ワークショップ2B、33期募集中

モンゴルは一人で旅をするにはなかなかに大変だ。公共交通機関が発達していなくて、地方では英語もほとんど通じない。

車をチャーターするにしても、1台で動くと故障した場合に生死の問題になってくる。ちょっと内部に入ると車が通ることなどほとんどないから助けを呼べないのだ。そのためどうしても2台以上で動くことになる。

今回は車3台をチャーターしての移動となった。その中にはアメリカから参加したジョンさんがいた。彼はマンハッタンのど真ん中に住み金融関係の仕事をしている。2年間日本支社で働いていたことがあり、その時にワークショップの一人が「写真のことが大好きな外人」というふれこみで2Bに連れてきてくれた。

英語を勉強したての頃の僕はかなり怪しげな会話だったが、写真が好きという根っこが一緒なものだからお互いのポートフォリオを見せ合ううちにあっという間に仲良くなれた。

モンゴルツアーはワークショップ内で行きたいものを募っている。ひとり急きょ事情で参加できなくなり、その代わりを探していたときに「そういえばアメリカのジョンさん、モンゴルに行ってみたいと言っていたな」と思い出した。

メールを出したらすぐさま「行きたい!」と返事が返ってきた。アメリカからモンゴルへ直行便はない。一度日本に来てからモンゴルに行くことになる。にもかかわらず参加決定。その時まで僕は彼と2度しか会ったことがない。その決断の速さとフットワークの軽さに驚いた。

彼は英語しか話せない、英語をきちんと理解できる参加者はほとんどいない。皆身振り手振りに単語を並べての会話になる。普通なら彼は一人でいることが多くなるはずだ。

ところがツアーの間中、話の中心はいつもジョンさんだった。

ジョンさんはかなりのカメラ好き、今回のツアーにもM9とM7、レンズも各種取り揃えて持ってきていた。彼は大判も使うし、ハッセルも使う。ただのカメラ好きではなく、写真集の出版も予定している。だから我々といくらでも話すことがある。

それ以上に彼の場を盛り上げるパフォーマンスが素晴らしかった。彼が「ビジネスでもっとも大事なのはコミュニケーション能力だ」と言っていたのがよくわかる。マンハッタンで成功する人の能力の高さに驚いた。

彼がいたことで灼熱と蚊に襲われた旅は、楽しかったという記憶しか残っていない。