才能

朝 人参スティック、焼き芋

昼 「大田」の日替わり定食

夜 鹿挽き肉のカレー、リンゴとセロリのサラダ、チーズ

NHKのオンデマンドで「プロフェッショナルの流儀・井上雄彦」を見た。モーニング連載の漫画『バガモンド』制作の話。1998年の連載開始の頃に、僕は仕事で彼を撮影をしたことがある。単行本第1巻の表紙とそっくりの顔をしていた。数年後、再び撮影した時は、すでに求道者のような顔つきになっていて、それは主人公の武蔵が苦悩していた時期と重なる。「プロフェッショナルの流儀」では、どうやらその頃の様子を捉えていたようだ。

凄まじい葛藤の連続を見ていると、その圧倒的な才能が全然羨ましくない。番組では白い紙を見るのが辛くなって逃げ出すくらい追い込まれていた。庵野秀明の「プロフェッショナルの流儀」を見た時も同じことを思った。そういえばイチローとビートたけしの対談を読んだとき、「我々は人が思うほど幸せじゃない」書かれていたのを思い出した。

僕は大学に入いると、自分に才能があるかどうかがすぐにはっきりわかった。4年生にもなると、自分がこの世界で生きていけそうかどうかも薄々わかったけど、わからないふりをしていた気がする。フリーランスになってもそれは変わらず、60歳になる頃から、ようやく他人の才能への嫉妬がなくなった。でもそれはそれで向上心がなくなってしまったような気がするし。

『バガボンド』って“放浪者”とか“漂泊者(ながれもの)”という意味があるそうだ。2015年2月の連載を最後に、ずっと休載が続いているが、番組の中で、彼は「最終は小次郎とのラストシーンになると」と言っていた。それを読みたい。

 

<2005年 2月25日の日記から>

世田谷のスタジオ109であるタレントの撮影。キャンペーン前なので秘密。今回の仕事のムービーは瀧本幹也が回していた。撮影風景を見れてちょっと感動。いつものように時間はないけどカット数は多いという撮影だったので打ち合わせはしっかりしておいた。後はデジカメを使い、液晶テレビをモニター代わりにすることで時間短縮を図ることにする。ライティングは白バック用に6灯、天井からシャ幕越しに9灯、メインに1灯。アングルを変えても大丈夫なようにしておく。本番は20枚ほど撮影してモニターチェック、また20枚撮影して1カット終了、という流れだった。この方法だとあっという間に撮影が終わる。今まで一々露出を計ってポラを切って確認したら本番撮影に入ってロールチェンジの時にまたポラを切って続けて撮影、最後にまたポラを切って確認。ポラの現像時間に最低でも1分かかる。この1分が長い。撮影時間にしてデジタルの3倍はかかる。今まで1カット30分で計算していたが、それが半分以下で済むようになった。1時間半で9カット撮影終了。フィルムなら考えられない。
ある漫画で「職人」と「プロ」の違いはなにか? ということをやっていた。「自分の仕事」に一切妥協しないのが職人なら、妥協点を探りながら「仕事」をするのがプロ。時間とお金は無限ではない。仕事をするなら妥協点をどこに置くかが大事になる。料理人の漫画だったが、それを見ていてデジカメでの仕事のことを考えていた。