「Sakhalin(サハリン)」

朝=ホットサンド、トマトスープ/夜=鰹とぶりの刺身、ナスの生姜焼き、新玉ねぎのサラダ、味噌汁、白米

今年の木村伊兵衛賞が決まった。新田樹さんの写真集「Sakhalin(サハリン)」(ミーシャズプレイ)。その前に林忠彦賞も受賞しているので二冠ということになる。いま最も注目を集める写真家だ。木村伊兵衛賞は満場一致だったそうだ。

最近というか3年程前から海外の写真集に文章が戻ってきていたのを不思議に思っていた。というのも、ここ10年くらいは写真集にテキストを入れない方が主流になっていたから。テキストと写真の関係はついたり離れたりしていて正解はないわけだけど、流れは感じる。流れというよりも天秤と言った方がいいかもしれない。ゆらゆらと揺れていて、何かがきっかけで傾くような。そして「Sakhalin(サハリン)」は、テキストが重要な役割を果たしているのだ。

新田さんには早速連絡を取り、「2B Channel」に出ていただきたいとお願いした。新田さんは56歳なので最年長の受賞になる。ほぼ同世代の新田さんが、どのような写真家人生を歩んできたのかぜひとも聞いてみたい。今回の受賞は今後の写真のあり方を左右することになるかもしれない。

<2022年3月24日の日記から>

「不肖宮嶋」ウクライナへ。母校の教授もしているけど、還暦すぎてるけど戦場へ。生涯現役。本人は「もうしんどいから引退する」って言ってるけど無理だな。御巣鷹山へ行かなかったことを今でも後悔しているくらいだから。あの時結婚前で浮かれていたらしい。「まあ、今から行っても遅いからいいか」って思ってしまったと。それを今でも悔やみ続けている。なぜ戦場に行くのかと聞いたら「それが俺の仕事。戦場で写真撮って食っていくんだ」と。そう言いながら「戦争ってさ、撮って残しておかないと、後で強国の都合によって、その戦争がなかったことにできるんだよ。だから弱い立場から俺は撮る」と言っていた。僕はといえば、戦場どころか外にも出ていない。今はできるだけ大人しくして、この時期をやり過ごす。ちゃんと食べてちゃんと寝て。ひさしぶりに体重を測ってみたら59.8Kg、体脂肪17.8%で以前と変わらず。体調はいいけど、足の筋力が落ちた気がする。こうやって節制するのも生涯、最後の最後まで現役で写真を続けるため。

 <2008年3月24日の日記から>

あわただしい週末。金曜日、新製品携帯電話の撮影。松涛スタジオで小説家がモデル。ストロボをたくさん用意したのだが、結局使ったのは5台だけ。メインカットをモノクロにすることになっていたのに急遽カラーでも、ということになりアシFが渋谷ビックカメラにネガカラーを買いに走る。撮影はデジタルカメラにテレビモニターを繋ぐいつもの方法で進行。合間にフィルムで撮影。土曜日、通常のワークショップの後、夜は写真家金村修を招いてのビューイング。初期作品から現在までの大全紙プリントを見せてもらいながら写真の話を聞く。作品を前にしての話は説得力が違う。後半参加者の中から数名の写真を講評してもらう。いままで感じてはいたが、それがなんだか分からなかったことをずばり言葉にしてしまう。金村さんは写真を言葉で表現できる数少ない作家だ。日曜日、朝5時起きで宮城県塩竈へ。写真家平間至を中心に開催する写真フェスティバルがあった。注目したのは日本では最大規模のポートフォリオレビューが行われることだ。最優秀者は写真集製作の権利を与えられる。実際レビューが行われたのは22日土曜日だったのだが日曜日は最優秀作品を決める公開審査を見ることができた。作品をプロジェクターで写しながらレビュワーが講評していく。写真を言葉にする行為に興味があるのでとても刺激的だった。最優秀作品は予想通りだった。一卵性双生児の兄が弟と自分をモデルに同じ部位を標本のように撮影したもの。遺伝子は一緒なのに微妙に差が出てくる。双子というのは自分を客観的に見ることができる不思議な存在だ。片方を見つめることで自分を感じることができる。極めて個人的なことを扱っているのに、外に広がる表現だった。その点が他の作品と大きく違っていた。町の中では瀧本幹也、平間至、三好耕三の3人が塩竈を撮りおろした写真展をおこなっていた。三者三様の取り組み方で面白い。その中でも瀧本幹也の塩竈神社の大杉を撮ったものが圧倒的な迫力だった。もうそれを見ただけで塩竈に来たかいがあったと思えるほど。会場に居合わせた本人が「名前に瀧と幹が入っているから、滝と樹は気になるんだよね」と言っていた。それにしてもすごかった。