上からどうぞ4

リヨン駅にはM上の友人が迎えに来てくれていた。フランスに住んでいる彼女がタクシーを電話で呼んでくれた。
しかし、20分後にやって来たタクシーに対して、彼女は「値段が法外なことを言っています。危険です」と帰してしまった。しかたがないのでタクシーの列の最後尾に並ぶが遅々として進まない。この時点で夜の8時。
東京駅のようにタクシーが並んでいることはなく、1台来ては客を乗せ、また来るのを待っているという状態。

パリまで着いておきながら空港があまりにも遠い。並びが半分進んだところで、すでに8時20分。空港までタクシーを飛ばしても早くて40分。チケット発券最終時間が9時15分。終わった、今日はパリに泊まろう。でもとりあえず空港まで行ってチケットを振り変えてもらえないかゴネてみよう。

すべてが終わった。そんな雰囲気が3人を包んだ。そこへ先ほどのM上の友人が飛んできた。「空港行きのバスが出るようです」

バスじゃ時間がかかる。荷物の積み下ろしを考えたら無理。だいたい時間通りバスが出るわけもない。タクシーを待っていた方がいいようにも思える。一度タクシー乗り場を離れたらまた最後尾に並びなおしだ。

でももう捨てるもんはない。ふたりに向かって「ここはチャレンジだ。行こう!」3人でバス乗り場まで大荷物をゴロゴロさせて走った。バスはもう乗り場から離れていた。M上の友人が身を呈してバスを止めてくれた。飛び乗るようにバスに。

この時点で8時30分。空港までバスは通常なら1時間弱。間に合わないこともない。空港の見取り図を頭に入れてカウンターに走る段取りをつける。一番足が速そうな出口を先に行かせる作戦を取る。

ところがバスは30分であっというまに空港に着いてしまった。午後9時、バスはシャルルドゴール空港2Fに到着。発券に十分間に合った。

先に着いていたM本と再会。がっちり握手を交わす。M本は笑いながら「大丈夫だと思うてましたわ。今回師匠は引きが強いから」

東京までの12時間のフライトはあっという間だった。なんせ、座っているだけで連れて行ってくれるんだからこんなに楽な話はない。