毎朝11時にギャラリーに出勤すると、写真集コーナーの隅でパソコンを開く。
そして黙々と「旅するカメラ4」の原稿を書く。
すでに書き終えて編集部に出した、と以前日記に書いたが、内容は大幅に変更になった。
なぜか?
今回、編集部ではなく妻が僕の本の編集をすることになった。僕としては本意ではないが、編集者と連絡をとりあうのは面倒な作業なので、近くにいたほうがいいかと了解した。うかつだった。
編集部に出してある、今まで書いたものを妻に見せた。するといきなり「これと、これはつまんない。ネタが古い」。
それはアルルからビエンナーレ、パリフォトへのくだりであって、僕が「旅するカメラ3」以降に体験してきたほぼすべて。それを「つまらない」とバッサリ。
実は自分でもウスウス気が付いていた。もう4年もたつと、アルルも古臭い話になっている。今更という気もしていた。しかし、そのあたりの章をなくすとなると、30ページ以上ごっそり抜けることになる。妻はこともなげに「短いやつで量をたくさん書いて」
僕は毎日職業作家のように写真コラムを書き続けた。たまにクマのようにギャラリーをうなりながら歩き回る。ネタが出ない。
短い文章で簡潔にというのが「旅するカメラ」の基本。地下鉄2駅から3駅で1章読み切れる分量がベスト。となると1冊でネタは20本以上用意しなくてはならない。ボツを考えるとその倍。
毎日書き上げては自宅にいる「編集者」に原稿を送る。そして自宅に戻ると「今日の原稿はいかがだったでしょうか」とお伺いをたてる。
妻は台所から「まあ、いいんじゃない。最後のところちょっとグダグダになってるから赤線いれといた」。
結局大幅な入れ替えで原稿を完成させた。編集部に「アルルからのくだりはやめて別なものにしました」と連絡すると「さすが奥様わかっていらっしゃる」だと。
後書きは冬青ギャラリーで書いた。今月編集部に原稿をだし、来月デザイン入れ、予定では9月中旬発売予定だ。書下ろし多数!
結局アルルからパリフォトまでの僕の数年間の経験は、後書きでわずか3行になっていた。