ピコンピコン

朝=ホット卵サンド、野菜スープ、鯖寿司/夜=枝豆オイル蒸し、ネギさつま揚げ、タコとナスとカリフラワーのクミン炒め、粗食

朝は依頼があった写真雑誌に寄稿するテキストを1500字書いて、8枚の写真をセレクトしてちょっと調整してプロフィール写真と細かいデータなどを半日でまとめて編集者に送る。我ながら素早い。編集者が驚いていた。依頼原稿の締め切りには遅れたことがない。なぜなら大体の依頼内容のことは日記に書いていたり、2B Channnelのネタにしているから。あとは字数調整するだけなのだ。

最近またメディアの仕事をするようになった。やっぱり面白い。しばらくなんでもひとりでやってきたので、誰かとやりとりするのは気持ちが上がる。ただ、いまは連絡手段が多岐に渡りすぎていて混乱することがある。以前はメールだけだったのに、メッセンジャー、Twitter、Instagram、LINEから連絡がくる。誰がなんの用件だったか忘れてしまって慌てることも。それぞれ微妙な感じで使われていて、同じ人からの依頼でもメールの時はビジネス文で、LINEだとくだけている。依頼金額によっても使うツールが違ってきたり。さっきからメッセンジャーがピコンピコンいっている。

 

<2021年10月18日の日記から>

さらば「キヤノン新世紀」。30年続いた「キヤノン新世紀」が今年で幕を閉じる。過去には熊谷聖司,HIROMIX、野口理佳などを輩出し、新人作家の登竜門的コンペだった。最後にどんな作品が選ばれたのか、東京都写真美術館に見に行ってきた。昨年受賞したのは樋口誠也の動画作品だった。今年の優秀賞は動画作品は2作品、平面作品が5作品。グランプリは11月12日の公開プレゼンテーションの後に決まる。僕が予想するには光岡幸一か千賀健史。千賀さんは完成度が高い、というか高すぎる。「この人頭いいんだろうなあ」と唸ってしまうくらい。人だかりも一番多かった。その点、光岡さんは得体が知れない。何か隠している部分がある気がする。とはいえ、昨年は全く予想外の樋口さんだったけど。今回の受賞特別展での樋口誠也「super smooth」の動画作品は抜群によかった。よく現代を表すときに「ツルツルとした手触り感のない」と言う表現をするが、それをスケートリンクで表している。スケート初心者が、手足をバタつかせてリンクを歩む様子がそのまま現代の人々のようだ。馬鹿馬鹿しいけど、アイロニー(皮肉)がたっぷり込められていて、きちんと批評性がある。動画は面白いけど笑えない仕組みになっている。1991年にスタートした「キヤノン新世紀」は、「写真で何ができるだろうか? 写真でしかできないことは何だろうか?」をテーマに30年続けてきた結果、どんどん写真から離れていった。今年で終わりを迎えるわけだが、確かにこういった審査というのは限界に来ているのが今回の展示でよくわかる。

<2009年10月18日の日記から>

近頃急に海外からのメールが多くなってきた。出掛けにボストンのギャラリーからのメールを発見した。ざっと飛ばし読みしたが、いまひとつ内容がわからず。翻訳機にかけたらもっと難解になった。しかたがないので事務所でプリントアウトしてひとつひとつ確かめた。どうやらギリシャの写真雑誌からの掲載依頼のようだ。次号のテーマが『trasportation(輸送)』なので声がかかったみたいだ。ワークショップ30期が昨日から始まった。午後の部にはドイツ人の女性がいて、講座が終わってから彼女にこんどは英語でヨーロッパ写真事情をレクチャーしてもらった。今週はドイツ編。彼女はドイツとロンドンで写真の専門教育を受けている。ドイツの東と西では写真教育に大きな差があるとか、ベッヒャーのクラスに入れるのは一年でたった10人だとか、かなり面白い内容だった。バックグラウンドが共通しているのでほとんど理解できる。しかし最初にゆっくりと簡単な言葉で話すからと言っていたのにどんどんスピードが速くなってくる。2時間通しで聞くのは集中力が限界。それにしてもヨーロッパというのは勉強好きだ。専門的な教育は23歳を超えないとできないというし、日本でいう修士課程なのだろうが、彼女は哲学や文学を勉強していて、それからアートに進んでいる。そして今度は日本で写真の勉強をしている。お金はいくらかかるの? と聞いたら大学は全てタダ。奨学金ももらえるからできると言っていた。「ドイツ人とフランス人はWHYという言葉が大好きなの」と時折日本の写真について質問される。「野口里佳の展示をどう思うか、なぜ川内倫子はヨーロッパでの評価が高いと思うか」など日本語で答えるのもやっかいな問題だ。次回はフランス編、そしてロンドン編と続く。