アルルのポートフォリオレビューでは、、、

今年のアルルのポートフォリオレビューには少なくとも20人以上の日本人が参加していたようだ。そのうち半分近くと声を交わした。

日本からというだけではなく、パリやロンドンに住んでいる若い人もいた。全体でも年齢層は30台前半が多いような気がした。もっともレビュー会場には延べで5時間ほどしかいなかったが。

前回が8年前なので記憶もあやしいが、正式な会場でのレビーテーブルが以前より半分近くに減っていて、あまり活気がなかった。むしろフリーレビューと呼ばれている、参加費が安い会場のほうが熱気があって楽しそうだった。

フリーレビューでは最終日の午後5時から8時にオープンポートフォリオレビューといって、自作をテーブルの上に並べて誰でも見れるイベントもあって賑わっていた。

もし来年参加する人がいれば、むしろそこを中心に攻めても面白いかもしれない。正式なレビューのレビュワーもフリーレビューに参加している。

正式なレビューには美術館や、フェスティバルオーガナイザーといった人が多く、フリーのほうは地元のギャラリーや出版社が多いようだ。

アルルフォトフェスティバルのアワードに申し込むと特典として一般より早くフリレビューのレビュワーリストを見れるので賞狙いでなくとも応募する価値はある。初日に早く会場にいけば空いているレビュワーを予約できるそうだ。正式なレビューではそれはできない。

僕はレビュワーを選ぶ際に①フェスティバル②コーディネーター③雑誌社④美術館の順に選んでいる。ギャラリーは選んでいない。

①のフェスティバルは直接のチャンスが生まれやすいから。僕は前回のアルルが縁でパリのビエンナーレに参加することができた。
②のコーディネーターは、人と人とを結びつける仕事なので、色々広がりが期待できる。これはレビューサンタフェで教えてもらった。
③雑誌社は収入面というより、世界へ告知するため。未だに影響力の強い雑誌というものはある。
④美術館の人の反応は次のプロジェクトのヒントになる。現在の写真界の大きな流れと、自分の作品の立ち位置を知ることができる。

①と④は競争率が高い。出遅れるとすぐに埋まってしまう。実は②のコーディネーターが狙い目で、彼らは雑誌社にもフェスティバルにもギャラリーにも顔がきき、紹介することが仕事なのでチャンスがうまれやすい。

ギャラリーは選ばない。海外のギャラリーと個人で仕事をする難しさをやりとりしていた数年間感じたため。よほどの縁がなければ個人でアプローチすることはないだろう。

レビュワーは一回のフェスティバルで平均20人と会うそうだ。その中で大体3人くらいに興味を示すが、そこからすぐに何かにつながることは 滅多にない。

だから動きの早いフェスティバルの人やコーディネーターを優先することになる。

レビューに通訳をつけるのはマイナス要因だそうだ。直接話ができることをレビュワーは望んでいる。といっても話せないなら通訳はつけたほうがいいに決まっている。

今回初めて自力でレビューに臨んだ。初めてのアルルでも通訳はつけなかったが、何も言えず、何もわからずの状態(笑)これでは受ける意味がない。

最初からレビュワーに長いステートメントを読ませるのは嫌がる。数行のサマリー(まとめ)をサッと見せ、あとは写真を見せながら口頭で説明するのが多いようだ。わざと突っ込みを入れさせるようにできれば話がはずむ。


アルルのアワードやBMWアワードの受賞作品の展示を見ていると、うまく説明がつくものを題材として選んでいるのが伺える。それはそれで面白いし、写真の進化の過程にあることは理解できるのだが、それはあくまで理解であって感動は薄い。

現代アートは長年「脱感動」に進んでいるから写真もまたそうだということだ。でも、それにちょっと飽きてきているのがレビュワーと話していると伺えて面白い。

背景を大事にするあまり、自由さはかけてくる気がする。現在は日本流の「感じる写真」ではなく、「考える写真」が主流なのだが、それに対する行き詰まり感があるのではないか。

「日本人の写真を見る時間ならいくらでもある」と言われた参加者もいたり、アルルの展示でも第一会場が日本人6名の展示だったり、他にも多くの日本の写真家が展示されていて「今年は日本年だったっけ?」と思えるほどだった。

以前とは日本の写真に対する扱いも変わってきているのかもしれない。たくさんの人から聞こえるのが日本の写真のバリエーションの豊富さ。

一部のコレクターが日本に目をつけているという事実もあり、どうやら様子が変わってきているのかもしれないと感じたアルルだった。