「遅れてきた新人」

朝=ホットサンド、トマトスープ/夜=小松菜とウィンナーのニンニク炒め、豚肉のキムチ炒め、玄米、卵スープ/夜食=いちごとアイス

4月28日から5月11日まで、有楽町にあるエプサイトギャラリーで本田光写真展「うきま」が開催される(11時〜17時/日曜日休館)。

それに合わせて、本田さんに2B Channnelライブに出てもらった。本田さんは、エプサイトギャラリーのアワードでグランプリを受賞しての展示になる。賞金30万円が出て様々なサポートが受けられる。以前、僕の日記やライブでも「エプサイトは狙い目」と話しているが、通常のアワードにありがちの、展示後に受賞を決めるというやり方ではなく、公募後に受賞が決まるのは、やる方からしてみれば本当にありがたいシステムだ。30万円の賞金は展示プランに大きな幅を持たせてくれる。「やりたい展示方法があるけどお金が」と言わなくて済む。

本田さんは55歳。初めての個展。前回のグランプリは20歳代の女性でキャリアを積んでいる作家だった。年齢とかキャリアとか関係なしに選んでいることがわかる。審査員は写真家の上田義彦さんとTIPの速水椎広さん。本人曰く「遅れてきた新人」を拾ってもらえる場所があるというのは大きい。

以前の日記で「55歳以上の新人賞を」と書いたのは、年齢や性別、国籍で排除されることがないのが理想だが、その前に今現在、年齢による排除があることを認識するために、一度年齢を引き上げた新人賞は必要だと思うのだ。女性写真家展というのも、それまでの男性優位だったシステムに対して疑問を投げかけている行為だと、僕は思っている。そういった排除がなくすためには、一度そのことについて考える時間が必要だ。年齢においても、遅れてきた新人にチャンスが与えられるというのは、今の写真界に必要だと思う。

 

<2004年4月28日の日記から>

台風並みの強風。ビニール傘がひしゃげ、しかたなくコンビニで360円の傘を買うが、ものの1分でホネがよじれてしまった。コダックフォトサロンで9月の写真展の打ち合わせ。だいたいの要領は分かっているので確認だけ。11年前にやった時とフォトサロンの場所は変わっているが、キュレーターの人は同じなので話が早い。コダックのオンラインフォトギャラリー用のデータを持って行ったのだが、ウィンドウズで作った写真データをマックで動作確認したら薄っぺらな画像になってしまった。モニターのガンマ値が違うためだ。モニター設定をマックの1.8からウィンドウズの2.2にしたら絵がしっかりしまっていい感じになった。特にモノクロ画像だったためガンマ値の違いが大きく出たようだ。結局ウィンドウズにあわせることにする。それにしてもその差は大きい。

銀座ニコンサロンで鬼海弘雄、土門拳賞受賞写真展「PERSONA」をやっていたので見に行く。オリジナルプリントの美しさに会場を何周もしてしまう。意を決して写真「PERSONA」を会場で購入。鬼海さんご本人がいたのでサインをいれてもらう。やっぱり「苦手なんだよね」と言っていた。「あなたの名前をいれましょうか?」といってくれたのでお願いする。芳名帳の「渡部さとる」というところを指差して「これです」とお願いした。が、しかし、定価9750円の豪華本には「渡辺とおる」としっかり書かれてしまった。おいおい、2つもチガウよ… 言おうかどうかちょっと悩んだが、まあこれも鬼海さんらしくていいかとそのままにした。その後、印刷の話しになり、「PERSONA」は黒に特色が2つ、最後にニスを引く4色刷りだというのが分かった。どうりで美しいはずだ。おそらく現在の出版では限界近くまでの印刷だろう。「浅草にはまだ通っていますか」と聞いたら「テレビ(昨年暮れの情熱大陸)で顔がばれたせいでやりにくくなっちゃった。しばらくほとぼりをさまそうと思って。テレビに出てもいいことは一つもないなあ。仕事もこないし」。冗談とも本音ともつかないことを言っていた。風雨の中、重い写真集をかかえて「2B」に戻る。箱から出して1枚1枚ゆっくりめくる。何度でも楽しめる写真集だ。最後のページに鬼海さん本人が出ていてもなんの不思議もない。そんな感じの人だった。