予想通り雪に覆われていて土屋さんにもスイッチが入った。EOS1DsMark3という現在最強のカメラでバリバリ撮っていく。
初めて人の撮影するのを見た。アシスタント経験もスタジオマンの経験もない僕は、人がどうやって撮影しているかをほとんどしらない。たまにスタジオに入ったときに隣のスタジオをちょっと開いたドア越しに覗き見るくらいだ。
だから撮られながらずっと土屋さんを見ていた。アシスタントとの連携、レンズの選択、ストロボの使い方、感度や露出の決め方。そしてモデル(僕のことだが)に対する指示。
なるほどこうやっているのかと感心しきり。似ているところもあれば、まったく違う場面もあり、知らなかったことも多かった。
土屋さんがしきりに言っていたのが「写りにきてくれ」という言葉。写されるほうが漫然と立っているのではなく、写されることを意識して、どう写りたいかを見せてくれということだ。