木村伊兵衛賞

朝 お雑煮、納豆

夜 蓮根とセロリのキンピラもどき、ジャガイモと豆のサラダ、トマトスパイスハンバーグ、玄米、豆腐ともやしのお汁

写真集『da・da』の電話受付が終了しました。1ヶ月間で487名の方から申し込みがありました。たくさんのコメントと、担当者には直筆のお手紙までいただきました。大きな手応えを感じています。この場を借りてお礼を申し上げます。皆様、ありがとうございました。

さて、今年度の木村伊兵衛賞は吉田志穂さんに決まった。大本命の西野壮平さんではなかった。木村伊兵衛賞は新人賞、西野さんは国内外ですでに大きな評価を受けているから。とはいえ悔しいだろうな。吉田さんの写真は昨年、東京都写真美術館「新進作家展」で初めて展示を見た。撮影はペンタックス67Ⅱを使っているが、そのままプリントするわけではなく、銀という物質とデータという非物質を行ったり来たりする手法をとっている。写真は額装されて壁にかけられることはなく、インスタレーションとして空間を充填している。一般的な美しさはない。わかりやすい写真でもない。こういった写真が新進作家展に展示されると受付にクレームがくるとキュレーターの方が言っていた。「こんなの写真じゃない」というわけだ。2000年まで「写真は記録だ」という共通認識があったが、デジタル時代になると記録だけとはいえなくなってしまった。それはたくさんの可能性の一つに過ぎない。他の可能性を探る行為をしている作家に、新人賞としての木村伊兵衛賞が与えられるのだと思う。

 

<2008年3月19日の日記から>

妻は陶芸を趣味としている。まだ初めて1年くらいだ。周りは「いい趣味ですね」と言う。でも家族は大変だ。ただでさえ狭い食器棚が得体のしれないもので占領される。でもこれに関して決して文句は言ってはならない。それは全て自分に返ってくるからである。たとえ飲みづらい湯飲み茶碗でも使っているうちに愛着もわいてくるものだ。
陶芸を教えてもらっている先生が茅ヶ崎のギャラリーで個展をやっているというので見に行った。今自宅で使っている食器は先生の作品が多い。信楽の土を使った食器は見た目も持った感じも柔らかくて気持ちがいい。展示してあった作品の中で花瓶がとても気にいったので購入。事務所に置いて花を生けたい。先生と話していて印象深い言葉があった。陶芸をするときに、最初に土をこねなければならない。それを「菊練り」と呼ぶ。基本中の基本だ。ずっと当たり前にやってきた菊練りなのに、陶芸を始めて10年たったある日、突然「今、菊練りをしている!」という感覚に目覚めたそうだ。今までの形だけの菊練りではなくて、土からきちんと空気が抜けていく感覚が実感できたというのだ。同じような経験が自分にもある。プリントを始めて15年たったある日、突然プリントが理解できた。徐々にでなくて突然。ああ、これがプリントなんだ、と分かった。学生時代、どうしても理解できなかった同級生のプリントが15年たって分かった。分かって嬉しいというより悔しかった。あいつらは学生時代に分かっていたんだと思うと呆然となった。