実践はまだ先

昼 高円寺「チョップスティックス」

おやつ カステラ

夜 鰹とピーマンの香草焼き、里芋と鶏肉の煮物、白米、野菜の、味噌汁

真新しいα7Ⅳの設定。メニューが複雑多岐にわたるが、Youtubeで懇切丁寧に解説しているものが多いので、完全に説明書代わり。早く実践で使いたい。

昨夜の2BChannnelでハッセルブラッドX1D2の写りの話をしたら、案の定けっこうな反響があった。数人の知り合いからもメールで「あれはどうなってるんだ?」と聞かれたが、設定は全てオート。たいしたことはしていない。動画のコメントで「ホワイトバランスの違いではないか」という指摘があったけれど、パナソニックS5もハッセルブラッドX1D2もオートホワイトバランス。試しにパナソニックS5のRAWデータからホワイトバランスを変化させてみたが、あんな風にはならない。もっとも比較テストのために撮っているわけではないので、パナソニックS5のほうが若干シャッタースピードが遅くなっている。もしかしたらそれの影響が写りに関係しているかもしれない。でもそもそもが全然違っている。本当にカメラが違うだけで写りってそんなに変わるものなのかは疑問だ。まだ信じられない気持はある。ひとつだけ言えるのは「すごいものが撮れちゃった」っていうこと。

「どんと焼き」各地で行われるから、是非写真を撮ってみてどう写ったか教えてください。

<2008年1月21日の日記から>

「CAPA」写し屋の肖像

昨年12月の暮れも押し迫った頃に、わざわざ米沢まで来てもらって僕を撮ってもらった写真が今月号の写真雑誌「CAPA」の巻末「写し屋の肖像」に4頁に渡って載っている。CAPAの表紙を撮っている土屋さんと、米沢と福島の県境にある峠の駅に行ったときのものだ。雪の米沢で撮影するはずが、行ってみたら雪は少なく市内ではイメージに合わなかった。温泉に1泊し、翌日電車で峠の駅で降りた。そこは標高が高く雪があると思ったのだ。電車が3時間に1本しか通らないので、駅前の茶屋に電話をして営業しているか確認してから向かった。3時間も暖をとらなかったら凍えてしまう。峠の駅は予想通り雪に覆われていて土屋さんにもスイッチが入った。EOS1DsMark3という現在最強のカメラでバリバリ撮っていく。初めて人の撮影するのを見た。アシスタント経験もスタジオマンの経験もない僕は、人がどうやって撮影しているかをほとんどしらない。たまにスタジオに入ったときに隣のスタジオを、ちょっと開いたドア越しに覗き見るくらいだ。だから撮られながらずっと土屋さんを見ていた。アシスタントとの連携、レンズの選択、ストロボの使い方、感度や露出の決め方。そしてモデル(僕のことだが)に対する指示。なるほどこうやっているのかと感心しきり。似ているところもあれば、まったく違う場面もあり、知らなかったことも多かった。土屋さんがしきりに言っていたのが「写りにきてくれ」という言葉。写される方が漫然と立っているのではなく、写されることを意識して、どう写りたいかを見せてくれということだ。

ポートレートを撮っていると分かるが、自然なポーズは不自然なくらいの演出によって生まれるものだ。写真的に成立する状態においてのみ自然に見えるわけだから、立ち位置もポーズもそれに合わせなければならない。外での撮影がひと段落し、暖をとろうと茶屋に向かった。ところが茶屋は閉まっている。「今朝電話したものですが」と扉を開けると「ホームでの物販はしているがお店はやっていない」とにべもない。途方にくれてホームの待合室に向かう。そこは無人駅だから暖房も入っていない。寒さで震えてきそうだった。そのとき新幹線の通る合図のチャイムが鳴った。土屋さんはホームに飛び出し、「ここ、ここに立って」と僕を促した。
新幹線は左側からやってくる。ということは体も左側を向けばいい。目線は顔がシャドーにならないようにちょっと上目で。持っているカメラは首からぶら下げないで、手に持って胸のちょっと下側に構える。新幹線が僕の前を通る瞬間、土屋さんのシャッターが「カッシャン、カッシャン」と数回切れた。驚くほどスローなシャッター音だった。土屋さんに聞いたら「2分の1秒くらいかな」と平然と言う。「感度は?」と聞けば「100」と答える。一脚を使っているとはいえ、なんで400にしないのか不思議でしょうがなかった。1DsMark3なら感度1600でも問題ないはずだ。
土屋さんは「2分の1秒が好きなんだよ。瞬間ではなくて時間を感じられるから」。眼からうろこが3枚ほど落ちた思いがした。その時の写真が今回のCAPAに使われている。スローシャッターでぶれた新幹線は不思議な発光体となって僕を照らしている。まさに移動するレフ板のような絶妙な効果。この効果は土屋さんも予想以上だと思うが、時間を写しとめたいと考える土屋さんにしか撮れない写真には間違いない。僕があの状態で撮るなら感度は1600にして30分の1秒のシャッタースピードを選択したことだろう。そしたらあの写真は生まれなかった。寒さで震えていた我々を、もうひとつのお店が拾ってくれた。何もできないけど、と食事まで用意してくれたのだ。暖かい部屋で米沢の味を楽しむことができた。
2日間かけて撮影してもらうことなど今後の人生で考えつかない。第一線のプロの撮影を目前で見られるとても貴重な体験だった。