気がつくのが20年遅いよ

朝 削りぶしとジャコの玄米パスタ

夜 しめ鯖、自家製焼豚と野菜の炒め物、豆腐のお汁

 


今日は学生ふたりと、元アシSがやってきた。話のネタは

「銀河英雄伝説」

「ファイブスターストーリーズ」

パオロロベルシの写真集『BIRDS』

金沢のクリニックの健康診断

 

ひとりがパオロロベルシの写真集を持ってきてくれたのだが「ヤバイね」と感想にもならないことしか言葉が出ない(笑)

今年のディオールの写真を担当しているパオロロベルシは72歳。もっと若いと思っていた。

「これどうやって撮っているんですか?」と聞かれたので、経験的に「多分この手法」というのを伝える。彼はそれを次回までに撮ってくるという。行動が早いから話していて面白い。

「今度やってみます」という学生には「明日やろうは馬鹿野郎、今日やって」と言っているけど、やらない子はやらない理由を見つけるのがうまくて、それはそれで面白いんだけど。僕も学生の頃は間違いなく「明日やる馬鹿野郎」だったけどね。

 

56歳の時、急に20年以上使っていた事務所が取り壊しになって、暗室もすべて引き払ったことで、いろいろな本を読んだ。小説ではなく、哲学、思想、宗教、科学、ビジネス本の類まで。環境が変わるから自分も変わらないとな、と思っていた。

 

その中で、何度も読み返したのが内田樹『困難な成熟』、デール・カーネギー『人を動かす』、アドラー『嫌われる勇気』も読み返すことが多かった。これ読んどけば他のビジネス書は必要ないんじゃないかと思えるくらい。

 

もし30代の自分に勧めるなら、石井朋彦著『自分を捨てる仕事術 鈴木敏夫が教えた「真似」と「整理整頓」のメソッド』かもしれない。著者の石井さんは、ジブリ入社時に鈴木敏夫さんのアシスタントをしていた方だ。

 

僕はこの本を読む数年前に、映画『風立ちぬ』の公開に合わせて鈴木敏夫プロデューサーの撮影の仕事をしていた。

その時「この人、なんてチャーミングなんだ」と驚いた。インタビューなのに全然インタビューじゃなくて、友人と雑談しているような会話。「こんな話しても、誌面には書けないだろうけどさあ」と言ってどんどん面白い話をしてくれる。そのせいで僕は『風立ちぬ』を二度見ることになった。

鈴木敏夫という人物に興味を持った時に出たのが本書で、もう鈴木語録に完全にやられてしまった。師匠を持たない僕にとって石井さんと鈴木さんの関係は憧れ。

 

石井さんは鈴木さんに「徹底的に自分を捨てて仕事をしろ。個性なんていらない」と叩き込まれる。僕はそれを読んで身悶えしてしまった。30代、僕は我を通すことがいいことだと固く信じていて、自分のやり方を曲げなかった。「言うこと聞かない俺ってかっこいい」とまで思っていたけど、それが大きな勘違いだと10年後にようやく分かって、穴があったら入りたい気持ちになった。

 

もう傷口をグリグリとえぐられるような感じ。「仕事術」ってタイトルにあるけど、これはサラリーマンじゃなくて、間違いなくフリーランス向け。この本で書かれていることを実行できるフリーランスは一生食いっぱぐれがない。

 

と、60歳になってようやく気がついた。20年遅いよ。