「しんじゃうかもしんない」その2

上から見ると結構な落差はあるが、今までの感じなら平気そうだ。体が岩にぶつからないように滑り滝つぼに落ちっていった。

真っ白な泡に体中が包まれて、頭が下になったり横になったりグルグルと体が回される。でも海でも経験があるから体の力を抜いて5秒ほど身を任せていると水面に顔が出た。

やれやれと空気を吸おうと思ったら、体がもう一度水の中に引っ張りこまれた。まだ空気をちゃんと吸っていない焦りからパニックになってしまった。もがいているとガイドが身体をひっぱってくれて、なんとか顔を出すことができた。

でも足がつかない、岩肌はツルツルと滑ってつかめない。先に行ったアシFもそこで青白い顔をしてもがいている。上から伸びていたワイヤーをつかみ安定させようとするが激流が体半分を押し流そうとする。

ほんの少し、おそらく5メートルも進めば岩に登ることができるのに、ワイヤーから手を離して前に進もうとすると、滝つぼに押し戻されて沈んでしまう。ワイヤーにつかまっているのが精一杯。2回チャレンジした時点で体力が極端に低下していくのが分かった。

アシFと二人、命綱のワイヤーにつかまり、本能的な危機感を全身で感じてしまった。「しんじゃうかもしんない」

激流の水しぶきで呼吸もままならない。このままここにいてもしょうがないのは分かっているがもうどうにもならない。ガイドに押し出されるようにアシFが先に進んだ。彼が岩場にたどり着いたことを確認すると、意を決してワイヤーを離した。

泳ぐと言うより、もがくが全然先に進まない。それでも2メートル離れたら急に身体が押し出されるように流され進んだ。アシFが手を伸ばしてくれてようやく岩場にたどり着くことができた。

振り返れば数歩の距離だ。なのにどれだけ遠く感じたことか。立ち上がった時はわなわなと身体が震えていた。ガイドがいなければどうなっていたことか。

本当に久しぶりに凄かった。こんな体験をしたかったら是非キャニオニングを試していただきたい。できれば雪解けの増水時は避けた方がいいかと思うけど。