写真集編集会議。

雪が降ったら長靴。

娘に「ダサイ」と言われても長靴。米沢で買った本式のものを履いて歩いて冬青へ向かう。

途中東高円寺の「喫茶生活」で一休み。自宅から冬青まで25分くらいだ。

着いた早々、ギャラリーの床に90枚の写真を並べて高橋社長と二人で見ていく。

「社長、どうします?」
「まずは出だしを決めましょう」

そう言うと青森の写真から並べ始めた。最初は横で見ていたのだが、数枚並べられたあたりで社長が何をやりたいのかわかってきた。

社長の手が止まったところで今度は僕がその後に続けた。それを引き継ぐように社長が並べて行く。

二人で全体を見ながら同時に「あそこ」と指差した。しっくりこないところがある。それをお互いが感じたのだ。

「渡部さん、ここに何か転換点が欲しいですね」
「じゃあ、これは?すっきり見える気がするけど…」
「ああ、いいですね。落ち着いた」

どうやら社長と僕の写真の文法は同じようだ。文法にのっとった上での会話だからむやみに反目することはなく、社長の言うことと僕の意見がうまい具合に噛み合った。

3時間後90枚の写真は40枚に絞られた。俯瞰で見ると収まるべきところに収まった。新しく入れてもはじいてしまうし、順番を変えようとしても動かない。

強固な40枚になった。

それを見ていたら身体に快感が走った。「気持ちいい」と思わず声が出た。こんな経験は初めてかもしれない。興奮とかじゃなくて身体の奥底から湧き上がってくる。

このシリーズは2004年から撮り始めて8年が過ぎた。タイトル案は「da.gasita」にした。まだ本決まりではないが愛着がある名前だ。

4月になって水温が安定してきたらプリントを始める。

冬青の高橋社長とは不思議な縁だといつも思う。8年前、「コニカミノルタギャラリーの審査に落ちた」と日記に書いたら社長から「日記見ました。その写真、うちでやらせてください」と連絡があった。

あれから4回の写真展を冬青で開いて、韓国や台湾やパリフォトにも一緒に行った。2007年に「traverse」が出て、そして今回「da.gasita」が出る。

やっぱり不思議だとしかいいようがない。